夜想曲
1 夜想曲
僕、上野裕一は、結局、父の祖父母の住む町の高校に通うことになった。
入学式後、クラスは中学校から持ち上がりの顔見知りだけで、、案の定、僕は誰とも話すこともなく、周りから浮いた存在だったよう。まあ、どうでもいいけど、
校内を見がてらブラブラしてると、夜想曲が聞こえてきた。
ショパン、夜想曲op9-2。誰でも一度は聴いたことがあると思う。
右手の甘い旋律、左手の伴奏は簡素で優雅、のはずなのだけど。
どうも、熱心さはわかるけど、イビツな曲になってる。
つきあたりの音楽室から聞こえるので、見ようとしたら、後ろからきた、2年生らしき女子数名が、音楽室に入っていった。
そして、ピアノの音が消え、フルートやクラリネットとかの管楽器の音がなりだした。
2年生のちょっと太った女子が、音楽室から出てきたので、僕が思わず声をかけた。
「さっきの曲、先輩が弾いてたんですか?」
先輩はバツが悪そうに苦笑いした。「ヘタクソな音が聞こえたのね」
僕も苦笑いしてごまかす。お世辞にも「上手ですよ」と いえない自分の性格が、歯がゆい。
僕は「もっとゆっくり弾てみるとといいかも」と、言い捨てて、しに場から逃げ出そうとすると、思いがけず、「ありがとう、やってみる」と 素直な返事がかえってきた。
「私、夏目朝子といいます。よかったら、これからもアドバイス下さいね」
そういうと、夏目先輩は、時計を見て、慌ててに走っていった。
”口が災いの元”となるかも・・僕は音楽については、思った事を言わずには
いられないようだ。
あの子にあげられる最高のアドバイスは、
「その曲は、先輩には無理だから易しい曲に替えたら?」だ・・
危なく口を滑らす所だった