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夜の自主練習

それから部活内は、微妙な雰囲気が続いた。

天気に恵まれたおかげで、遅くまで練習が出来た。走りこみの時間は、あれから個人がどうしてもと望む場合は、増やす事にしたらしい。それから、曽我顧問の意向で、雨の場合はプールで水泳をする事になった。(気温が高すぎる場合も同様)

部員達は水泳の道具を、常備することになった。但し、女子の場合は”特別な日”は、水泳免除。

そして、朝岡さんら4人は、その"免除”で、水泳の練習の日には出てこなかった。

女子のこのギクシャクとした関係には、僕と青野はただ傍観するしかなかった。

脇坂に男子のほうの様子を聞いたけれど、”僕は曽我先生のやり方にしたがってますが、他は知りません”と、相変わらずマイペースだ。

そうこうしてるうちに、夏休みは終わった。本州と違い、北海道では、学校は7月20日前には、夏休みは終わってしまう。

練習時間は、当然、少なくなった。朝練もあるが、この時間もストレッチと筋トレとスローランニングが主で、キツい走りこみは時間的に無理だった。

そんな日々が続いてる時、僕は見てしまった。

ここの町のグランドは、いつも夜間照明がついている。なぜかは知らないけど。

(僕はエネルギーの無駄遣いと思っていたが。)

そこで、ウチの部員の何人かが、練習していた。女子は朝岡さん含む3人(一人は家庭の理由上、無理ということらしい)男子は、8名のうち、1年1人、2年は4人だった。男子の4人はリレー選手候補だった。

僕は、恐る恐る近づいていって、練習がひと段落した時、男子の林先輩に声をかけた。

「先輩、部活動の後、こんなに練習して、大丈夫っすか?」

「おお、ヤマ。俺は体にだけは自信あるんだ。自主練習って事だぞ、これは。」

「そうですか。。でも一応部長の川崎先輩には報告しておきます」

「あっと、それは勘弁してくれないかな、知ったら川崎、激怒しそうだ」

僕は、どうしたらいい?自主練習してる部員の気持ちもわからないではないが、部活後の夜の練習は、さすがに、やりすぎと思うが。

次の日、青野に相談してみた。脇坂も途中で入ってきた。

青野は腕を組みう~~mと考え込むと、やはり部長と顧問に報告すべきと。脇坂は、”放っておけばいいんです。結局、体を壊さないとわからないのですよ。” 脇坂はいたってクールだ。彼のいう事もわかるんだけどな。

林先輩、もしくは誰か、一人二人が練習してるなら、怪我のないようにと、ストレッチなどをする事を注意するだけで報告までいかないんだけど、部員19人(僕と青野を入れれば21人だけど)、のうち、8人が自主練習としても一緒に練習してるなら、それは部を割ってしまう事になる。だから部長に内緒なのだろうけど。

迷った末、僕と青野は部長の川崎先輩に、”これは秘密なんですけど”と前置きして、夜の自主練習の事を報告した。

案の定、川崎先輩は、顔を赤くし黙ったまま、坂本先輩の教室に向かおうとした。

「先輩、怒らないで下さい。騒ぐと事が大きくなりませんか」と

僕らはなんとか引き止めた。

「お前達、わかってるのか?顧問の先生のいう事は、絶対なんだぞ。部内の規律の問題だ。先生は、過度の走りこみは弊害があり、基礎フォームの確立からだって、ちゃんと説明したじゃないか。部活終了後、走りこみだなんて、怪我したらどうするんだ?しかもこれだけの人数なら、自主練習といっても通じないぞ。部活の一環として、みなされたらどうする?部の責任になったら、休部かヘタしたら廃部になるぞ」川崎部長は、いきりたっていた。

いや、廃部はないだろうと思ったが、怪我をした部員の父母が学校に責任を追及してきたらどうする?最近は、モンスターペアレントとかも生息してるんだ。


部長と僕と青野は、曽我顧問に、結局、報告に行った。

すみません、林先輩。やっぱり秘密は無理です。

曽我顧問は、事の次第を聞くと、口をアングリと開け、それからイスに座ってしばらく考え込んだ。

「部活の終了時間も遅くしたし、メニューも生徒の意向を汲んで、若干、重くしてある。それでも足りないのか・・・どんだけ体力あるんだっていうか、危ないな。怪我人がでるかもしれない。よし、今日、行って止めに入る。あっと今日は無理か。約束があって、どうしても行けない。明日だな。川崎、勝手にいくなよ。明日まで待ってくれ」

その日の夜、僕と川崎先輩は、林先輩に練習場所に呼び出された。嫌な予感がする。

練習に参加していた1年の男子が膝の痛みで動けなくなっていた。

予感的中、部はこれからどうなるだろう?

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