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里親の話

あの後、じいちゃんは熱は下がっていた.恐るべし、ばあちゃんドリンク。

僕は山崎兄妹の事を じいちゃんに相談した。


”美里ちゃんのような場合にも、里親の元での生活が基本。施設は 

親が里親制度を希望しなかった時など、何か事情のある場合だけだ。

博行君が、美里ちゃんの施設入りを希望しても、そうはならない。

保護者は、博行君でなく母親だからね。それは、博行君にも昨日言った。

母親が病気になって、ウチが里親になった。で、母親が退院して

元気になったのだから、もう帰る事が出来る。

ただ、病気の後、体力回復するまでは、ウチで過ごし、時々

母親の所へ行くって形になるだろう。”


山崎の心配してるのは、 ”美里ちゃんが、母親に放置されるかもしれない事”なんだけどな。

じいちゃんは、”心配ない。児童相談所にもその事を伝えておくし、地域の民生委員

さんにも、それとなく言ってある”


僕は、少しだけ安心した。

ただ、もしも、僕と山崎が友達でなかったら、家を閉め出された二人は、

ウチに避難も出来なかった。

祖父母が里親にならなかったら、山崎は高校を中退する事になったかも。

それだけに、山崎は祖父母の事を心配し、負担になるのも心配なんだ。


そんな話をしながら、考えてたんで、

結局、昨日は練習は2時間。

僕は、受験では、追い詰められて、すでに崖の下にいる状態なんじゃないかな?

不安でどうしようもないのに、眠気だけは普通にやってきた。

僕は随分と、ずぶとい神経になったのかも。

ー・-・--・-・-・-・--・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

朝練習で、1時間だけだけど、ショパン、エチュードの基礎練習だ。

もう十分以上にやっておけば、後で指が自由に動く。先生に指示されても、パっと出来る

ようになるだろう。

今日からは、昼休みに音楽室で 30分くらい練習しよう。

バッハの平均律から1曲選んで、練習するつもり。


登校途中、山崎に昨日のじいちゃんとの会話を教えた。

(山崎は、美里ちゃんとやりあったあと、ふてくされて自室で勉強してた)


「ありがとう、裕一。お前も大変な時期なのに、心配かけて悪い。

おじさんに言われたんだけどな。それでも心配で、美里を脅すような事を言ってしまった。

俺は、美里が心配でしょうがないんだ。いろいろ考えてしまって」


話すごとに暗くなる山崎。僕は何も出来ることはない。

せいぜい、ピアノを弾いて慰めるか、冗談を言って気をまぎらわすか。


「それより山崎、お前、英会話、ちゃんと勉強してるのか?

税関通れなければ、NYに行けないぞ」

まあ、ほとんどは定番文句だから大丈夫なんだけどね。


「ま、お前よりは出来るな。NYで道を聞く事もできるぞ」

うm NYでか。それはそれで別の危険があるような・・

「事務所の都築さんが、一緒にいろいろ手続きしてくれるそうだ。

NYでは、ルームシェアする事に落ち着きそうだ。家賃の節約でな」

そっか、都築さんがいるなら、安心だ。そういう手続きとか事務処理は

万能のようだし。


午後のけだるい授業時間(数学)

僕は、考え事をしてた。僕が美里ちゃんと同じ小2の時、どんな生活をしてたか、

思いだそうとした。

”出されたものを全部食べなさい”というお手伝いのテルさんの言葉と、

”ピアノが上手くなったら、きっとお父さんとお母さんもほめてくれるよ”

っていう 都築さんの言葉だ。

その言葉が呪文のようになって、小学校の時は、必死に練習した記憶がある。

ただ、両親にピアノを褒められた覚えはないんだ。


中学生になってからも、”ピアノが上手くなりたい”って思ってたけど、そのうち

何かピアノの練習が無意味に思えて、自分の好きな曲は弾くのは楽しかったけど、

レッスンは、先生に言われた最低限の事しかしてなかった。


「上野、黒板の問題を前に来てときなさい」


へ?あ、どうしよう。全然、授業を聞いてなかったので、解き方もかも

さっぱりわからない。前に座る脇坂が、チラっとこっちを見た。


「今、説明した通りの順番で解いて」

数学の先生、僕が授業を聞いてないのを、しっかり見てたんだ。

イヤミな奴。

脇坂が、おもむろに立って、なぜか黒板で説明しながら、すらすら問題を解いた。

「脇坂君、君じゃない」

「おや、そうでしたか。失礼しました。僕もボーっとしてたんで、ウッカリ

自分の名前が呼ばれたと思って、解いてしまいました」

脇坂、恩に着る。ありがとう

後で説教がきそうな数学の授業の終了の鐘がなった。


放課後、担任に相談室によばれた。

授業中の態度を注意された。当たり前だけど。

で、僕は授業中にいろいろ考えてた事、今、考えてる事を30分以上は話したかな。

山崎の事はともかく、音大の受験の曲の話や、僕の小中学校時代の話など、あまり

担任には興味はないだろうけど。これは僕の八つ当たりかもしれない。

一方的に話して、僕は少し、頭の中が整理されたようにスッキリした。


反して、担任はどよ~んと暗い顔で、いろいろ考えてるふうだ。

すみません。先生、聞き流しちゃっていいですから・・


「無職でお金がなく貧乏で困る家庭もあれば、お金があっても仕事が忙しくて、子供がほうって

おかれる家庭もあるんだな。

とりあえず、今は過去の事でクヨクヨするな。つらかった事も寂しかった事も

上野の成長の一部にすれ。頑張れ」


担任に肩を叩かれ、説教はナシで終わった。

単なる八つ当たりだったのに、先生は真剣に話を聞いてくれた。

知らず知らずのうち、僕の脳内CUはパンクしかけてたのかもしれない。


帰りは 気持ちが軽くなって学校を出た。

もちろん、脇坂に ”サンキュー助かった”って、礼をいって。

脇坂は、”今度、都合のいいときにでも、また4人で勉強会しましょう”

脇坂も山崎も僕も、勉強は二の次で、たんに騒ぐだけの会になってしまうんだけど

それも大事なのかも。

(青野は最初から、騒ぐことを楽しみにしてるけど)







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