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陸上部内での対立

さっそく、PCを立ち上げ、楽譜の清書にかかったけど、すぐ挫折した。

とりあえず、弦楽四重奏にコントラバス、フルート、クラリネットという編成でホ長調、拍子は、四分の四 アンダンテ。そこから先の音符がまるっきり読めない。

そこで、最初に父に確かめながら僕が手書きし、それからPCに楽譜を入力する事にした。

居間でデレデレしていた父を、音楽室に引っ張ってった。

音楽の面倒な話をしたら、祖父母が遠慮すると思ったので。

確認作業は、忍の一字だった。父は途中から、”あ、やっぱり、Gの音にする”とか、”ここ、クラは、もっと休みを入れる”とか、ころころ変わる。

父の休暇は8月末までで、この楽譜は本当に僕は読めないので、それまでの間になんとかしないいと。父は9月にニューヨークに戻り、それから中国での演奏会だそうだ。それまでにスコア読みをしないといけないらしい。結局、その日は、曲の半分もいかなかった。


次の日に部活は、あいにくの雨だったので、屋内での練習になった。

といっても、体育館は午前、午後ともに、びっちり他の部が練習してるので、臨時にはいった陸上部が練習するスキマはなかった。

そこで、体育館上部にある観覧席を利用し、とりあえずストレッチや、腹筋、背筋を鍛える事になった。青野と僕は、二人組みで行うストレッチに協力。その後、観覧席の廊下を走って10周、でもこれでも1時間もかからない。もう少し走ろうかというとき、顧問の曽我が、もう一度、ストレッチと腹筋・背筋の練習と声をかけた。それから10周ランニング、その組み合わせを4回繰り返したところで、ちょうど昼休憩になった。

ちなみに、校内の廊下を走ったりは禁止されている。


午後からは、これまでの反省とメニュー組み。

昼休憩に入る時、女子部員にちょっとした諍いが起こった。

中心は、女子部長坂本さんと、朝岡さんだ。

朝岡さんの方をもつ女子もいれば、坂本さんの言い分を聞いてる女子もいる。1年女子4人は、2年の女子7人の喧騒から離れて、小さくなってる。


「誰か具合でも悪いんですか?」と、青野と二人でかけよる。そうじゃない事は100も承知だけど、マネージャーといえど1年、2年の朝岡さんと坂本さんが、反目してるのだから。僕らも恐る恐る訊ねるしかない。


「今日は、雨だから仕方ないにしても、普段の練習がぬるすぎます。もっと走りこまないと、今度の記録会でも記録だせないし、6月の高体連以降、私、記録が伸びないんです。それは走りこみが足りないせいと思います。メニューは、ストレッチと筋トレ、スローランニングの時間が多く、走り込みを自分で多くすると、顧問に削られるし」

朝岡さん、それで黙って走りのペースでも速くしてたのかな。

「これは、曽我顧問の方針だそうです。これからは、ストレッチや筋トレを大事にし、スローランニングで正しいフォームを身につけるのを、重点目標にするそうです」坂本女子部長は、顧問の代弁をした。

「そういうのは、雪が降って冬の走れない時期にすればいいことで、走れるうちは出来るだけ走りたいです」朝岡さんの言うこともわかる。北海道では屋外では10月後半は寒くて練習できない時もある。

寒いと怪我をしやすいので。

これは、顧問がちゃんと説明して朝岡さんに納得してもらうか、それとも方針を見直すのか、どっちかな。朝岡さんに賛同する女子は含めて4人。男子のほうも、実は朝岡派の部員もいるかもしれない。女子の諍いに巻き込まれたくないので沈黙を守ってるが。

急いで曽我先生を連れてきた。簡単に事情を説明したんで、先生はすぐ事態の収拾にかかった。

「とりあえず、昼飯だ。、全員すませてから、話しあいましょう。お腹がすいていると、ちゃんと頭が働らかんしな。」先生のいう事ももっともで、女子は全員、昼食はまだだ。

僕も青野もまだ。お腹がすいたままだ。


昼食後、視聴覚教室でこの間の高体連のDVDを、出して見せるように指示された。

うちの部員のレースの部分もとってあるけど、各レースの決勝戦も録画してあった。

先生は、何度か画面を止めながら、走りのフォームについて、語りだした。

「比べると、ウチは、概してフォームがあまり良くない部員が多い。重心が前後左右にぶれたり、上下動が大きかったり。これで走りの練習をキツくすると、膝や腰など体を壊すことになる。確かに走りこむと記録の伸びは速いが、そのうち頭打ちになってくる。なにより故障することは、その先の人生にも影響するかもしれない」

曽我先生は、今までのウチのやり方を変えるようだ。

「でも、TVでマラソンとか見てても、フォームは選手それぞれで、それに体型も違うのだから正しいフォームっていっても、それぞれと思います。」朝岡さんも負けてない。

「うm。そうかもしれないが、基礎のフォームで出来てないのに、自分にあうフォームって、わかるのか?」朝岡さんら4人は、そこでモゴモゴと黙ってしまった。

多分、男子で朝岡さんの意見に賛同する者も、これで考え直してくれるといいけど。

女子のほは、どうかな・・わだかまりみたいのが、残らないといいけど。


なんだか疲れた一日だった。

家に帰るとぐったりで、肉体的な疲れより、あの部内での事で精神が疲れたのか。

夕食だけは、タップリ食べて、今日は、早めに寝ようと思ったら、父が、楽譜を持って、変更があると言前日、僕が清書した最終稿だ、これでいいですね、って確認したものなのに。


「父、もう少し、清書する僕の身にもなってよ。とりあえず、僕の清書で最後まで終わらせよう。それをPCで清書した楽譜で、父が見なおして。でないといつまでたっても進まない」僕は訴えた

「このままいくと、また父の休暇がとれる来年以降になってしまいます。いいんですか」

「父、父ってなんだ。ちゃんと上をつけろ。父上だろう」

はぁ?、父上って、答えがそこ?今日は僕は心底疲れた。




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