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知床での三日間

裕一と母とマネージャー、に伯父一家4人。揃って知床へ観光へ行くことになったが、母の様子が気になる裕一

土曜日は、羅臼を通り峠を越え、一気にウトロという町まで行く予定になってる。

伯父一家の車と、僕と母、アリサさんの運転の車で2台で向かう。

伯父達とは、行動を一緒にしながらも、母さんの体調を見て別行動もありで、

そういう時はウトロのホテルで落ち合う事になる。


羅臼は、崖沿いの漁師町で、そこで昼ごはん。僕は焼き魚定食。

魚はホッケの開きで、おいしかった。

こちらでは、開きといえば、アジでなくホッケなんだ。

母さんも同じ定食。食欲なさそうに見えたけど、ホッケだけはなんとか食べていた。


峠は急勾配急カーブの繰り返しで、僕はアリサさんの運転技術のすごさに驚き、

ただし、母は、眠そうだった。これだけカーブのあるところで・・ある面、すごい。


峠の頂上は800m程。停車する場所もある。それにしても寒い。コートは着てるけど。

頂上から東の海を見ると、半島が見える、と思ったら、それは国後島だった。

伯父一家の双子達は、走り回っていて元気だったが、双子の母さんが車に酔ったらしく、若干、顔が青い。伯父は写真をとりまくってる。

僕もスマホをとりだして、峠の碑をバックに写真を撮ろうとした。

母は面倒そうに車から降りてきて、そして呆然としていた。

実は僕もそうだ。東京での自然とは、大きさが違う。自分の小ささに驚いた。


頂上をすぎると、知床自然センターがあったので、そこで一休み。

そこでは、地図・写真やジオラマで、知床の自然のが紹介されていた。

伯父一家は、センターからバスに乗りさらに、知床五湖、ワッカの滝まで行く予定。

僕達は、そこでセンターの裏手にあるフレペの滝まで歩いて行くことにした。

地図をみて、これなら近いと思ったけど甘かった。

少し下り坂をおりると、広い草原が広がっていた。所々に鹿がいた。

母は、相変わらず、無関心のようだったが、フレペの滝までの道は運動不足の母には

キツかったようだ。海鳴りやカモメの声が聞こえるのになかなか滝に着かない。

ついた先は、断崖絶壁で、壁面から水が噴出している。すごい高さで怖い。

フーフーいいながら母は、崖のふちの手すりで一息ついてたけど、崖の下を見て、

1mほど飛びのいた。

カモメが飛んでいるのを上から眺めるっていうのは、僕は不思議な経験だった。

カモメの鳴き声がうるさい。壁面で、声が反響するのだろう。

それに波の音と風の音が加わった。大自然の音も時にはうるさいくらいだ。

母は崖の先の東屋まで行ったので、あわてて僕とアリサさん行った。

まさか、ここから飛び降りるなんて、考えてないよね、母さん。


センターでは知床の四季の紹介短編映画をやっていた。

空撮というのだろうか、鳥目線で山の上に出たと思ったら、急降下 なんて場面もあり、

ジェットコースター気分。アリサさんも母さんも同じだった。

母さん、この映画が気に入ったらしく3回続けてみた。

目が回らないのかな、本当に大丈夫かな。

知床の紅葉の綺麗なのはもう過ぎてたので、残念だったけど、この映画でどれほど美しいかは、わかった。センターはみやげ物とかもあり、母さんは、”まさゆき"と書かれている

キーホルダーを買った。僕とアリサさんは少しホっとした。やっと自分の夫の事を思い出す余裕ができたかと。


夜は伯父一家と合流してホテルで知床の海の幸三昧。

みんな、もちろん母も、たらふく食べて、夜は熟睡した。

ここまで会話は少なかったし、アリサさんも僕も音楽の話題は絶対ださんかった。

母から、"バイオリン・・”っていうような話もなかった。諦めてるのかな。

土曜日、実は朝の出発時にもっと抵抗するかと思った。乗り気でないのはわかった。

祖父のサプライズの"思いやり”には、弱かったらしい。

そんな事を考えながら、僕は一人部屋で寝た。ピアノの事を考えるまえに寝てしまった。

母は、よほど疲れたらしく翌朝の朝食にも遅れた。アリサさんに確認すると、夜中に起きだすこともなかったそうだ。そんな夜は母が北海道に来て初めてかもしれない。


次の日、伯父達は羅臼湖まで徒歩で行く予定だったらしいが、この時期はクマで危ないという事で、センターのガイド役に止められた。予定がなくなった伯父達は、トウフツ湖まで車で飛ばし、知床の海の沈む夕日を見ると、強行日程を組んだ。

車に弱いらしい奥さんは、僕らと一緒に知床五湖を回ることに。


知床五湖といっても、本当は雪のない次期にだけ水が溜まる"沼”に近い。

水辺はヒグマの食料の宝庫で、クマよけと、自然を壊さないためにも、木道が設置されている。五湖地域に入るには1湖以外は、ガイドのレクチャーを必要とし、門で仕切られている。午前中でもあるし、僕らは五湖全部回るコースにしたが、元気な僕と双子母さんには、平気でも、母さんには、キツかったようだ。3人で母さんにペースをあわせゆっくり見て歩いた。快晴だったので、湖は知床連山をうつし、紅葉はなくても美しい風景だった。

母はどの湖もじっと眺めていた。大自然の沼をこれほど身近に見るのは初めてなのかもしれない。二日目の夜も同じホテルで、疲れるまで食べ、夜は皆、倒れるようにして寝たようだ。


いよいよ三日目。伯父は内陸にはいって、裏摩周が見る事のできる道を通ることを提案した。双子母はいい顔をしなかったが、娘達が車大好きらしく、やったーとはしゃいでいた。

摩周岳を反対のほうから見るのが裏摩周だそうで、それほど有名ではないらしい。

車中、母は、疲れて居眠りばかりしていたが、裏摩周は観光客も少なく展望台から広がるオホーツクの眺め、まったく形の違う摩周岳。母は目をみはった。

裏摩周を降り、近くの温泉に入って、そこで伯父一家と別れた。


夕方に家につき、祖母の作った夕食がでると、なぜか僕も母さんもホっとした。

家に無事たどりつくことが出来たという心かな。

その日、母は、練習せず、一度も起きることなく熟睡してたそうだ。


あくる日、母さんは、スマホで撮った写真が見たいという、急いで写真を母のスマホに転送。僕は学校へチャリをとばした。


その日の母の練習は奇妙だったと、アリサさんが教えてくれた。

アリサさんは普通は練習に、用がない時はつかない。今回は、一緒にだったそうだ。

母はスマホの写真を見ては何かを考え、楽譜を見たり 練習したり。

ひたすらバイオリンを弾くという練習ではなかったそうだ。

旅の間は口数は少なかったけど、楽しかったのかな。

疲れて集中練習出来ないのかと思ったけど、それでも練習しすぎで体を壊すよりいい。

疲れて集中できないから、体や指を休める機会になる。


僕のスマホには、母と映った写真の一枚を、柿沢さんにPCでメールで送った。

その写真を父が見る事になるのはもっと後になってからだったそうだ。

、父が仕事モードの時は、見ても ”ふ~ん”で終わりだったろうけど。

母も父も、仕事とそうでない時の差が、激しすぎだって。

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