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ベートーヴェンピアノソナタ 17番「テンペスト」

それからが、本格的なレッスンだった。


ベートーヴェン ピアノソナタ17番は、難しい曲だった。

有名な3楽章ではなく、しぼられたのは1楽章。

先生曰く


「このソナタは、音を最低限の種類にしながら、広大な音楽に

なっている。テンポ、リズム、間合いの取り方の三つをみると、

とても難しい曲だ」


・・・で、最初の13小節までだけで、緩→急→緩→急 と目まぐるしい。

いかも落差が激しいので、つなぎが難しい

僕は、何度も西先生に注意されながら挑戦するが、全然だめだった。


「ただ、弾くのではなく、pの所で緊張感をためるとこは意識して。

それじゃ、作曲者が何を目指すかわからないよ。このメロディを意識して。

これは、ここに向かうんだ」

何度も最初の1pでやりなおしの結果、再度、やってくるようにと・・

練習不足もあるけど、僕は曲の流れをつかんでいなかったんだ。

ー・-・-・-・-・-・--・-・-・-・-・-・-・-・--・


東京から帰ってきて、どっと疲れたけど、習ったことを忘れないように、

練習。17番の1pのみだけど。何度も繰り返す。

山崎が作業の手をとめ、呆れた顔でみている。


「俺には違いはわからないけど、何度も同じフレーズを繰り返してるのは

わかる。弾けてるんじゃないの?そこまで練習すれば」


「先生からメトロノームで練習しなさいと指示されたんだ。

速い所のテンポをきっちり覚えるようにってさ。

なんか、盛り上がるとアセっちゃうみたいなんだ」

そう、先生からは、ラルゴのゆっくりしたテンポとアレグロの速いテンポを

メトロノームで覚えるように言われた。

今更、メトロノームだなんて、って思ったけど・・


「まあ、そこそこにしておかないと、はまるぞ。俺も昨日、根をつめて

作業したら、夢の中にまで楽譜がでてきた。休んだ気がしなかった」


「で、進み具合はどう?」

「今週中に終わるかな、もっとも、すぐ修正版がかえってきそうだ。」


あの事件の事、まだ気に病んでるだろうか。僕は山崎の顔チラっと見た。

いつもと変わらないような、PC作業で目が充血してるくらいか

「裕一、心配してるんだろう?あの事で、俺が落ち込んでままじゃないかって。

もう大丈夫だ。かあさんの病状も安定して大部屋に移ったし、月野は

長ければ10年は出てこられないだろう。

その間に、俺たちはどこか遠くへ引っ越すさ。」


遠くへか・・そう、高校を卒業したら、それぞれの道に進む。

バラバラになってしまうけど、故郷は摩周町と思いたい。


「それはそうと、父の謎の指令のほうは?英検2級だっけ?」

僕は、いろいろ考えたけど、思いつくことは一つ。

山崎をNYの事務所に入れようと思ってるんだ。

父の楽譜を根気よくPCに入れる作業が、認められたのかな。


「いやそれだけど、英検だけじゃないんだ。

柿沢って人から、走り書きのノートみたいのが送られてきた。

どうも内容は、出費の走り書きのようなもんだけど、

ひょっとして、あれって、親父さんの字かな?音符も字も暗号だとか?」


ノートを見せてもらった。

汚い字だ。丁寧にかけば、それなりだろうに、面倒そうに走り書きだ。

ノートの上の隅に日付があるけど、2年くらい前かな?

これは、父が演奏旅行した際の支出じゃないかな。


これは、柿沢さんが、父の字の会計報告を、山崎にまとめさせようと

してる?でも日付が前だから、もうとっくに終わってるはず。

ってことは、これも”就職前の研修”ってやつかもしれない。


「山崎、きっと、高校卒業したら遠くに引っ越せるよ。

がんばって、作業しなよ。いいことがあるかもしれない」

僕は、ニマニマ笑い顔になるのを、楽譜で隠して、音楽室を出た。


「おい、まてよ裕一、何か知ってるんなら話せよ、裕一。」

いや、僕は100㌫自信があるわけじゃないから、言えない。ふふふ


その後、山崎が英検準2級に合格したのは、僕はおどろいた。

中学英語もやっとこの山崎が。

あいつは、”やれば、すごく出来る子”だったんだ


その後、山崎の進路は、僕の思った通りになることになった


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