表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/210

高体連陸上大会

高体連が始まった。三日間の日程で、予選から決勝まで終える。

釧路につくまでの間、僕は、バスの中で部員全員のデータと今日の体調を見てみる。

うん、故障者も具合の悪い人もいないようだ。このまま全員ベストの状態で競技ができますように。

大会は、まさに、外見には混沌としてみえる。いろんな競技がびっしり組まれているからだ。競技は、選手の集合時間が決められ、~分前に所定の位置にいないと、棄権となる。一人一競技ならともかく、何種か掛け持ちしてるのが普通で、青野と僕は、出来るだけ、大会の進行を把握し、選手に気をくばった。


選手の中には脇坂も入ってた。5000mの予選を軽々クリアした彼は、今は、テントの中で昼食中。(食事も休憩もそれぞれの予定にあわせるので、バラバラだ)。前の合宿と違い、救護の仕事も忙しかった。特に2日目。低血糖でフラフラになった選手には、ブドウ糖のかけらとドリンク、筋痙攣をおこした人には、暖かいタオルを当て、あと、携帯の酸素を吸わせたり。幸いな事に病院に行かなければいけない部員はいなかった。でも、残念ながら、3日目の決勝に残った部員はいなかった。

帰りは、僕は意気消沈し、部員はさまざまな様子だった。

予選通過した事を喜んでたり、自己のタイムにの伸びに喜んでいたり、伸び悩みで悩んでいたり。あいつにだけは負けたくなかったと悔しがってたり。


陸上は他の選手との戦いのほかに、自分のタイム・点数をのばすという自分との闘いがある。

で、これをピアノや他の楽器にあてはめると、”他の選手との戦い”は、コンクールだろうし、自分との闘いは、これは先が見えない。一生続くものなのだろうと思う。

僕の東京のピアノの師匠も、一人でシューベルトのソナタを格闘していたのを見た事がある。難易度は低くても、その曲想に何か感じたのだろう。同じところを何度も繰り返し練習していた。


もの思いにふけってた僕に、バスで後ろの席の青野が声をかけてきた。

「脇坂、ちょっとやばいかもしれない」

「青野、脇坂がなぜ?」僕は、準決勝までいった脇坂は、単純にすごいと思ってたから、何が”やばい”のか、見当つかない。

「アイツは中学時代、そんなに背は高くなかった。中3から今にかけて急に身長がのびたんだな。そういうヤツは、膝を痛める事が多いって兄貴が言っていたことを思い出してさ。それに準決勝の脇坂の走りは、アイツらしくなかった。意地になってるというか、無理してる感じだった。」

急に身長が伸びると、それに内臓や筋肉・腱などがついていかず、関節に故障をおこしやすいのだそうだ。で、二人で脇坂の振り返る。彼はいつもと同じで、飄々としてた。でも若干、顔色が悪いような。青野が「脇坂、お前、膝、痛いだろう」と直球で質問すると、脇坂は苦笑いしながら「青野君に見破られるとは。僕も修行が足りないです。確かに痛いですが、これくらい大丈夫です」青野はムっとして、「これくらい・・ってことは、もっと痛い時もあった、ということか?」と切り替えした。

僕は慌てて、痛み止めとボルタレン(塗る痛み止め)を救急箱から出して、脇坂にせまった。「ありがとう、痛み止めは入りません。ボルダレンを塗りますので貸してください」と脇坂が観念したように言った。青野は僕から薬をひったくって、脇坂の膝に塗った。脇坂は、痛みが楽になったせいか、それから、コテっと寝に入った。

曽我先生が、「脇坂、膝故障なら駅伝は無理かな」とボソっとつぶやく。

それぞれ、いろんな問題を抱えているのだな。。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ