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最後の高体連陸上大会で

高体連陸上大会の日がやってきた。

3年にとってはこれが最後の大会なのだけど、意気込みというより、

”1,2年は、上手く大会を乗り切れるだろうか”の心配のほうが多い。

3年で選手で出場するのは、武田さんの5000mだけ。

後は、マネージャー、コーチなどの裏方に回る。


選手、15名、マネージャー役3名、に曽我顧問の大所帯になった。

バスの中ではしゃいでいた1年生も、釧路の陸上競技場につき、

その広さにのまれてる。もう緊張してる。


ストレッチをやったと、軽くコースでランニング。

後 ダッシュを10本くらいやって、競技場のタータンに

慣れるように、メニューを組んだ。

後、リレー組は最後のチェック。バトンの渡す位置をもう一度確認。


宿泊となった旅館では、食事時、1年生はおとなしかった。

2年は、やたら盛り上がって、調子ッパズレの歌に手拍子をつけ、騒いでる。

騒ぐことで、なんとかリラックスしようとしてるのだろう。


食事がひと段落した後、

僕ら3年は、アチコチとびまわって、2年と騒いだり、1年に話しかけたりと、

皆がまとまるように、と思ってだ。青野はうまく1,2年男子をまとめてる。

脇坂がコーチした長距離2人・村田と真田も、部長である青野には、

従順でかわいい1年生だった。


ミーティングを開き、まず、曽我顧問が、釧路の競技場のトラックの注意点や、

何か自分の体に異変を感じたら、すぐリタイヤするように、クドクドと

言っている。1年が初心者同然なので、かなり心配してるのだろう。

青野部長からは、詳しい日程やタイムスケジュール、エントリーの注意点を

話し始めた。後、競技の終わったものは、他の選手の競技の計時、録画など、

するようにと。


そういう仕事のメインは僕なんだけど、僕は指示だけはするけど、今後の

仕事の引継ぎを考え、自分でなるべく動かないよう我慢することにした。

最後の高体連というのに、僕は、”今日はピアノの練習出来なかった”

なんて、不謹慎な事を表ったりする。


ー・-・-・-・-・-・--・-・-・-・-・-・-・-

15人の選手を2種目にエントリーさせ、計時して録画して・・

結構、大会当日は、僕は、指示だけで動かない、なんて言ってられなかった。

一日目、2年のリレーは何種目かは、準決勝までなんとかいきついた。

1年は、残念ながら、参加する事に意義があるって結果だった。


それでも、1年の単距離3人組は、そこそこ頑張ったほうだった。

残念な顔をしてたけど、来年、また頑張るからと、気持ちを切り替えてた。

1年の長距離、1500mに出た真田君は、背は低いけど、コツコツ

地道に走った。1回戦落ちだけど、本人は、満足そうな顔をしてた。寡黙な奴だ。

問題は、5000mにでた村山だった。


あの”このペースじゃたるいんですけど”なんていった奴だ。

彼には顧問も5000とかは、無理せず、1500にすればいいと

言われてたのに、身長も高く、タイムも速い彼は、真田君と一緒というのが

イヤらしい。プライドが高いのだろう。

顧問も彼がどうしてもと聞かないので、”じゃあ、何かあったらすぐリタイヤする”

事を条件に許可した。


案の定、彼は途中、3000mもいかないうちに、リタイヤした。

息遣いもかなり荒く、膝を痛めたらしく足をひきづっての退場だ。

あわてて、携帯酸素、アイスノン、スポーツ飲料を、用意。

村山をひと段落させて、心配で集まってきた1年に、こういう場合の対処法を

教える。”僕は来年いないからね。覚えておくことと”念をおして。


1年の女子は、1回戦、前の選手にかなり離されて、最後にゴールした事が、

恥ずかしかったらしい。もう一つ、エントリーしてる競技に出たくないと、

僕に言ってきた。二人では、心細いので曽我顧問に、言うのに僕について

来てほしいのだろう。なんたる甘えだ。


「僕は短距離や中距離の事は、よくわからないよ。体に異常がなければ、

そのまま競技にでるのがいいよ。経験をつむことで、力がつく、いいチャンスだ」

僕を味方につけようとしたけど、おあいにく様だ。


1年の松岡・広田、女子二人は、

「でも、あんなに差がついてしまって、恥ずかしいです。」

ちょうど、1年女子の弓山が、1500を終えて帰って来た。

大差で周回遅れぎりぎりで、ゴールイン。もちろん、最後尾だ。

弓山さんは、武田さんにいろいろ教えてもらってる。


「弓山さん、お疲れ様。どうだった長距離は?」

「疲れました。バテました。でも楽しかったです」

弓山さんは、松岡広田組とは ちょっと違うようだ。


「弓山さんはいいですよね。私たちなんて、2年の先輩は教えてくれないし

曽我先生もあまり時間とってくれないし・・」


この子達、なんで部活に入ったのだろう?

「教えて下さいって2年生にお願いすればよかったろう?

陸上は個人競技だし、自分から積極的にいかないと」

1年生二人組は黙ってしまった。教えてほしいけど、2年に頭を下げるのが

意地でもいやなのだろうか・・

結局、いやがる二人は顧問に言いに行く意地もなく、2種目目も惨敗。


二日目、全道大会に行けるのは、3年の武田さん、5000m

一人だった。武田さんは、家の周りを時間をはかりながら、

走り、黙々と練習してたそうだ。


結果はよくはなかったけれど、来年につながると、僕は確信した。

しつこいくらいの基礎トレーニングだったのかも。


問題の1年女子。曽我顧問に、僕はいろいろ相談した。

結局、彼女たちは、”速く走れるようになりたい”という必死さが

感じられなかったから。

曽我顧問は、ひげをなでながら、ふーむと考えた。

で、”女子の扱いは難しい”とつぶやくと、女子部員、全員に召集をかけた。


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