陸上競技合同記録会
釧根地区の合同記録会が行われた。あの因縁のある藤田も出てるようだ
釧路での記録会で、僕達の陸上部は公式の大会は終わりになる。
釧路の陸上競技場は大変施設も整っていて、環境がいい。やはり、ここで練習する機会も
多いのか、釧路市内の陸上部は強い。
7時半には1番乗りで競技場についた僕達は、まず、ストレッチ。全員、一緒にだ。
それと主に腹筋。背筋を鍛える体幹トレーニング。
他の高校も、ちらほら来たので、僕と青野は曽我先生にことわって、他の高校のストレッチなどを
見学にいった。ウチラと同じくらい時間をかけてる高校もあれば、それぞれ各自がストレッチしてる高校もある。桜花高校陸上部は、各自ストレッチをやっていたが、ウチらと殆ど同じメニューだった。
僕は、部員全員の名前と種目の一覧を表にまとめ、そこにタイムを書きこめるような表を用意した。
部員同士で計時するので、多くの枚数がを用意したけど、間に合うかな。
これで、とりあえず後の整理が楽になる。
競技は次々の進んでいく、競技の集合のアナウンスを気行き逃さないように、入り組んだ
日程表をみた。
長距離の10000mは、うちは脇坂がエントリーしている。
このくらいの距離ならジョギングでは馴れていても競技では、脇坂も
初めてじゃないかな。僕は、10000mのスタート地点にいった。
エントリーは、10人ちょっと。脇坂と因縁のある桜花高校の藤田もいた。
こちらのほうを見て、フフンって顔した。
スタートしてからしばらくして、アクシデントが起こった。
先頭集団にいた藤田が、転んだのだ。あっと思ったが、すぐ立ち上がった。
ただ、ペースが遅くなってきて、結局、後から走ってきた脇坂に追い抜かれた。
レースが終わり、桜花高校のマネージャーらしき部員が救急箱を手にかけよったが、
大丈夫だという彼のゼスチャー。
一人になった藤田を見て、脇坂がそばに行った。慌てて僕もついていく。
脇坂は、いたって冷静に藤田に言った。
「藤田君、僕が後ろからみるに、何か膝に故障のあるように見えました。そのせいで転んだのなら、悪いことはいいません。もう競技はエントリーせず、終わったら専門医に見てもらった
ほうがいいです」
脇坂の忠告に、驚いたのは藤田だけでなく僕もだ。
後姿だけで膝の故障がわかるんだ?
藤田は、余計なお世話とかいうと思ったら、唇をかみしめ悔しそうな顔をして、自分の
チームテントに戻っていった。脇坂の指摘どおりだったんだ。
「単純な事です。ちょうど転ぶところを見てたのですが、膝が力がはいらないように、ぶれたのです。それで、何か故障があるのを無理してるのではないかと、思っただけで」
「でも、あの藤田だよ。いいのかい?脇坂にとってはイヤなヤツなんだろう?」
「相手も僕の事をイヤなヤツと思っているでしょうが、僕は、もうなんとも思っていません。純粋にアドバイスしただけですよ」
ところで、脇坂のタイムは、うmmなんというか、"遅い。初めてならこんなものか。
「ええ、今回は初めてなので、無理せず、レースの流れを勉強しました。
だいたい、、長距離という競技は最初にスパートし先頭集団にはいり駆け引きしながら、
最後に勝負をかけてゴールする。そんな競技だそうです。
さっきのレースの先頭集団のペースは、当然ながら速かったです。ついていけない事はないですが、スパートがかかった時に、脱落するのは目にみえてましたので。」
脇坂は、戦術的な事には長けているかもしれない。
青野が、男子100mリレーの計時から戻ってきた。
「どうだった?リレーのほうは」
青野は、渋い顔で、「バトンパスの時に、どうも遅れたみたいなんだ」
そういえば、、林先輩方は、自主練習でそこを重点的にやってたっけ。
残念、努力はみのらずか・・・
林先輩はチームテントに帰ってきた。ちょっと考え込むような顔。
「ヤマ、今度、バトンパスの特訓するから、そこの場所を撮ってくれるか?どうも、
受けてからの走りがもたついた気もするが、渡すほうにも問題があるのかもしれない」
先輩は ブツブツいいながら座った。他のリレー選手も帰って来た。
僕や青野のような素人には、リレーは見てて楽しい競技だけれど、なかなかこれも技術の
いるレースのなんだな。
二日目は、計時は割合とヒマだったけど、つまり次のレースに進んで部員が少ないってことだ。
練習熱心だった朝岡さんは、中長距離中心だったけど、決勝までは残れなかった。
彼女はかなり悔しかったらしく。曽我顧問のやり方に不平を言っている。
「正しい形だかなんだかしらないけど、私はもっとガンガン走りこんで
タイムを上げたいのよ。来年は3年で最後になるんだし、1度くらい道大会に出てみたい」
朝岡さんの言うこともわからなくはない。
確かに、もっと走りこめば、タイムは上がるけど、曽我先生の話しでは、そういう走りでは
そこで、伸び悩むのだそうだ。それに怪我も多くなるのだそうだけど。
帰りのマイクロバスでは、皆、疲れたのか爆睡してる人も多かった。
家に帰ってくると、驚きのニュースが僕を待っていた。
「裕一、春香さんが具合が悪くて、こっちに来て少し静養するそうだよ」
え?実家じゃなくてこっち?病院も東京のほうがずっと便利なのに。
不思議に思いつつ、翌日、アリサさんに伴われ母が、家に来た。
あの、"年中春です”の母の雰囲気が微塵もなく、目だけがギラギラしてる。
僕は絶句した。




