表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
104/210

発表会

よく考えると、11月第三週の日曜日って、あと、2週間ちょっとだ。

その日が発表会だというのに、僕はきがついて、あせった。

来週にでも、八重子先生に ”エオリアンハープ” みてもらおう。

あれ?あと短い曲、1曲とか言ってたけど、どのくらいだろう。


発表会は今年の4月に話しあいで決まり、日程の決まったのは7月

だそうだ。僕の参加は、半分、お手伝い要員としての働いてもらうためみたいだ。


”短い1曲”は、ドビュッシーの「子供の領分」から、小さな羊飼い にした。

先生にも了解をとって、練習をはじめた。

草原たぶんでの羊飼いが気まぐれに笛を吹き、それが谷間に

木霊すしてる。って曲の説明に書いてあった。

管楽器の演奏のように弾くのだろう。


もちろん、ベートーヴェンの曲も忘れず練習。

今日は、4番の2楽章の譜読み。


ー・-・-・-・-・--・-・-・-・-・-・-・--・-・-・-

あっという間に、今日は発表会の日。

練習したけど、”小さな羊飼い”は、他に演奏する子がいるので、

僕はエオリアンハープ1曲になった。

祖父母が、聞きに来ている。ちょっと恥ずかしい。


予想した通り、高校生は、僕をいれて4人だけ。

4人とも午後の部で弾くことになっている。


午前中は、順番の来た子をステージ裏に集めたり、ペダルの補助台をいれたりと、

大忙しだった。小規模とはいえ、発表会なので、大抵の子は、

ヒラヒラのステージ衣装で来てる。頭の飾りを直してあげたり、服のリボンを結びなおしたりと、僕のほかに来てる高校生も一緒に奮闘。

まさに雑用というかマネージャーの仕事のようだった。

バイオリンは、各弦の音を合わせるのが、大変なようで、

先生が四苦八苦してた。バイオリンの生徒は5人。

中学生の子は、この子は音大を目指してるそうだ。

生徒の発表が終わり、担当の二人の先生の模範演奏で、午前の部をしめっくった。

曲は、ベートーヴェンのバイオリンのスプリングソナタだった。


午後は1時半のスタートで、30分、リハーサルの時間をとってある。

午前の部は、このリハーサルで大混乱だった。

午前に来た子は、原則、帰っていいことになってる。

小学生では、さすがに1日は大変だろうからと(じっとしてるのが)

帰り際に、先生方が用意した”ご褒美”をもらい、ニコニコ顔で帰っていった。


高校生組4人で集まり、さすがに、リハは出来ないねと、話し合った。

午後の部は、混乱のないよう、打ち合わせをキッチリした。


僕たちの出番は、午後の部の最後なる先生による模範演奏の前だった。


高校生4人組の演奏の1番目が、河野君。バッハのパルティータ1番から抜粋。

2番目が僕で、ショパンの”エオリアンハープ”

3番目は、篠崎さんで、ドビュッシーのベルガマスク組曲から、プレリュード

最後、4番目が、湯川さんで、リストの愛の夢3番。


僕らの番がきたけど、緊張するより、いろいろ仕事して疲れてた。

そのせいかな。僕は、演奏の時にまったくあがらなかった。


最後は先生方の模範演奏。ブラームスのハンガリア舞曲の連弾だった。


最後、後片付けしたあと、高校生4人組が集まって情報交換した。

僕を含めて、4人とも音大希望だ。一人は釧路教育大も受けるとか。

今度、4人で釧路で集まって勉強会をすることになった。

結構、それって楽しいかも。


祖父母には悪いけど、1分だけの演奏だった。

美里ちゃんも一緒にきていて、”ご褒美”の余ったのをもらって、喜んでた。

(中身は、お菓子の詰め合わせなのだけど、”病院のかあさんに持っていく”

と喜んでるので、僕と祖父母は、ほほえましいの半分、かわいそうなの半分だった)

ー・-・-・-・-・-・--・-・--・-・-・-・-・-・-・-・-


家に帰ると、みなグッタリだった。ごめん、ばあちゃん、じいちゃん。

夕食は、出前にすることにしたらしい。ばあちゃんが、寿司を頼んでる。

(北海道の鮨は、マジにおいしい。ばあちゃんにいわせると、釧路の鮨のほうが、

断然おいしいらしいけど)

じいちゃんが、”今日は祐一は、頑張ってた”とほめてくれた。

まあ、雑用で頑張ってたけど・・はは。演奏は、アっというまにおわちゃった。


夕食の後は、ピアノ練習。

今日の高校生同士の話で、僕は、結構、”遅れてる”きがした。

まずいな~と思いながらも、ベートーヴェンのソナタは進まないし、

ショパンのエチュードの25-9のほうは、手が思うように動いてくれない。

あせらず、ゆっくり基礎練習 が大事なのはわかってる。

中学生の時に背伸びした曲で、墓穴をほったのがトラウマになってるし。


トラウマといえば、僕が同門の弟子の的を得た言葉で、ショックをうけ、

ピアノを弾く人で、受験生同士の会話って、今日の発表会ではじめてだ。

ライバルだけど、仲間でもあるんだ。


音中時代もそうだったはずなんだけどな。なぜ上手く付き合えなかったのだろう。

僕は、仲間での勉強会とか、参加したこともないし、いつもポッチだったな。

それを寂しいとも、感じてなかった。

”我が道を行く”っていうのでもない。中学生の時は、同級生と仲良くなるのが、

ちょっと面倒だったんだ。

僕には、指揮者上野雅之の息子って、思われてるってプレッシャーを感じて

たんだ。今思うに、それって、意識しすぎだったきがする。


ボヤっと物思いしてるうちに、時間がすぎていく。


あわてて、今度はベートーベンのソナタ4番の練習をする。

しつこく繰り返す3連符で、僕はつい前のめりになって弾いてしまう。

で、メトロノームをかけて、どこであせるか、確かめたりした。


譜面にチェックを入れてるのに、イスに座ったまま、寝ちゃったらしい。


山崎は、毛布をやさしくかけてくれる なんてことはなくて、

「起きろ。祐一。残念ながら、今日はタイムアップだ。

練習時間終了。さあ、もう音楽室から出る!」

と、僕をしっかり監督してくれた・・とほほ。


ばあちゃんの、指示だな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ