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脳内第九

正月は、別に料理を用意するわけでもなく、31日。今年もこれで終わり。いよいよ受験の年になる。

鍋物と、カップソバを食べて終わりにすることにした。

山崎と脇坂は、ボヤっとTVを見てる。

僕は、とにかく、ピアノを練習する事に。一日でも 弾かないと不安なんだ。


でも、困った事が起きてる。

父の演奏を聴いたあと、僕の頭の中で、父の第九がBGMのように鳴りっぱなし。

午前中の練習は諦めて ソルフェージュの勉強をしてたけど。

ヒマがあるなら、脳内再生して楽しめるのだろうな。

今は、ハッキリ言って邪魔だ。


ベートーヴェンの強いメッセージのある音楽を、父の演奏はさらに増幅させたのか。

演奏会とかは、この間のアンダンブル海や、後藤さんとも、ミニコンサートへは行った。でも、刺激は受けたけど、ここまではならなかった。

それとも、こんなに影響うけたのは、僕だけだろうか。

音楽の批評家たちは、父の指揮する第九をどのように感じたか、知りたいところだ。


とりあえずピアノにむかった。今は第九の2楽章の、あの落ち着きのない旋律が脳内を占拠中。

しょうがない。無理にでも、ワルトシュタイン 1楽章で追い払う。

だめだった。

何度も練習したけど、脳内で第九がなってるので、集中力が途切れるのか

雑な弾き方になってきた。かえってよくない。

今度はレッスンで録音したものを何度も聞く。

”師匠の音は、やっぱすごい”と思いながら。今度こそどうだ。


頼みの師匠の音も、効き目なしだ。


そうか、同じ、ベートーヴェンだからシンクロするのかも。

で、ショパンのエチュード。受験曲だけでなく、今までさらった曲を

立て続けに弾いてみる。途中、手がツリそうになったので、休憩。

今夜だけは、受験関係なく、ショパン一色で行こう。

だいぶ、指は疲れたけど、集中して弾いたので、なんとか”父の第九”を

脳内のすみっこに、おいやることに成功した。


ちょうど午前0時。どこからともなく除夜の鐘がきこえてきた。

居間で何か飲んで、頭を休めてから寝ようか。


そういえば、脇坂は父の演奏は頭に残ってるってことはないのだろうか。


「ええ、確かにCDなどで聴くより、インパクトありましたね。

裕一のように、脳内再生する事はありません。

ただ、一つ、わかりました。ベートーヴェンの第九は、病院のBGMにはふさわしく

ないということです。感情が揺さぶられる系の音楽なのかもしれません」

脇坂は、深夜の番組を 地図で見ながら 位置を確かめたりしてる。

受験科目に地理があるんだ。こうすると、頭に入りやすいし、気分転換にもなる。


脇坂の言う、感情をゆさぶられる は、よくも悪くも、気分も左右されるって事だ。

僕は、今、脳内はショパンのメランコリーな旋律が流れてるけど、ベートーヴェンの第九が

脳内をグルグルしてた時には、そういえば、ハイテンションだった。


それにしても、音楽の話は、釧路の5人会で詳しくしたい所だな。。。

そだ、メールでもしてみようかと、携帯をとりだしたが、

だめだ、この時間、アケオメメールで混むんだっけ。

とりあえず、寝る事にした。別に寒いのに神社にお参りするのもおっくう。

明日の昼にても行こうか。二人も同意見だった。


部屋に戻ったけど、今度はショパンの曲で 脳内がパンクしそう。

目もさえてきた。頭の中で、エチュード”黒鍵”がなってる。いっそ、これで体操でもするか。

だめだめ。脳内エチュードで突然踊りだすなんて、変人を通り越してる。

もう、うつ手なし。


居間で、何か食べてホットミルクでも飲むことにした。

電気の消えた居間で、小さいあかりだけつけ、冷蔵庫をあさる。


「なんだ、裕一も寝れないのか」

山崎が、ジャージにTシャツ姿で、声をかけてきた。

「東京で英会話の講習会に行きだしてから、不眠がちなんだ。勉強してるせいか?

いや違うな。家でも夜勉強してたし。。もしかして運動不足が原因か」


そういう事もあるな。脇坂が一時そうだったし。僕も運動不足だから、脳内が

パンクしそうになったのかも。

「お酒を飲むという事は、思いもつかないんですね。二人とも」

脇坂も起きて来た。

「脇坂も眠れないんだ?」

「いえ、眠らないのです。まだやるべき課題が少し残ってます」


僕ら3人は、食品庫をあさり、さっきのカップソバがあるのを見つけ、食べた。

年こしちゃってるソバだな。

そのあと、僕は陸上部でよくやってたストレッチをやした。

確かに運動不足は、よくない。脇坂も山崎も僕に続く。


「明日、神社まで走ってみようか?」

「お、いいじゃん。勉強漬で、運動してないからな」

「とてもいい案と思いますが、神社までは人で混雑して、走れないでしょう。

どこか、適当なランニングコースとかありますか?」


脇坂の質問に、僕は考え込む。東京にいたころ、走ってた土手は、

ちょっと距離があるけど。

提案すると、二人とも明日一日くらいは、勉強は休みするかって話になった。

僕は休まないというと、少し心の余裕をもちましょうと、脇坂にこんこんと

説教された。とほほ


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