表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
154/210

僕もたまには、息抜きしたい

あと1回、八重子先生に ベートーヴェンのピアノソナタ 告別を

見てもらい、西師匠の所にもっていくまで、ある程度仕上げないと。

格別に難しいテクニックが出てきてるわけじゃないけど、

微妙にテンポがゆれる所が、かえって難しい。

初期のソナタと違って、この後期に近いソナタは、どことなくロマン派の

気配がする。


レッスンから帰ってきて、調べながら反省し、出来なかったと思う所を

繰り返し練習していた。

音楽室で一人、練習する時間は決まってるけど、珍しく山崎が何かをもって

はいってきた。いかつい顔がちょっとゆるんでるような・・


「なんかいい事あったのか?なにそれ?ラブレター?

いまどき古風でいいね。」

「ははは、俺は女子にはもてないよ。顔がな、どこかの自由業の人を

連想させるようだ。この手紙が健吾君からだ。

今日、健吾君の伯母から丁重なお礼と、写真の入った手紙がきた。

健吾君に俺宛のが これだ」


手紙には、健吾君がいじめにあった時に助けにはいった山崎へのお礼と

これから 頑張って勉強もして体育も頑張りイジメに負けないようにすると

あった。健吾君は、写真では 前より健康そうで、もちろん服装も清潔だった。



「健吾は俺になついてな。不思議なもんだ。子供には好かれないタチと

思ったんだけど。よく健吾は俺の後をくっつてきた」

子供は、その人の本質がわかるのだろうか?

山崎は、妹の美里ちゃんを大事にする。きっと他の子供へ邪険にした事も

ないだろう。

そういえば、弟の万里生君は、元気にしてるだろうか?

兄弟、離れ離れになったけど、肉親に愛されて暮らせるのならそれで幸せだろう。


ー・-・-・-・--・-・-・-・--・-・-・-・--・-・-・-

僕と青野はひさびさに陸上部を覗いてみることにした。

脇坂もついでに誘った。気分転換になるだろうし。


まず、顧問の曽我先生に挨拶してからだ。

職員室での曽我顧問は、PCとにらめっこしながら、考えてるふうだった。

陸上の事でなく、PCの操作で迷ってた。相変わらずだ。

脇坂が、それを難なく解決して(PCはフリーズしてた)対策法を教えてた。

(曽我先生、教えても出来るかどうかは未知数)


「ひさしぶりだな。特に脇坂と上野。脇坂、たまに後輩をみてやってくれないか?

忙しいんだどうけどな。ちょこっとでいい。脇坂の冷静で論理的な説明は

部員に安心感を与えるようだ。

上野、少し、リレー選手の頭を冷やしてやってくれ。長距離の部員とは反対に

やる気120㌫で このままじゃ、今度の陸上記録会までにオーバーヒート

しそうだ。

やっぱり、青野を入れた3人。絶妙な組み合わせだったな」


そが先生、会うなり、引退した3年に頼み事だなんて。何か困りごと

でもあるのか?部活であるとしたら、女子のほうだな。


「先生、これからちょっと見てみますね。資料もらいます」

脇坂は、そういうと、最近の長距離の部員の記録を印刷しグランドへ向かった。

僕もいこうとすると、先生にとめられ


「上野。頑張ってるそうだな。音楽のほう。

本当は1年の時、ジョギング同好会を作るはずなのに、マネージャーで

働かせてばかりで、申し訳なかったな。その分、音楽の勉強にまわせたろうに」


曽我先生、覚えていて、しかも気に病んでたのか?


「先生。僕は楽しかったですよ。最初、ジョギング同好会の話の時は、

僕は人見知りだったんです。

陸上部のマネージャーもする事になったとき、正直、途中でもたないかも

と最初思ったけど、マネージャーとして楽しく活動出来ました。感謝してます。」


そうか、それならよかった。と曽我先生はホっとしたように、またPC作業をはじめた。

後ろで、また先生が困ってる気配がしたけど、僕は知らないふりで・・

教えてもらうより、悩んで習得したほうがものになるかも はは


グランドでは脇坂が長距離の部員を集めて、何か説明してる。

距離が・・で・・ここまで・・で・・だから・・。で・・。

遠くてあまり聞こえなかったけど、論理的に冷静に説明してるんだ。

長距離は、戦略 が重要だ。ペーズ配分もそうだし、あと、予選のあるなしも

重要だ。予選のある時、メンバーによっては 意識的にペースをおとして

体力温存し、つぎのレースに残ることだけを、考えるとか・・


「裕一、先生、他になにか言ってましたか?」

「いやいや、3年生で忙しいのに申し訳ないとだけ。

あと、またPCで困ってるみたいだったけど、スルーした。

少し、悩んで覚えたほうがいいんだ、曽我先生は。」


脇坂は、はははと気持ちよさそうに笑った。

9月の秋空の下、本当に気持ちよさそうだ。


「そうだ、脇坂。今度さ、お父さんの泊まりの時でいいから

ウチで泊りがけで英語の勉強会をしないかい?

僕も受験科目だし、山崎も来年、就職するとき必要になるかもしれないから。

脇坂も勉強、大変そうだけどさ。1,2回、そういう勉強会があっても

刺激になるんじゃないかな?

山崎、まじで英語力アップしてるし」


脇坂は、目を丸くして

「山崎君が英語力アップしてる?信じられませんが・・。僕のしってる彼は

中学校の英文法で苦労してたはずですが・・・。裕一がそういうなら、是非

確かめてみたいです。そのアップする勉強の仕方にも興味あります」


夕食はウチで用意するからと言って、その日は別れた。

青野も誘ってみようかと 後で思いついた。

本格的な勉強会ではなく、脇坂とついでに僕のための ”受験生の気分転換”

のつもりだったから


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ