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東京でのレッスン ベートーヴェン ソナタ2番

朝、目覚ましでやっと起きた。まだ、修学旅行気分なのか、一人なのが不思議な

くらいだ。今日はレッスンの日だ。

レッスンの時間の午後1時まで、練習しないと。

(ほぼ一週間ピアノに触らない生活だったし)


朝食を台所に調達にいった。そこには、なんとかあさんがいた。


「おはよう、裕一。昨日の夜くるっていうから、来たんだけど

もう、裕一、寝てたし・・びっくりした?」

「かあさん、仕事はいいの?それとも休みの日?」

かあさんと父のスケジュールは、柿沢さん、アリサマネージャーが僕のPCに送って

くれるようになった。かあさん。今日は仕事で家にはいないはずだった気がする。


「本番で3日前から山形にいるはずだったんだけどね。向こうの都合で

急に延期になったのよ。会場で事故があったんだって。外壁が落ちて怪我人が

出たとかで、当面、立ち入り禁止状態、他の会場もとれなくてね。」


かあさん、延期になっても、スケジュール大丈夫なんだな。

前ほど、忙しくない?

「心配しないでよ。仕事はちゃんとあるから。

この間も言ったけど、スケジュールを調整中なのよ。無駄を省くのに、

海外での活動と、日本での活動を、なるべくまとめるようにしてくれているの」


”くれてる”ってのは、秘書のアリサさんまかせなんだな。

聞くと、アリサさんはNYに出張中らしい。


ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

練習したいらしいかあさんを押しのけ、僕はピアノの練習に

集中した。休んだ分、テクニックで鍛えないと。

特にベートーヴェンは、オクターブの動きが多いから、練習だ。

でも、気を付けないといけない。オクターブの練習は手に負担がかかる。


昼は早めにすませ、僕は、修学旅行の荷物を持って、西師匠宅へ。

レッスン後は、そのまま空港に急がないと。


西師匠宅へ到着。修学旅行の延長のように、移動してる気がする。


レッスンでは、先生は恐怖のニコニコ顔で迎えてくれた。

「裕一君、修学旅行の帰りなんだって?大変だね。

じゃあ、疲れを吹き飛ばすように、ショパンのエチュード25-3

元気にいってみようね」


さあ、気分を変えないと、疲れてるって気持ちは、脳の底に押しやった。

曲は、八重子先生のイメトレがよかったのか、気持ちよく弾けた。


「うん、いいね。ちょっと指のあやうい点もあったけど、まあ、合格」


次の25-2は、気分をメランコリックに変えて、でも、冷静に。

今回、旅行中練習できなかったけど、午前中の特訓が効いたのか、うまく弾けた。


「OK、じゃあ次は25-9ね。わかってると思うけど、タッチは軽く。

ffでも軽く。繊細さも忘れず。じゃあ、次、ベートーヴェン11番。

自信なかったら、楽譜開いててもいいよ」


”見てもいい”ではない。暗譜はしてても、楽譜がないと不安になったりするし、

実際、演奏会でも楽譜を広げて演奏するピアニストもいる。

もともと、”暗譜で演奏”を始めたのは、リストかららしい。

まったく、余計な事をって時々思う。


11番は、意地でも楽譜は広げずに、最後まで(繰り返しなし)で弾きとおした。

正直、チラっと不安な箇所もあったりしたけど、”これはこう弾くのです”と

自信を持って弾いた(ほぼ、開き直りの心境だな)


先生からは、力強い演奏でよかったですが、時々、タッチが荒くなってます。

との評価でOKがでた。ついでに、裕一も、たくましくなってきてるねと・・

(それって、体型のことじゃなく、神経が図太くなってきてるって聞こえる)


問題の2番は、やはり大問題だった。

八重子先生の所でもつまづいた1楽章の冒頭の4小節で、何度も止められた。

確かにここは、主題だから、大事に弾かないといけない。

また、その後も、易しいパッセージと思っていても、音のもって行き方が良くなかった

ので、何度も止められた。ただ弾くのではなく、そこに作曲者の主張が入らないと。


・スタッカートは、切ればいいってもんじゃない。音の長さのめどは半分、

この2番目の音は響かせて。

・その32連符は、次のAに持っていくように。

・fp、pでも右手の旋律はちゃんと弾く

・その左手の伴奏は、ノンレガートだから。

・そこは、オクターブが3連符になって上昇・下降の所。ppから爆発するようにffに

・・・etc

1楽章だけで山のように注意事項が・・

スマートで優しい西師匠の顔が、別人に見える。そうしたのは、僕なんだ。


2楽章、4楽章は、それなりの注意を受け、3楽章は、がっちり注意だ。

3楽章のスケルッツオは、トリオは、音のつながりに注意を受けた。

先生が弾くと、”ああ、こう弾くんだ”って納得する。

言葉で表せない分、音で話てるように、物語るんだ。。


2番は、次にまで仕上げるように。そして、ベートーヴェンのソナタ4番  

を譜読みするよう言われた。まだ、三分の一も習得できていないソナタ集。

僕は、あせってるけど、進まない。学ぶべきことが多すぎる。


規定のレッスン時間を超過して、僕はあわてて空港に駆けつけ、

飛行機にのってバスにのって、じいちゃんにバスセンターに迎えにきてもらって、

やっと、ウチにたどり着いた。楽しかったけど、長い旅行で心身とも疲れた。


夕食を食べながら、先にもどった山崎と美里ちゃんを交え、

旅行中の話に花が咲いた。美里ちゃんは、TDLに行ったことを羨ましそうに

聞いていた。しばらくは、土産話で勘弁して。


ピアノ練習に向かおうとすると、ばあちゃんが、顔色をかえて僕に言った。


「裕一。おまえ、後ろに何を従えてだい?そのチッコイのは。


僕は慌てて後ろを見ると、片手くらいの大きさのキツネの縫いぐるみ?みたいのが

僕の後ろにいた。キツネ耳に尻尾。でも体と顔は人で、平安時代のような服を着てる


なんだろ。これ・・・


”キツネ縫いぐるみもどき”が、喋った。

「ここどこ?かかしゃま、いない。」



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― 新着の感想 ―
[良い点]  100話です。 「キツネ縫いぐるみもどき」の登場です。  以前と同じようなことを申し上げますが、物語の縦の糸、横の糸、その両方がからみ合うさまが上手に描かれていると思います。  さらに…
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