表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
202/210

気分転換するには

ウチに連れてきた脇坂を見るなり


「おやおや、だいぶビタミン不足のようだね。特製ドリンクの出番だね」


ばあちゃんは、喜々として、台所から持ってきた。

常備してるんだ。気を付けないと、僕も。ビタミン不足にならないように。


「みたとこ、痩せたようじゃないけど、食事の栄養が偏ってるんだね。

目が疲れたりしやすいだろ?」

「ええ、そうです。体重は変わらないのですが、若干、体脂肪率が増えたのと

目の疲れがひどいです。もともと近視なのですが」


夕食は、脇坂のことを考えて、ばあちゃんは、惣菜を野菜中心にした。

味もあっさり系で、ちょうど食欲がおちてる僕には、

ちょうどよかった。

山崎は、ちょっと物足りないような残念な顔だったけど。


ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・--・-・-・-・-・-・

3人で音楽室で、ノンビリしてしまった・・

山崎はともかく、僕も脇坂も余裕ないのに。特に僕は、昨日は練習の効率

が上がらなかったし。なんか体が怠い。


「今、ばあちゃんが、脇坂におかずを数種類作ってるから。」

「すみません。面倒かけちゃって。今、父はとても忙しくて、

僕は一人で食事を済ますことが多いので、つい手抜きというか、出来合いの

弁当ばかり食べてました。あれだけだと、さすがに野菜が少ないのですね。」


脇坂父は整形外科医だった。冬場は患者さんが増えるのかな。

そういえば、NYの両親は、食事はどうしてるのだろう?母さんが作ってる

ってのは、考え難いな。アリサさんも、そういう仕事はしないだろうし。

あ、もしかして都築さんが作ってるのかも。


「山崎、お前、少し料理を勉強しておいたほうが、役にたつかも」

「そりゃ、一人暮らしするんだし、外食ばかりじゃ破産するからな」

「いや、ひょっとして、父の食事管理とかも 任される事があるかもなとか。

いや、いくら父でもそのくらいできるか・・」


僕の言葉で、山崎は、”それって仕事に入りそう。。下っ端だし”とか

考え込んでしまった。


「ところで、裕一は、体重が少しかは戻ったようですが、まだベスト

ではないですね。」

う!きたか・・実は僕は正月に激ヤセしてから、その半分くらいしか

体重を戻せてない。食事は頑張って食べてるつもりだけど。

口当たりがよくて、バランスとれてて、かつ、栄養のバランスのいいもの。

ばあちゃん、最近は、献立で悩んでることが多い。

苦労かけます。ばあちゃん。


「青野も心配してましたよ。休み明け、ゲッソリやつれてるんでびっくりしたって。」

「そうそう、その青野のおじさんが、夕方、乳製品を持ってきたぞ。

おばさんは、バターやチーズの山を見て、何度もお礼してた。

美里はチーズが大好きなんで、さっそくオヤツにチーズを食べてご機嫌だった」


青野は、畜産大学への推薦入学が決まって、ひましてるかと思ったら、何やら

忙しいらしい。今の青野酪農場や他の地域の酪農家のデータなど、いろいろ

取りまわってるらしい。

受験、卒業を控え、今は、それぞれ人生の分かれ道。

つらいのは、僕だけじゃない。それは釧路の4人からのメールでもわかってる。

そして、脇坂もその例外じゃない。


で僕は目の前の壁を乗り越えないと、音楽家はおろか、大学へも受からないきがする。


「そろそろ、家へもどります。特製ドリンクで目と頭が冴えました。今日は

勉強がはかどりそうです。」


脇坂は惣菜を持って、帰っていった。この時期は当然だけど、

高校生に必須の自転車には、乗れない。雪がつもってるから移動はバスか徒歩だ。


ー・・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・

少し脇坂や山崎とダベったおかげで、気分転換できた。

夜の練習は、スイスイ進んだ。技術的には。

まだ、西師匠に言われた「橋田にあって、僕にないもの」発言がひっかかってる。

西師匠もあいまいな言葉だ。クイズみたいだ。

だいたい、橋田と僕じゃ、育ってきた環境もピアノのレベルも違う。

ただ、”何か足りない”って感じてるんだ。


僕は、ショパンの曲の中で、簡単に弾ける曲を選んで、弾いてみた。

”雨だれ前奏曲””ポロネーズ1番””別れのワルツ”etc・・


録音したのを聴きなおしたけど、よくわからないな。

ちょうど、この間のレッスンで橋田が弾いたバッハとショパンの曲の演奏が

入っていたので、聴きなおしてみた。

バッハは、正直、”おいおい”って感じだ。テンポゆらしすぎ、ペダル使いすぎ。

ショパンの”木枯らしのエチュード”も聞いた。


で、少しだけ理解できた。

橋田は、自分の感情を上手く出してる。でも、バッハでは制御できてない。

僕は、ショパンは感情表現を制御しすぎてるんだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ