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ビリビリオーラ

主人公、裕一は、練習にいきずまってますが・・

ソナタの練習は、4楽章でグルグル停滞してる。レッスン中の僕は、

”あ、ここ、すぐpにおとさないと””左手の和音がにごった。ペダルは最小限にしないと”2

”チッ、右手の和音が遅れた””ミスタッチした。ちょっとあせりすぎたかな”

と、心の中でこんな独り言の繰り返し。正直、テンポアップ、これ以上無理で悩んでる。

速さがこの曲の魅力なのに。


家で練習を続けたいけど、学校へ行かないといけない。で、昼休み、小阪さんに呼び出された。

「上野君、この間、由美子からの誘い、断ったんだって?どうして?」

と、唐突に切り出された。ってか、責められるのは何故?

「決まってるじゃないか。部活だよ。小阪さんのバレー部も、日曜日もあるだろう?」

小阪さんは、はあ~とため息をついた。


「だから、由美子の事が嫌いになったわけじゃないのね」

あ、なるほど、そこを聞きたかったわけ?でもどうして本人じゃなく友達が来る?

ちょっとムっとする。小阪さんは、運動部の女子らしく、活動的で積極的。

後ろで一本にしばったポニーテールも似合う、背の高い姉御って感じだ。

「で、なんで小阪さんにきかれなきゃいけないの」

僕は、現状を隠すところなく言う

「後藤さんの事は、単に友達と思ってるから。2回、釧路までいったのは、ちょうどレッスンの日で

釧路に行く事があったのと、僕自身、誘われた演奏会や美術展に興味があったからだ。

何もない時は、部活だよ。当たり前じゃない。僕からは誘ったことないけど、もし、僕が後藤さんを

誘っても、都合があるなら軽く断ってかまわない。そういう友達とおもってるけど。」

小阪さんも負けてない

「部活たって、上野君、マネージャーじゃない?休んでもいいんじゃないの」

僕は、このマネージャーを軽視するような言葉にはムっときた。

「なにそれ。君のバレー部のマネージャーさんに、同じ事いってもいい?」

と僕が言うと、また小阪さんの顔色が変わった。女子って面倒だ。


「話をもとにもどすね。由美子、落ち込んでたのよ。上野君が断ったからでしょ?」

そういえば昨日、後藤さんに、”今度の日曜日に釧路まで遊びに行かない?”

って、誘われたけど、僕は、「部活あるから」で即、断ったな。


そこに本人の後藤さんが、僕達の所にきて、小阪さんに、

「いいのよ。簡単に部活を休むのはよくないわ。私が悪かった。」

「でも、由美子・・」

「ごめんね。なんか上野君、最近、顔色も悪いし、ビリビリしたオーラがでてたから、

気晴らしにどうかなって。」

僕は、返事に時間がかかった。

僕がビリビリとしたオーラをだしてた。うん、練習に追われてた。

しかも上手くいかずに、イライラしてたかもしれない。


「ええと・・・まず、後藤さん、心配してくれてありがとう。自覚はないけど、

ビリビリオーラは最近練習が忙しかったせいで出たのかも。」

「ごめんなさい。でも、心配だったのよ。本当に。ピアノの事がよくわからないけど、無理しないでね」

そういう後藤さんの目は、不安そうだった。僕の気分が移ったのだろうか。

「うん、これから先生からの課題曲も増えて、本格的に練習しないと、まじに

まずいんだ。きもちだけあせりすぎてたのかも」

「でも、気晴らしは必要よ。どこかでパーっと遊ぶの」

そういえば、僕は母と知床で3日も遊んで、母は気晴らしになったっけ。

後藤さんは、何か小阪さんにささやいて、一緒に教室を出て行った。


ビリビリオーラか・・僕は家に帰って、ピアノの練習をしながらフと考えた。

よそ事を思いつく時点で、集中してないってことだけど。

やっぱり昼間の話が気になっていた。

ばあちゃんが、ピアノ室に入ってきた。最近は、練習に熱中する僕を気遣って、

来ることはなかったのに。

「やれやれ、裕一、今日はノンビリムードの裕一だね。安心したよ」

ばあちゃんの言葉に僕は 驚いた。そんなに違っていた?

「最近の裕一は、すぐピアノ室に篭もると、遅くまで出てこないし、

やれやれ、ちょっと淋しかったよ」

ばあちゃんの話によると、ピアノの事を考えてるらしい時の僕は、顔つきが違うのだとか。

じゃあ、学校でもピアノの事をしょっちゅう考えてたかな?だから後藤さんに、

気を使わせることになった?

今日はもう練習したくない気分で、結局、ばあちゃんに、青野の事を話たり、その日、学校であった事を話ながら、夜を過ごした。


その夜の夢は奇想天外だった。

小阪さんが出てきて、”これからバレーの特訓に釧路に行くから来い”と命令され

逆らうと、”青野君、オーラのモデルさんは動かないで”と後藤さんに言われ、

ベートーヴェン先生は、僕のピアノを弾きながら、”これはなんだ”と文句を

言ってる。 さすがに僕もこのままじゃ、まずいと思った。

次の日の部活で、校内巡回マラソン?に僕も参加。もちろん、周回遅れなくらい遅いけど

僕にしては、かなりハードなペース。結局、その日の夜も練習はせずに、

夢もみずに熟睡した。次の日からは、練習がサクサク進んだ。


レッスンでも、調子がよかった。ベートーヴェンのピアノソナタ6番の譜読みを

しながら、1番の4楽章をさらってる。4楽章のつむじ風のようなレガートの3連符、

右手のfで和音を連打、なんとかこなせたと思った。八重子先生には

”まあいいでしょう。だいたいはOK、後、テンポだけね。これは寝かせておきましょう”

との言葉を頂いた。100点ではないけど、平均点くらいかな。僕はちょっとホっとした。

僕の脳内は、譜読みしなければいけない6番よりも、この1番の4楽章がエンドレスで

かかっていたから。

あ、それでか、この楽章のもつ緊張感が顔や態度にでてたかな。


青野がひさびさ登校してきた。

クラスメートはその痩せ方にすごく驚いてた。でも、僕と脇坂が行ったあの時より数倍

元気だ。3人で集まって、また話が出来るのはうれしい。

「青野君、夜は眠れるようになりましたか?」

「おう。家の手伝い、バリバリやってメシ食ったら、すぐ眠れた」

よかった。夜、眠れないときは、やはり昼間、運動するのがいいみたいだ。

青野の元カノ吉岡さんは、さすがに自分のせいかと、青野に聞きにきたけど、青野は

”いや、関係ない。休んだのは病気のせい。痩せていい男になっただろ”

なんて気遣ってる。青野、大人だな・・

僕は自分の事で手一杯で、後藤さんとその友達の小阪さんにまで、心配をかけた。

なにか、青野に”おいてきぼり” をくらったようだった









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