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何も知らない学者さん

その学者さんとは、ある古い街の古い図書館で出会いました。

「わたしは、なんでも、しってますよ!」

得意気に、その小さな顔には大きすぎる眼鏡の奥の目をらんらんと輝かせて。

マントの裾をまるで尻尾のようにぴょこぴょこと元気に引きずって。

「さあ、なんでも、わたしに、きいてください!」

誰もが、本に視線を落とす中。

旅人の私にそう尋ねてくれました。

さあ、何を聞きましょうか?

この街の歴史とか?

「ちょっと、まってて、ください!」

そう言うと、ちっちゃな学者さんはパタパタと歴史の本を持ってきました。

「このまちは、ですね……」

そしてまるでリスのように本のページをめくり始めます。

他にも、花の図鑑や、地図。旅に役立つ道具のカタログまで。

得意気に、とても分かりやすく私にその知識を披露してくれました。

その姿があまりに可愛くって、ついつい私はいじわるしたくなっちゃいました。


それじゃあ、学者さん。

明日の天気は分かりますか?

不釣り合いな大きさの眼鏡の奥の目が、ぱちくりと見開かれました。

そして、すぐに学者さんはたどたどしく音を上げてしまいました。

「……あしたのてんきは、ほんにのってないです……」

いじわる過ぎたでしょうか。

でも、悪気があったわけではありません。

ちょっとだけ、旅人心がくすぐられただけです。

……それじゃあ、最後にもう一つ学者さんに質問をしましょう。

この街で、料理の美味しいお店はどこですか?

「あ! それなら知ってるよ! ついてきて!」

途端に学者さんは私の手をとり、図書館を飛び出しました。


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