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天国の門

僕は、慌てて電話を変わってもらい、自己紹介をした後、詳細を柿沢さんに説明した。

父についた霊は外国人の男のホームレスらしい事。死んだ場所が父の演奏会をの劇場、もしくはその近辺。男の妻はスーザンという名前でもう死んでいる事。強力な霊で父にも影響を及ぼす可能性のある事。などなど。

柿沢さんは、しばらく無言のあと、”上野が霊に取り付かれてるなんて、彼の妄想じゃないですか?”とこれには、ムっとしたので、”このまま父があの霊に憑かれたままだと、指揮にも影響するかも” とボソっと言った。可能性は皆無ではないから嘘ではない。やっと、調べてはみますという返答をもらい、なんなら、こちらで、霊媒師という人を探して対処しましょうか と柿沢さんは皮肉な口調まじりで言ってきた。

僕は、父の事は正直、どうでもいい。だけどあんな霊が音楽室に居座ったりしたら大変だ。

連絡のために僕のPCアドレスを教え、わかったらメールしてくれるよう頼んだ。


次の日には、もう柿沢さんから、返事が来た。

該当する人物は、エドガー・グレンジャーという元富豪ではないか。との事

父の演奏会当日、立見席で死んでいたホームレスの名前だそうだ。

グレンジャー氏は、ヨットで海で事故でスーザン・妻を亡くしているが、多額の保険金がスーザンに掛けられていたので、保険金目的ではとスキャンダルになって、企業のトップを追われた事。その後は行方がわからなかったらしい事。

写真も添付されてたので、祖母に見せると、このホームベースのようなイカツイ顔の男に間違いないだろうとの事。音楽室で見た彼は、髭も髪もボサボサで服もボロボロだったそうだが。


柿沢さんには感謝のメールを送ったが。。。じゃあ、あのエドガーとかいう霊をどうするかは、まだ祖母と相談してみるが、いい案が浮かばない。

柿沢さん、自分でなんとかしろと言っていたけど、いっそ、父に説得してもらうか。

いくら天然でも英語くらいは、わかるだろう。

祖母は、その考えには否定的だった。

「どうも。雅之の霊感は波があって、見えるか見えないかはその時しだいなのよ。それに呼びかけて彼に届くかどうかもわからないけど」

「いや、やってみて上手くいったら、ラッキーだし」

結局、父に説得してもらうころに。祖母は、なんとか、グレンジャー氏を庭に連れ出した。

音楽室で説得するのは、室内で嵐を起こされたら困るから。

それに、上手く、庭で気持ちを休める事が出来たら、いわゆる成仏できるかもしれない。


祖母の庭は、8月も中旬というのに、花はまだ咲いていて、僕も癒される場所だった。

父の説得しだいなんだけど、どうも今日は”見えない日”らしい。

父はボサボサ頭に半そでTシャツ、昼なのに、おきぬけのボーっとした顔をしてたが、どうもそれが”地”らしいのが後でわかった。


「エドガー・グレンジャーさん、僕はあなたの事が見えないけど、聞いてください。この庭のベンチに座ってると、きっと奥さんが向かえにきますよ」

と大声で父は言った・・僕は急いで祖母に伝えると、さすがの祖母もアングリと口を開け呆れてた。

奥さんのスーザンさんの霊が向かえにくるって、、そう都合よくいかないって、わかってる?父?

しかも、グレンジャー氏のいる所とは、45ど程ずれていると祖母が教えてくれた。

ただ、グレンジャー氏は、父の言葉を聞いているふうなそうな。庭にハイパワーの霊・エドガーがいるのが、ちょっと怖いけど、いつかは、彼も上がっていくことが出来るだろう。

グレンジャー氏は、ベンチにおとなしく座った(と祖母が教えてくれた)。

ベンチからの横には、小さなアーチがある。その向こうは背の高いマーガレットが生い茂っていた。祖母が、「疲れのせいかね、マーガレットの畑が霞んでみえるよ」「ばあちゃん、それ目の病気の始まりかも、病院いったほうがいいよ」なんて言ってるうち、祖母は、マーガレット畑のほうを見つめると、信じられないって顔をしてた。

「アーチの向こうが、もっと白く霞んだと思ったら、外人の女性がにこやかに歩いきた。グレンジャー氏は、喜んで立ち上がって、そして二人で白くなって消えた。白い霞も消えて、今は、はっきりマーガレット畑が見えるよ」僕には、二人も見えないどころか、アーチの後ろの"白い霞”もみえなかったが。

グレンジャー氏には、あのアーチが天国の門に見えたのかもしれない。

そして父は、誰もいない庭で、腕組みをして、幽霊のままこの世に留まることの無意味さを、まだ切々と説いていた。


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