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五線紙

グレンジャー氏の起こした嵐のせいで、音楽室はひどい有様のままだった。

僕と祖母はちらかった部屋を整理に行った。

中に入ると、足の踏み場もない状態。本棚類は倒れてないのが救い、その辺に置きっぱなしになっていた本と五線紙が散乱している。そういえば、、母さんのバイオリンに、預かったチェロ。大変だ。どうなったろう?僕は、落ちてるものを踏みながら、確認に行った。

バイオリンは、下においてあったので無事だった。ケースに入れて立ててあったチェロは、バイオリンと本棚がつっかえになったのか、斜めになって立ってる。微妙にセーフかな。

母さんを呼んで来て、自分の楽器とチェロもみてもらったが、無傷だった。ホっと安心。

「あれ。雅之さんは、どこかしら?こんなにちらかして。ちょっと目を離すとこうなるて、柿沢さんが嘆いていたから、少し説教しないと」母さんの言葉に、そういえば父を庭に置きっぱなしなのを思い出し、こんなに散らかすことがあるのかと 一人、心の中で突っ込んだ。


父は、庭で説教疲れでベンチに座っていた。

「やあ、裕一、彼は旅立ったかい?」父は見えてなかったのだが。

「そこに座っていたら彼の奥さんが向かえにいくるって、わかっての言葉だったんですか?」

「いや、全然。適当。そうなればいいな、くらい?でも、気持ちいい場所だろ。この庭。ここに居れば機嫌もよくなるかなと」

・・・父の答えに期待はしてなかった。グレンジャー氏が嵐を起こした時の恐怖は、祖母と僕しかわからないかもしれない。

「僕は、見える時もあるんだけど、そういう時は、大抵、それどころでない場合が多くで無視する事が殆どなんだ。だから、話もした事ない。でも、母さんの庭に来たら、皆、自然と溶けるようにいなくなるらしいから、毎年、ここで休暇をとるんだ。もし、憑いてるものがいたら、庭に引き止められるかなと」

祖母が、父にそうするように勧めたそうだ。祖母は、父に、万が一、影響が出る心配をしたんだ


それにしても、毎年、ここに来るなら僕も東京から呼んでくれればよかったのに、小学生の時は、両親が帰ってくるのを待ちわびてたんだ。まあ、どうせ父に聞いても、”あ、思いつかなかった”と 答えが返ってくるに違いないが。


音楽室へ戻ると、母さんが、「雅之さん、大事な物が行方不明で見つからなくなったら困りますよ」と父に説教。父は無視し、それには触らないでとか、これはしまわないでとか、うるさい。

とりあえず、父には隅のイスに座っておとなしくしてもらって、本、五線紙、置物、その他、に分ける事にした。その後で父が使いやすいように自分で整理すればいい。

陶器製の小さな置物とか、花瓶とかは、粉々に割れていたので、掃除しながら、物を拾っていった。

父が来たせいか、五線紙がやたら増えた。拾いながら、ふと見てみると、曲名が、

"HARUKA”という楽譜があった。母さんの名前の曲だ、父が作曲したんだな。どんだけ新婚と、僕は呆れた。楽譜は手書き。汚いのでよく読めない。小編成の曲のようだけど。

「母さんの題名のついてるこの楽譜。手書きでこれじゃあ、誰も読めないかもよ」父に向かって嫌味を言った。父の連れてきてた霊・グレンジャー氏のおかげで、二日間、部活を休んだんだ。このくらい言ってバチはあたらないだろう。

父は、僕の言葉を聞き、猛ダッシュで楽譜を取り上げにきて、五線紙ですべって途中で転んだ。

「いいんだ。これからPCの勉強をして、それで楽譜を清書するんだ。」

父は、胡坐をかき、頭をかきながら言った。

「事務所の人に頼めば?自分でPCを一から勉強してなら、時間かかりすぎだと思うけど」

「いや、これは私的に作曲したものだから、事務所に頼むのは恥ずかしい。そうだ、裕一、PCあるなら、この楽譜を清書してくれないか?」

しまった・・断る事も出来るけど、母さんの名前の曲なら、見てみたい。それに事務所の人に頼んでも、僕が見る事、もしくは聞くことの出来るのはいつになるか。困った。


結局、僕は父の頼みを聞くことにした。部活終わってからの時間で、なんとかしようか。

父はあわてて五線紙を拾い集め、そこから30枚ほどよりわけた。

それが「HARUKA」の全曲らしい。

それを、ポンっと僕によこした。なんとかなるだろうか・・

まだやることが残ってるが、僕は、もう疲れはてた。それに早々に楽譜の清書にとを始めないと。

父は、少しかは片付いた音楽室で、まだ楽譜の整理をしてる。整理しながら、楽譜に何か書いたり、線で消すようにしたり、ある楽譜は放りなげたり、これじゃいつまで経っても片付かない。後、出しっぱなしだった本やスコアが、山のように積んである。

とりあえず、今日は終了。僕は、父の暗号解読師となった。



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