課題の山、ソナタ2曲、エチュード、エオリアンハープ
今回の八重子先生のレッスンは、ベートーヴェンソナタ7番の仕上げ。
ショパンエチュード 10-6 再挑戦。
ソナタの方は、順調に仕上がったので、”暗譜してきてね”という優しい声の
厳しい課題。今までも、暗譜は苦手だ。音符は覚えていても、音のダイナミクス
とか細かい所を覚えるのが、苦手なんだ。つい、うっかり自己流になってしまったり。
エチュードのほうは、なんとかぎりぎり及第点。
「とりあえず、先にいきましょう”という事で、今度はエチュード25-1
をやりましょう」
とても有名な曲で、「エオリアンハープ」とか「牧童」とか名前がついてる。
エチュードとしては、易しい部類。
僕も好きな曲で、何度か、ゆっくり速度で弾いたことがあるけど、指の長い僕でも
指の拡張が難しいくて参った曲だ。
その事を先生に言うと、
「あら、そうなの。じゃあ、課題を増やしましょう。いよいよ、ベートーヴェン
ソナタ8番「悲愴」にとりかかります。譜読みしてきてくださいね。
それと、モーツァルトのソナタ19番ケッヘル576をやってきて下さい。
エチュードも忘れずにね」
。。参った。言わなければよかった。課題が山積みだ。
先生は、何かご機嫌だ。僕を苛めて嬉しいとか、はは
聞くと、ご主人の体調がよくなったそうだ。
とにかく疲れやすい、とか、気分も落ち込んでたそうだ。
「亡くなった生徒さんの事、1周忌で、気持ちの整理がついたのかも」
(・・・・確かに身辺整理にはなったような。)
「なんて、名前だったんですか?ちなみに」
「えっと、確か、歩美ちゃんだったかな、才能のある子だったらしいけど」
名前、ゲット。あの幽霊の女子中学生は歩美ちゃんね。
今度、あの子に曲を弾くときは、名前をよびかけてから弾こう。
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中間テストは、まあまあだった。なんとか2番をキープ
(大分、1番の脇坂に離されてるけど)
今度は、実力テストだ。又、脇坂と竹中さんと傾向と対策について話してたら、
後藤さんが「相談あるんだけど、いいかな」
後藤さんは、二人に構わず、相談事を話し始めた。
「私、絵を続けていきたい。だけど、私立は親が許してくれるかどうかわからない。
で、国立の道教育大なら、親元から近いし美術教師の免許もとれる。
教師しながら、絵を続ける事も出来る。でもレベルがわからなくて」
後藤さんが、そろそろ進路の事を考え出したのは、僕の影響。
なんて、思うのは思いあがりか
「教育大釧路分校なら、教育大の分校の中では入りやすいほうでしょう。
まあ、受ける科によるでしょうけど。最近は、教職は人気がありますから
偏差値も高くなってきてるでしょう。後で詳しく調べてみますが、最低でも
60はないと心配ですね。」
それを聞いた後藤さんはショックを受けたようだ。
そうだよな。東が丘高校は、どちらかというと・・・・だからな。
竹中さんが後を続けた。
「でも、美術コースなら当然、実技があるわけで、その辺がどのくらいのレベルか。
よくわからないしね。美大ってのは、まあ、いろいろあるだろうけどね。でもそれ専門の
予備校があるらしいよ。デッサンや絵の特訓をするような。そういう予備校に通わない
と美大に受からないって聞いたことある」
後藤さんはもっとショックを受けた。
デッサンと絵の特訓していたら、勉強する時間がない。
「竹中さん、よく知ってますね。」脇坂が驚いてる
「美大を目指す高校生の小説からの情報だから、今なら正確じゃないかもしれない」
竹中さんは、北大文学部志望だ。小説家になりたいとか。
後藤さんは、かなり落ち込んでいたけど、とりあえず、美術部の顧問の先生に
相談してみようよと、と力づけた。
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家に帰り、さっそく祖母に、チェロ弾きの卵が、歩美ちゃんという名前なのを
報告した。(八重子先生のご主人の近況も)
「そうかい、歩美ちゃんね。可哀想な話だよ。人生、これからって時の事故死。
彼女は、この間、俊一さんとチェロを弾いてから、だいぶ穏やかな顔になったね。
でもねえ。楽器が好きならいつまでも弾いていたいもんだろうし・・」
そうなのだ。俊一叔父もまだチェロを弾いていたかったのかな。
僕は、俊一叔父がいるのはうれしいけど、祖母がいうには、霊が現世に留まり続ける
それは、あまり”よくない事”だそうだ。
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その夜の練習は、まず、暗譜の練習からはじめた。
自分の演奏を録音し、聞きなおして間違いをチェックする。
正直、自分の未熟な演奏をきくのが恥ずかしいけど、だいぶ馴れた。
七番、1楽章は長い、フっとかわる曲想は、かえって覚えやすかった。
2楽章は、苦手な分、練習したから覚えてるが、どうも速くおわらせたいのか、
途中でテンポがはやくなる。やれやれだ。
気分を変えて、先生から出されたモーツァルトのソナタ19番を試しに弾いてみる
おっとこの曲知ってる、「のだめカンタービレ」って映画で、のだめが、先生に
何度もダメダシをくらった曲じゃないか。
うmm、不吉だな。
その夜の夢に、ひさびさにベンちゃん登場。
僕の弾くモーツァルトソナタに、楽譜をまるめて叩いてダメだしをした
どうせなら、夢の中ででも七番を教えて、ベンちゃん




