悪夢
その夜、僕は悪夢にうなされた。
中3の時に出た、ジュニアピアノコンクールが夢に出てきた。
僕のスランプの始まりはこのコンクールだったかもしれない。コンクールで僕は曲のクライマックスに、ミスタッチをしてしまった。それだけじゃなく、動揺して硬くなって、次のffの箇所で、和音の音を外した。でもなんとか最後までは、弾けた、その時は・・・
夢の中では僕は舞台の袖にいて、ミスを繰り返すそんな"僕”を見てる。
口はからからで、手も足も縛り付けられたように動かない。首だけやっと横に動かせたら、若菜ちゃんがいた。彼女は僕を見上げて、手をぎゅっと握ってくれた。
そこで、僕は目が覚めた。
「風邪気味だったのかな?」祖父は、朝のご飯をよそおいながら言った。祖母は疲れたとかで、まだ寝ている。朝食は昨夜の味噌汁の残りとご飯。
お昼は、焼きソバパン獲得戦争に参戦だな。
家を出る前に、ピアノ室に行って、若菜ちゃんのいる方に、
”おはよう ありがとう”と声をかけて、出た。
クラスで席につくと、1時間目の英語の課題を忘れたのを思い出した。
青野が心配そうに、「英語の管子は優しい顔でドSだからな」と言ってる。
ざわついたクラスが瞬間でシンとなった。管子こと管野先生が入ってきた。
「では先日の課題を提出してください。」
課題自体は単語の意味を調べるだけだけど、すぐ出来ると思って後回しにして忘れた。放課後、僕は英語の居残り勉強をすることになった。忘れた課題と、ペナルティとして、教科書の本文を音読させられた。管子の発音チェックつき。僕は実は英語が得意なので、それほど直されなかったが、課題を忘れたもう一人のクラスメートは、しどろもどろだった。
先生の威圧のオーラでかなり緊張したせいかもしれない。
帰る途中、僕は今夜、若菜ちゃんに弾く曲を決めようとしたけど、数学で、思いのほか、多くの課題が出されたのを思い出した。あぶないあぶない。また、忘れるところだった。
若菜ちゃんには、今夜は挨拶だけしておこうか。




