表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/210

グノー「アベ・マリア」とバッハの前奏曲

祖母特製ドリンクは、とても効いたようだ。7月のはじめといっても、肌寒い日だったので、一応ホットドリンクを飲んだので、外にいた先輩方は一発で体が温まった、顔も赤くなったし(我慢してるってのもあるかも)。


とりあえずその日は、曲については、また後日ということにした。練習を録音したので、それをコピーして白井先輩に渡した。音中時代、僕も含めて、皆、自分の練習中の音を録音してた。自分の音を聞き、先生の指示もはいってる録音は、勉強にとても役立つからだ。

僕もその日の夜、白井さんとの演奏を聴いて見た。やっぱり合っていない演奏だ。白井先輩は僕の伴奏をあまり聞いていないようだし、僕は僕で相手の演奏の呼吸にあわせてない。一人で弾いてる感じだ。僕はやはり、バッハの平均律曲集1番前奏曲の時とかわらないのだ。自分の解釈で弾いてる。”音楽は僕のほうが上”っていう思いあがりがなかったろうか?先輩はブレスしないといけないのに、それを思いやっていただろうか?

そんな事を考えながら、僕は、その日は答えを出さずそのまま寝た。


次の日は初夏らしい、いい天気だった。こういう日は、ジョギングで長距離を走りたい。

こちらの7月はまだ天気の悪い日は肌寒い日もあるけど、東京のように冷房必需の天気よりは、もちろん、すごし易かった。月末には釧路の湿原マラソンに陸上部全員で。でる予定だ。10kmだけど、楽しみにしてる。

ただ、その前にテストだ。期末テスト。テスト勉強を本格的に始めるには早かったけど、僕は3人恒例の”自作プリント”を増やしてみた。テストを作る事自体が勉強になるし。

ただ、苦手の数学だけは、ちょっと無理だったけど。国語と古文の漢字・言葉、練習プリントも作ってみた。もちろん、作ったら青野と脇坂の二人に渡した。

青野は、”もう始めるのか?”とビックリしてたけど、彼も負けじと、生物のプリントを出してきた。脇坂も同じく。


白井先輩と練習する日が決まって、僕は棚上げしていた”グノーのアベマリア”に取り組んだ。元の前奏曲と違って、全ての音が16符音符で左のペダルは踏みっぱなし。ってことは、ハープ音をまねるように弾けばいいのかな。どちらにしても、フルートより強弱は目立ってはいけない。淡々と弾いてもまずい。

で フルートのほうのメロディはというと。最後の1つ前はritをかけ、ゆっくりになるんだな。で最後はピアノが2小節弾いて終わり。フルートの最後の音は、ド の音を4拍のばすけど、これ、フルートにはキツいかもしれない。ネットで探した情報の中に、”フルートの低いほうの音はつらい”って書いてあるブログがあったからだ。白井先輩にそこの処を聞いてみよう。他の音でも”長く伸ばす”ってのは、管楽器にとっては、易しくて難しいかも。音色がもろに出るから、音が綺麗でないと曲のよさがでないかもしれないからだ。


練習の日、僕は部活を休んだ。先輩達はこないだろう。あのドリンクは恐怖だろうし。

夏目先輩には、また、練習にお付き合いしてもらった。青野と脇坂は部活に出る。休んでとは申し訳なくていえなかったし。

白井先輩は、前回より顔色がよかった。前回は急に決まったし、たまたま体調が悪かったのかも。先輩は、録音を聞いて、メトロノームをかけて練習したそうだ。

僕は、先輩に曲のどこでブレスするか聞いたり、フレーズの終わりでは僕を見て欲しいと頼んだ。お互いにそこであわせながらいくのがいいかと、思ったからだ。

あわせは上手くいった。やはりお互いの音を聞きあわないと、簡単な曲でもだ。

やはり、先輩のフルートの音色が気になった。父様に相談だ。


二人の練習が終わって、白井先輩を見送ってから、僕はもう一度、バッハの方の前奏曲を弾いてみた。もちろん、バロックの曲なのでペダルはなし。先輩のフルートの音を脳内から消して、ピアノは、右手が強くなりすぎないよう注意をした。前奏曲の後はすぐフーガを弾く。前奏曲とフーガで一つの曲なのだ。

フーガで僕は自分の普段の練習不足を思い知った。そういえば最近、若菜ちゃんへの曲ばかりで、本格的な練習をしてなかった。

とにかく脱力できてなくても、練習を怠ってはいけなかったのでは?

そんな事を思っていて、フっと見ると、音楽室の隅に俊一叔父が心配げに立っていた。いいや、それは一瞬だけで、見直すと誰もいなかった。

幻覚か?僕は、心のほうもヤバいかもしれない。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ