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脇坂家の騒動のはじまり

僕と山崎の楽譜の清書作業は、まず、山崎にPCの立ち上、シャットダウン

から教える事だった。


山崎は、理系得意なのか、どんどん、PCの使い方をマスター

していった。ワードやエクセルなども、自分で覚えた。


「これは、就職の役にたつな。基本的な動作を覚えれば、後はアプリ

とかってやつを、使いこなすのは難しくない」


その山崎は、もう楽譜ソフトの使い方は、マスターしてる。


問題は、父の楽譜だ・・・


「この 線、何本あるかよくわからないのだけど・・」

バイオリンは高音は、ピアノのようにオクターブ記号表示しないで、  

で書く。父の楽譜は、その線があやふやだったりして確認が必要だ。


そのほかにも、わからない所、てんこもり。

僕はある程度なれてたので、青野の質問に答えて指示する。

どうしてもわからない所は、保留で付箋をつけておく

メールだと簡単に確認できるんだけどな。


清書が終わって、バイオリンがどんな旋律なのか、一度、最後まで弾きとおして

みた。むむ、難解。旋律らしい旋律が聞こえてこない。

途中、クリスマスっぽいメロがあっただけだ・・

思うに僕のピアノの勉強は、ベートーヴェンとショパンだけだ。

受験勉強だから仕方ないけど、たまには、印象派以降の作曲家の曲もやってみたい。


ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

3月になり、父の楽譜のリテイクが送られてきた。

今度は、読みづらくはあるけど、二日で修正をすませた。


クラスは、春休みを控えて、ウキウキしてたけど、脇坂だけは、

相変わらずのようにみえた。

ちょっと考え事かな?


「脇坂、なんかあった?ちょい顔色悪いきがするけど」

「はぁ・・わかりましたか。実は進路の事で悩んでます」


模試は、3月末だから、結果が悪くて悩んでるってわけじゃなさそうだけど・・


「脇坂なら無敵で、どこの大学でも受かると思うけどな」

「ああ、そっちは、心配ないです。実は、母が急に、僕と一緒に暮らしたいと

言い出してきました。母は何を考えてるのか、さっぱりわかりません」


脇坂の所は、脇坂が小学生の頃に、離婚したんだっけ。

妹は母親が、脇坂は父親が引き取ったんだ。

以来、父子家庭だったそうだ。


「それって、父親と母親がやり直すって事じゃないよね。

母親のほうは、もともと、一緒に暮らしたかったけど

出来なかった。とかじゃない?」


「いえ、母は、ドライで ”なんでも半分こ”って理屈だったそうです」


何かよくわからないな。

僕の母さんは、演奏家と母親と両立できなくて演奏家の道を選んだ。

父は、父で指揮者としての道まっしぐらで、稼いでいた。

僕は、本当は両親にとっては、仕事の邪魔だった?


裕一、裕一 の声で、ハっとなった。僕は脇坂の事から自分の事に

のめりこんでた。


「大丈夫ですか?裕一のほうが、真っ青な顔になってますよ。」

脇坂の声で僕は、チラっとかすめた考えを 消去した。

「母の一緒に暮らしたいの言葉には、次がありまして、

”私は、娘の真理亜と10年暮らしたのだから、今度はあなたが、真理亜と

10年暮らしてね。これで平等でしょ”

です。理屈としてはわからない事もないんですが、腑に落ちません」


当たり前だよ。なにが平等だ。子供は犬や猫の子じゃないんだ。

簡単にホイって交換できるかよ。

僕の憤慨を、脇坂はまあまあとなだめて、

「妹の真理亜自信も、父と一緒に暮らしたいと言ってるそうです。

今年、もう受験を終わってるというのに。

何を考えてるのか・・僕は女性の心理に疎いのでしょうか?」


顔も知らないけど、真理亜ちゃん。母親と喧嘩でもした?

上背のある脇坂の頭の上には、クエスチョンマークが何個も浮かんでいる。

この脇坂家のゴタゴタが、結果、思いもよらない事になるとは、

その時は、思いもよらなかった。

ー・-・-・-・--・-・-・-・-・-・-・-・-・-・


夜の練習は、ベートーヴェンのソナタ3番の譜読み、ショパン、エチュード

25-4譜読み。残りの時間は・・なさそうだ。


ベートーヴェンの3番は、モーツァルトやハイドンの手法を完全に超えた

作品だそうだ。弾いていくと、pのところと、はじけるようにffの

所が交互に出てきて、おもしろいけど、難しい。


ショパンのエチュードは、軽快なスタッカート、レガート、ポルタメント

短い曲の中で満載だ。リズムも面倒そう。

西師匠によると、これでエチュードの難度は”標準くらいかな”だそうだ


とりあえず、今日は譜読みだけでせいいっぱいだった。

そういえば、しばらく俊一叔父の顔を見てない。

僕と髪の毛が似てるという俊一叔父。ちょっと茶色がかった毛でクセっ毛。

中肉中背で穏やかな性格だったそうだ。

最近、いろいろ忙しかったせいか、叔父の事を思い出さなかった。


習慣になった”山崎のコーヒー”タイム。

最近、活発になってきた山崎の妹の美里ちゃんの話になった。


「美里のやつ、最近、生意気なんだ。兄の俺が怒ると、かならず

裕一のおばあちゃんの影に隠れる。

この間なんか、”おにいちゃんのバカ”とか言われた。

まじ、腹立つったらない」

僕は、爆笑してしまった。

美里ちゃんは、前は感情のない表情で言葉も少なかった。

山崎の後ろに隠れてばかりで。ふふ、ちょっと寂しいのかな山崎。

自分だけを頼ってくれる妹じゃなくなって。


ー・-・-・-・-・--・・-・-・-・--・-・-・-・-

次の日の朝、土曜日だけど、朝から脇坂から電話があった。

メールじゃないってところが、何か急な用事なんだ。


「裕一、朝早くに申し訳ないです。実は妹が今、釧路空港にいる

そうです。こちらに行くので迎えにこいと・・」


は??ああ、受験も終わったんで遊びにきたのかも。


脇坂の妹・真理亜ちゃんは、やってきた。

「兄さん、きちゃった。私、ここの街の高校に転入するから。

兄さんの高校はどこ?」








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