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イマジン その四

 ユウに続き、ミズハのイマジンも明らかになった。だが僕のイマジンはその片鱗へんりんさえ現れない。

「対象が相当限定されているのだろう。キューブでは力不足だ。イナリに協力してもらおう」

 センセイはイナリを呼んできた。彼が様々な材質の物体を空中から出してくれた。イマジンでセンセイの想像を具現化しているのだろう。木、石、金属、プラスチック、紙、布……多種多様の物質が現れた。

 僕たちは材質そのものだけではなく、それらが持つ特性、通電性、展性、可燃性等にも注目した。それらに様々な動作を試し、特には物質同士を組み合わせ、地道に検証を続けた。

 生物が対象かもしれないと考え、近所で野良ネコを捕まえて試しもした。野良とはいえ生き物だ。もし破裂でもしたら夢見が悪い。僕は細心の注意を払った。注意のかいなく、猫には何事も起こらなかった。

 猫を外に逃がしに行ったセンセイが戻ってきた。

皆瀬みなせ。ここまでやってもわからない原因は、二つ考えられる」

 落第のレッテルを張られそうで、どきりとした。

「一つは、条件の不良。もっと細かく条件を絞らないといけないのかもしれない。だがイナリの協力もあって、相当数の物体で実験した。これ以上限定された対象を探すのは難しい。もう一つ。可能性が高いのはこちらで、見落としだ。実はイマジンはすでに現れているのかもしれない」

 使い物にならないほど対象が狭いか、気づかないほど弱々しいイマジンなのか。

「才能が、ないんでしょうか」

「どんな人間でも想像力はほぼ均一だ。皆瀬はイマジンが絞り切れていない、ただそれだけのことだ」

「センセイ、話の途中で悪いんだけど」

「なんだ、岸戸きしど

「イマジンがすでに現れているかもって言っただろ。例えばなんだけど、イマジナルを出すイマジンとかもあったりするのか?」

 僕ははっとした。ユウが言おうとしているのは、僕の部屋にいるイマジナルのことだ。

「ある。特定のイマジナルを出現させるイマジン。そのイマジナルが特殊能力を持っている場合もある。覚えているかな、君たちが戦う相手のことを野良イマジナルといったのを。イマガイズによって生み出され、制御されるイマジナルも存在する」

「ユウ、冴えてるじゃない」

「へへへ」

「君たちだけで話を進めるな。俺にもわかるように説明してくれ」

 僕は急く心を可能な限り抑えながら、いぶかしがるセンセイに部屋のイマジナルのことをかいつまんで話した。

「ふむ、そいつが皆瀬のイマジンである可能性は高いな。連れてこられるか?」

「最近は少し打ち解けてきたので、できると思います」

「がっかりさせないように先に言っておくが、イマジナルを見ても持ち主まではわからない。五感のいずれかを共有していれば、皆瀬自身がすでに気づいているはずだしな。だが、皆瀬のイマジンであるのなら、そのイマジナルも特訓に参加させた方がいいだろう」

 『十七歳の花束』が流れ始めた。

「〈仮面さん〉か」

「もう、こんな時間ね」

「早いもんだな」

「今日はここまでだ。三人とも長時間、ご苦労だった。岸戸でも北城ほうじょうでもいいが、皆瀬を家まで送って行ってやってくれ。想像の仮面がないと万が一ということもある」

 ユウがすぐに立候補した。

「逆方向なのに、ごめん」

「いいって。そうだ、ミズハも行こうぜ。ヒロのイマジナルを見にさ」

「あら、いいわね。じゃあ私も行くわ」

 僕を送るついでに、イマジナルの様子を見ることになった。

「話を聞く分には、そのイマジナルはさほど危険ではない。三人なら心配いらないだろう。そのイマジナルよりも、扱い慣れない自身のイマジンの方が危険だ。むやみに使うなよ。大体は判明したが、まだ完全にはわかっていないのだからな」

「色々試したい気持ちはあるけどなあ」

「またユウを吹っ飛ばしても困るでしょう?」

「うへえ、それはやめてくれよ。使わない方がよさそうだな」

「今日は慣れないことをして疲れただろう。自分たちのイマジンや、そのイマジナルも大事だが、頭と体を休めることも忘れるな。明日は訓練なし。明後日、放課後にまた、ここへ来てくれ」

 僕たちはうなずき、はっきりと返事をした。

 僕は仮面をつけ、帰る準備を始めた。センセイ曰く、ないよりはましだし、なにより他の住人のために仮面はつけること、だそうだ。僕が仮面をつけないことで住人の想像を刺激し、イマジナルを認識してしまったら大変だ。

 それはユウとミズハも同じだ。知り合いと出会ったときのために、普段はイマガイズではなく仮面をつけることになった。イマガイズは仮面の上からでも問題なく発現できるらしく、いちいちつけ変える必要はないそうだ。

 僕らは準備を済ませるとラークを後にした。ドアベルがからんころんと鳴る。センセイが軽く手を挙げて見送っていた。

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