ショパンエチュード op10-6
八重子先生のレッスンで、ショパンのエチュード2冊と、モーツアルトのソナタ集を
ドンと渡された。
その中で、ショパンのエチュードは、op10のほうから、6番。
主旋律、対旋律、バスが、バランスよく弾けるようにしなければ。
練習曲には、曲のための練習パターンがあり、これを練習して曲ののぞむ、
事になる。この曲は複雑に動く対旋律が心の迷いをあらわしてるような曲。
速くないかわりに、曲想が難しいかも
今までのテクニックの練習曲が少し減った(無くなったわけじゃない)
家に帰り、この曲のCDを聴きながら、ふと、後藤さんならこの曲にどんな
感想をもつだろうか考えた。
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陸上部に、マネージャー志望の女子が入った。
走るのは好きだけど、陸上部で頑張るほどでないけど、お手伝いがしたいそうだ。
名前は、千葉留美さん。セミロングの髪を後ろでしばった、おっとりした雰囲気
の女子だ。女子マネは僕も青野も必要と思っていた。
マネージャーは、時に選手の足などのマッサージなどするので、女子マネは必要だ。
それに、女子同士の中での出来事は出来るなら、第三者的な女子マネが最適だ。
僕と青野は、とりあえず、基本的な仕事を教える事にした。
クラス替えで、坂本さんと孤立してた朝岡さんが同じクラスになり、なんとか
"仲良し”を、続けてる。朝岡さんも坂本さんの女子部長としての苦労に、
思う事があったのか、最近は言動は物静かで、練習だけは超本気で そこは相変わらずだ。
1年生の面倒見のいいのが意外だった。姉御肌なのかもしれない。
ちなみに、1年生は男子4人だけ、入る予定だった一人は、サッカー部にとられた。残念
6月の高体連のために、5月のGWは、合宿だ。
2,3年は慣れてるけれど、1年の4人男子は、ちょっと不満顔だ。
家族で旅行というなら、不参加もあるのだろうけど、そうじゃなく、ただ、
釧路にいって遊びたいとか、ゴロゴロしたいとかである。
家の手伝いがあるって部員もいるが、そこは合宿帰って来た後、部員たちも強力
しようか という話で落ちついた。
今度の週末に合宿という夜、山崎からメールが来た。
合宿参加したいけれど、妹が心配で家を空けたくない と相談事だ。
妹が(美里ちゃんという小2)冬に家を閉め出されたのは、去年の事だ。
山崎が参加出来ないのは、無理もない。”自分の家の状況を知られたくないと、
どうも、夜の仕事に入ってから、母に時間がなくなった” と山崎のメール。
山崎には、合宿、参加出来ないのは仕方のないのでは、と返した。
心配で練習に集中できず、怪我をしても大変だ。
曽我顧問に詳しく状況を知らせて、それは極秘にしてもらって、顧問から部長に
言ってもらうのがいい。で、僕は山崎のそういう事情は、当然、秘密にする。
僕は、練習がつらい時もあるけど、したくでも出来ない人もいるのを
忘れてはいけない。陸上だけでなく、楽器の練習は、周りには騒音になる。
いくら練習したくても、周りが許さない場合も多い。
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金曜日に、部活前に美術室によってみた。後藤さん、いるかな?
スケッチは終わり、今はキャンバスに向かってるはず。
教室をのぞくと、油絵の具のついたエプロン姿の後藤さんが、手を振ってる。
僕は、恐る恐る中に入って、そばにいくと、絵のおおまかな所が出来ていた。
でも、窓辺に立つ俊一叔父の姿がない。後藤さんに聞いてみた。
「うん、なんか描いてるうちに、この男の人を描かなくても、この部屋にいて、
”やあいらっしゃい”って、笑って迎えてくれるような人、絵の外側にいるって
、この絵を見る人は感じてくれるような気がして」
なるほどな・・・僕は、後藤さんの感性に脱帽だ
「で、顧問もその方がいいって言ってくれたし・・」
雑談になりそうだったので、二人で廊下に出た。
僕は、最近、僕の夢に住みついたかのように出てくる、2頭身のベートーヴェン、
通称ベンちゃんの話をした。笑い話のつもりだったんだけど、後藤さんは、
思いのほか、心配してくれた。
リアルな姿で出てこられるより、2頭身のほうが、かわいいし と僕が言うと、
こういうの?って、サラサラっと2頭身ベンちゃんを描いてくれた。
それが、そっくりで、僕は爆笑した。後藤さんもつられて笑い、二人でお腹が
痛くなるほど笑った。
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金曜の夜の練習は30分だけ短縮して、エチュードの譜読みに集中した。
このop10-6は、テクニック的には、”他の曲に比べると”易しいほうだけど、
音楽は、実は、対旋律の曖昧模糊とした動きで、いろんな負の感情を表す
のだそうだ。ネットで調べてみた。
ベートーヴェンのようにハッキリした感情ではなく、なんとなく不安、心が重い
陰鬱、そんな感情を弾き分ける音色が大事なんだとか。
僕には無理だよ。確かにそういう感情は得意だけど、音で弾くとなると別だ
その夜でなく、次の日の合宿の夜の夢に、ベンちゃんが出てきた。
なんか、ベンちゃんは、元気よくダッシュ、ミニハードルを飛び越え、
陸上部員のアイドルになってるって夢だ。
なんで、陸上の夢にでてくるんだ、アイツ。




