第伍歩・大災害+61Days 其の壱
だーいしーったーい!
関係各方面の同志諸兄の皆様方、御免なさいです。
日数の計算を間違えておりました。
レオ丸の現在時間は、六月末ではなく、7/4でありました。
コラボ下さっている、読んでいるだけの人様、或未品様。
御両人の御作の時間軸に、御迷惑をかけていませんでしょうか?
其れに櫻華様、御作との兼ね合いに齟齬はございませんでしょうか?
……凡そ、一週間はズレておりました。
重ね重ね申し訳ございません(平身低頭)。
何ヶ所か、訂正させて戴きました。(2015.8/25)
船の舳先辺りに胡坐を掻きながら、レオ丸は<彩雲の煙管>を吹かしつつ鼻歌を奏でていた。
寄り添い耳を傾けるのは、<獅子女>のアヤカO。
レオ丸の膝上で欠伸をするのは、<金瞳黒猫>のマサミNである。
「……主様は、異教の御歌がお好みなのですね?」
「御主人は、破戒僧だから仕方ないっちゃ」
「そーでもないで、アヤカOちゃん。
『星の界』って、今の雰囲気にピッタリやなぁーって思うたんで、ついつい思い出して歌ってみただけやで?
ホンで酷い言いようやな、マサミNちゃん。
こー見えてもって、どー見えてるか知らんが、故郷の歌かて歌えんで」
“家族”である従者の小さな頭を撫でながら、レオ丸は再び吹きつける海風に囁くような歌声を乗せた。
其のものズバリ、『海』という曲名の百年以上前に作られた唱歌の二番を。
♪ 島山闇に著きあたり~ ♪
ウニャウニャとマサミNは気持ち良さげに耳を寝かせ、アヤカOは笑みを湛えながら静かに目を閉じる。
五色の煙は、歌声を纏った端から夜の空気に溶け込んで行った。
畳まれた帆は風を孕む事はないが、帆船は些かの遅滞もなく当たり前のように穏やかな海面を切り裂き進む。
<召喚術師>は、意識で繋がった“家族”に指示を出しながら、初めて体験する此の世界での海路を楽しんでいた。
其の理由は、時間を撒き戻した昨日の午後にある。
現時点から凡そ、半日ほど遡った時分の事。
レオ丸は、グッタリとしながらアヤカOの背中から滑り落ちた。
「大丈夫ですかいな、法師?」
「虚勢を張らせてもらうと、……大丈夫や」
チタの港町へと到る、街道沿いの森の中。
其処への道程でテイルザーン達に合流したレオ丸は、逃避行にはそぐわない性格の<首無し騎士>を虚空へと帰還させ、変わりに先導役の務めを果たした。
そして現在、軍馬から下馬した脱出組と共に、木陰で身を潜めている。
空の旅による飛行酔いから回復せぬ内の遁走劇に、レオ丸はフラフラ状態から抜け出せぬままであった。
「ホンマなら、一時間くらいシェスタを貪りたいけど……」
「そんな余裕はなさそうですな、レオ丸学士」
手拭いで磨いた銀縁眼鏡をかけ直しながら、志摩楼藤村が駆けて来た街道の彼方を見晴らして呟く。
ナゴヤ闘技場のある方から、二頭の馬が疾駆して来るのが見えた。
徐々に近づいて来る騎乗者は、見慣れた姿と見慣れぬ姿である。
「あれは……どう見てもさっきの女将軍ですよね?」
「法師、どうするナリー?」
「熱烈な追っ掛けが来ちゃいましたよ?」
レディ・ブロッサム、ホウトウシゲン、†ばる・きりー†が、矢継ぎ早にレオ丸へと言葉を投げかけた。
「まぁまぁ、そないに心配せんでも」
<彩雲の煙管>を咥え、胸一杯に吸い込んでから高々と五色の煙を吹き上げるレオ丸に、脱出組は少し呆れた顔を見せる。
だがテイルザーンだけは、暢気な仕草に終始するレオ丸に合わせて肩の力を抜くと、両手を伸ばして深呼吸をした。
「何があっても法師が、ちゃーんとしてくれるさ」
「まーねー」
先ほどまでとは打って変ってリラックスした様子の<武士>と、まるで狼煙のように五色の煙を吹き上げている<召喚術師>との遣り取りに、脱出組は我に返ったように落ち着きを取り戻す。
相手が職業軍人とは言え、たかが<大地人>ではないか、と。
<冒険者>がオタオタとする必要性が、何処にあるというのだ、と。
<吸血鬼妃>と<獅子女>は、そんな彼らの様子に顔を見合わせついでに肩も竦める。
「主殿」
「ほいほい」
「彼の者が、到着したようでありんす」
直ぐ傍の街道から、馬の嘶き声がした。
「法師、居られますか?」
続いて発せられたのは、聞きなれた声による誰何だ。
「はいな、ミズ……もといミスハさん」
繁みを掻き分け、木陰から街道へと進み出たレオ丸は、鞍上から見下ろす勇ましき戦乙女姿の女性に軽く頭を下げる。
「お待たせしました」
「いやいや、どーいたましくて。ミスハさんこそ、色々エロエロと御遣いだてして、ゴメンやで。
ほいで、……其方の御仁が?」
「はい、左様です。ヤマトを取り巻く海の向こう、外つ国からの来られました御客人です」
「初めまして、御客さん。……あ、其のままの状態で結構ケッコー。
ワシは、西武蔵坊レオ丸と申しまする。何卒御見知りおきを」
下馬しようとしたミスハの同行者を押し留めたレオ丸は、<中将蓮糸織翡色地衣>の裾を摘んでヒョイと腰を屈めた。
「馬上から失礼します。リルルと言います。私は……」
「ま、自分の事情は後でゆっくり教えてもらうとしよっか。
ほなまぁ、皆さん。“通行手形”さんが到着した事やし、堂々と行こか♪」
レオ丸のやや失礼な物言いに、ミスハが頬を膨らませる。
「酷い言い方じゃありませんか?」
「えッ? ああ、ゴメン! 堪忍な、ミスハさん!
え~~~っとぉ……仕切り直して、っと。
さて皆さん、我ら彷徨える者達を導き給うべく、いとやんごとなき“La Liberté guidant le peuple”が降臨なされました。
マスケット銃も三色旗もなけれども、彼女に従えば我ら自由を手にする事、間違いなし!
されば、いざ行かん! 新天地へ!」
「判りました! もう、良いですから!」
膨らましていた頬を真っ赤に染めるや、両手を広げ大袈裟に口上を述べたレオ丸に、馬上から大喝するミスハ。
一方、木陰から恐る恐る街道へと身を出したナゴヤ脱出組の冒険者達は、馬上の女傑のステータスを確認し、相手が<大地人>の女傑ではなく同じ<冒険者>である事に一旦安堵するも、其のステータスに表示された所属/<Plant hwyaden>の文字に、改めて緊張の度合いを高める。
何故ならば、ミスハは顔を隠してナゴヤへと入城して以来、ずっと裏方に徹しており最小限の者としか接触していなかったのだから。
だが、眼の前で行われた僅かに艶めいたコントに、顔を見合わせ肩を竦め警戒心を即座に緩めた。
「まぁ、取り敢えず……馬に乗るか?」
テイルザーンは、恥かしげもなく演じられた痴態から目を逸らして言うと、冒険者達も“ああ”や“うん”と曖昧に返事をする。
「ほいたら、アマミYさんにアヤカOちゃん。
此れより先は人目が煩いさかいに、一旦お戻りよし」
レオ丸がポンと手を叩くと、足元の影が強まる日差しとは反対の方向にビュンと伸びた。
恭しく一礼をしながら、其の中に身を沈ませる<吸血鬼妃>と<獅子女>。
“家族”を回収したレオ丸は、ミスハの手を借りながらノタノタと軍馬に跨り、彼女の背後へと納まる。
「二列縦隊を組んで、私に従え。並足!」
ミスハの号令通り、テイルザーンとリルルの後背に五騎ずつが並び、殿の任についたのは虎千代THEミュラーだ。
冒険者達を乗せた軍馬は、整然と街道を進み出した。
ナゴヤ闘技場からチタの港町の間は、ハーフガイアである此の世界でならば直線距離で約五キロメートル。
たかが五キロメートルではあるが、されど五キロメートルである。
<冒険者>にとっては“たかが”でしかなく、<大地人>にとっては“されど”であった。
理由は、巨人種などのモンスターが出没するからだ。
<冒険者>にとってのモンスターは、レベルを上げるために経験値を与えてくれる存在で、財宝やアイテムを供与してくれる存在でしかない。
だが<大地人>にとってのモンスターは、例え低レベルであっても、日常を根こそぎ破壊する恐るべき脅威なのだ。
ナゴヤ闘技場近辺にはシイロの村を含め、大地人の集落が幾つか存在する。
其処で営まれている日常を、其れらモンスター達から守るために、大地人の騎士達が駐留する砦もまた近在していた。
元の現実ならば大高城址、ヤマトの地に於いては<高丘砦>。
キヨスの街から定期的に派遣される騎士達が常駐しているが、今は最低の人員だけを残しチタの港町の警備に就いていた。
町の入り口に立つ歩哨達は、街道上に現れた馬影に槍を手にし、警戒を高める。
「開門せよ!」
歩哨達の前で軍馬を止め、声高々に命令するミスハ。
神聖皇国ウェストランデの将官の徽章を着けた者が発した下命に、歩哨達は槍の穂先を下げてアタフタと、町の入り口を閉ざす門扉に取りついた。
港町を取り巻く防護壁の、陸地側唯一の入り口を封じていた強固な門扉が、軋みながら開かれる。
「出迎え御苦労!」
ゆっくりと軍馬を進ませる、ミスハ。
開かれた入り口の向こうには、二十名ほどの<大地人>の騎士達と三名の<冒険者>が跪いていた。
「準備は整っているのか?」
「はい、閣下。委細滞りなく」
軍馬からヒラリと降り立ったミスハに、優美に起立し僅かに腰を屈めた冒険者達の内の一人、マリユスが慇懃に答える。
「ならば良し。直ぐに出立する!」
華麗とは程遠いさまで地に足を着けたレオ丸は、テイルザーン達にも下馬するように合図した。
ザッと音を立てて、大地人の騎士達が左右に分かれて道を空ける。
「閣下、其の者達は?」
隊長格の年嵩の騎士が、ミスハの背後に居並ぶ雑多な格好の冒険者達を睨みつけながら疑念を呈した。
「執政公爵殿下の御下命により此の地へ派遣された、“左衛門府預征夷押領使営団”の団長が発した命により、此奴らを移送する。
事由を問う事は、一切罷りならぬ。詮索は無用と心得よ」
「承知致しました。差し出がましき行い、平に御容赦下さいませ」
「判れば良い」
背筋を伸ばし傲然と振舞うミスハに、騎士はしゃちほこばった様子で頭を下げつつ引き下がる。
ウェストランデの支配者層の一翼を担う、軍高官の徽章が示す威光の前には、一地方の軍末端は平にひれ伏すしかなかった。
口を真一文字に結び、不揃いな彫像のように整列するだけの騎士達が見守る中、軍馬を乗り捨て、やや挙動不審気味に進む冒険者の一団。
何故かレオ丸は、俯き加減で身を小刻みに震わせながら、右の脇腹に手を当てつつ足を運んでいる。
其の隣を闊歩するミスハは、レオ丸のがら空きとなっている左の脇腹を、そっと手を伸ばして力一杯に抓った。
「片腹だけが痛いんじゃ、バランスが悪いでしょう?」
絶対零度よりも何倍も冷え冷えとしたミスハの囁きに、レオ丸は苦悶の声も上げられず歯を食い縛る。
デレの次はツンとは……何とも御盛んな事だな、とテイルザーンは前方の密かな寸劇に瞑目した。
海岸に沿って縦に細長いチタの港町を横断するのには、さして時間を有しない。
マリユス達を道案内役にしてメインストリートを歩めば、数分とかからずに商業区を併設させた港湾部へと足を踏み入れる。
レオ丸達一行の前方には、桟橋に横づけされたものや沖合に停泊するものも含めれば、大小様々な十数隻の船舶が投錨していた。
そして左右には、長き渡り潮風に晒されてきた石造りの強固な店舗が立ち並び、赤銅色に肌を染めた海の男達が忙しなくひしめき合っている。
レオ丸の見た処、店舗の数と男達の数は等しく結びつかなかった。
其の理由はと言えば、思案するまでもない事である。
チタの港町の容量を遥かに凌駕する船団が、来航したためであった。
常になく、望外に多くの船と来訪者が訪れたがため、地方の小さな港町は異常なまでの活況に満ち溢れている。
急ぎ足で行き来する者、荷運びをする者、何かの差配する者、道端に店を広げる者など、誰も彼もが大声を上げ、空いた手を大袈裟に動かしていた。
稼げる時に稼がなければ、と港町の誰しもが大いに働いている。
だが、脇目も振らず己の事しか念頭にないようでいて、常に周囲に目配りをするのも港町の者達の、海の者達の特徴だ。
レオ丸達には決して目を合わせようとせず、そ知らぬ顔で居るかと思えば、進路を妨害せぬよう絶妙な動きで立ち振る舞う。
板子一枚下は地獄と呼ばれる世界で生きる彼らは、レオ丸達がまるで動く暗礁だとでも思っているかのようだった。
下手に接触して、座礁で済めば御の字だが、運が悪ければ藻屑となってしまう。
全てがゲームだった頃と違い、今の現実における<冒険者>の存在とは、多くの<大地人>に取っては“自然の猛威”に近しいモノなのだ。
あるいは、棒で突けば出て来る薮の中の蛇、のような存在か。
路上を行き交う<大地人>達は、適度に絶妙な距離を取り道を空ける。
其の御蔭で、<冒険者>達は一切邪魔立てされる事なく、目的の場所へとスムーズに到達出来たのだった。
接岸する船に乗降する客達が利用する、係留施設のずっと向こう。
貨物を仮置きする野積場よりも更に奥まった、埠頭の最も外れた場所へと。
「此れが、手段ですか?」
テイルザーンが仰ぎ見るのは、高いメインと低いミズンの二本のマストを有する全長約三十メートルの、一隻の帆船であった。
ミスハが高々と手を挙げ合図を送ると、帆船の舷から三本の縄梯子が投げ下ろされる。
「其れでは紳士淑女の皆様方、何卒恙なく御乗船あれ。
Hurry up! Hurry up! Move it! Move it!」
身軽に跳躍したミスハは、縄梯子も使わずに船上の人となった。
「ほなまぁ、お先にどうぞ」
レオ丸は、テイルザーン達に縄梯子の優先使用権を譲ると、己の影に潜ませた“家族”達を再び実体化させようとする。
しかし。
「主殿。此処はわっちの嫌いな、流れ揺蕩う水際でありんすから、大人しく御家で留守番しているでありんすよ」
そう言い残すと、アマミYは家長の足元に黒々と蟠る影の奥、闇の深淵へと身を潜めてしまった。
レオ丸の呼び出しに応じたのは、仲間の勝手な振る舞いに申し訳なさそうな表情をしたアヤカOのみ。
<召喚術師>はヤレヤレと首を振りながら、顕現したスフィンクスの背へ徐に跨り、フワリと舞い上がり甲板へと降り立った。
其処には既に、乗り込み終えていた脱出組を始めとする乗船者全員が、三つの列を作り座している。
右列は、テイルザーンを先頭にした十二名の<冒険者>達。
中央は、元<トリアノン・シュヴァリエ>のギルドメンバー達、九名。
左列は、<大地人>の幼子を含めた少年少女達、八名。
三列の後方には、ロシア・サーバから来た者一名と、中国サーバから来た者二名が所在なげに座っていた。
アヤカOから下馬したレオ丸は、側に立つミスハへと顔を傾ける。
「知らぬ者ばかりの呉越同舟やし先ずは自己紹介を!って言いたい処やが、時間が惜しいさかいに後回しや。
ミスハさん、出航準備はどないだ?」
「食料などは不足なく、いつでも出航出来ます」
「そいつぁブラボー、誠にオッケーなり!
さて、皆さん。
ワシらは此れから煌く波涛を越えて、東の彼方のJIPANG……やのうてアキバへと行くけれども、残念ながら此の旅は格安チケットのセルフ・トラベルや。
つまり。
モノはあれどもマン・パワーは、全てワシらでやらなアカン。
ホンマやったら、此の船を操船して来た<大地人>の船乗り達にアキバまで送って欲しい処やけれど、何かと後々が難儀なんで全員既に下船してもろうとる。
って事は。
十五人の少年達になるかバウンティになるか、はたまた“彷徨えるオランダ人”になるかは、操船ド素人のワシら次第って事や。
でもまぁ……安心しなはれ。
ワシらの前途は、マリー・セレストや畝傍よりは明るいよってに♪
したらば……え~~~っと其処の自分、DRAGOON-ww2君!」
テイルザーンの列の最後尾に座していた冒険者が、背筋を伸ばし勢い良く立ち上がった。
「Ay ay sir!」
「確か自分は、サブ職が<提督>やったよなぁ?」
「Sir yes sir!」
「ほなまぁ、操船に関するアレコレは自分に任せるとしよう」
「Ay ay “伝説の大会合大会頭”!」
「……何で其の名を……?」
「小官も、<野獣の結社>の一員なんで。
では早速に。……出航準備開始、“総員配置につけ”!」
「「「「「Ay ay Captain!」」」」」
“総員配置”という魔法の言葉をDRAGOON-ww2が口にした瞬間、甲板上に居る冒険者達の内の過半数が立ち上がる。
威勢良く振り上げられた利き手の拳と、打ち鳴らされる踵。
まるで一端の船乗りっぽいノリに、テイルザーンやミスハ達は呆気に取られた表情を見せた。
改めて、周知の事実を記すが。
<エルダー・テイル>には言うまでもなく、種々雑多なサブ職が存在する。
二つに大別すれば、メジャーとマイナー。
三つに分類すれば、生産系とロール系と称号系である。
例えば、<料理人>は生産系メジャー、<剣聖>は称号系メジャーである。
レオ丸の<学者>は、元はロール系メジャーであったが、<魔法学者>なるサブ職が誕生した結果、マイナーへと転落してしまった経緯があった。
尤も、<学者>は“魔法”も学問の一つとして扱う事が出来たが、<魔法学者>は“魔法”しか学問として扱えぬ職と分類されている。
所謂“百科事典”と“専門書”の違いだ。
さて、<提督>はと言えば?
<貴族><軍師><将軍><領主>と並ぶ、肩書きのみは立派だが実益性とは縁遠い、ロール系マイナーの代表格とも言うべきサブ職であった。
少なくとも、ゲーム時代には特殊なイベントでもない限りは、どれもこれも絵に描いた餅ほどにしか役に立たないモノである。
誰が呼んだか名づけたか、通称“弱損五職”。
其の五種類のサブ職に共通する効能は、多人数に対して指揮権上位者の立場から指示が出せる、といったモノであった。
元の現実のゲーム時代には、ほとんど意味をなさず裏づけもあやふやであったが、ゲームではなくなった今の現実では、徐々に意味も裏づけも存在感を示し出したのである。
其の顕著な例が、<将軍>のサブ職を持つ、ナカルナードだった。
<Plant hwyaden>に於いて上席幹部であるのは、何も元大規模ギルドのマスターだったからではない。
<将軍>は、大地人達に対しては実に立派な看板となり、冒険者達に対しては上位命令者としての立場を保証するモノとなったのだ。
<提督>もまた、然りである。
其の能力とは、同じ艦船に乗り込む冒険者達に対して指揮権を発動する事が出来る、といったモノだ。
但し、発動された指揮権に従うのは、<提督>のレベルよりも冒険者レベルが下位の者だけであった。
ほぼネタであるロール系サブ職のレベルを上げる努力をするような暇人は、流石に多くは居ない。
だがDRAGOON-ww2は、数少ない例外であった。
メインの<召喚術師>と同じくサブ職<提督>も、まさかのLv88。
レオ丸が苦笑いしながら<彩雲の煙管>を吹かす甲板上に於いて、DRAGOON-ww2<提督>の命令に従わなくてよい冒険者は、Lv90に到達している者のみ。
即ち、テイルザーン、虎千代THEミュラー、ミスハ、知世、マリユスの五名だけだ。
彼ら五人とレオ丸を除いた冒険者達に、DRAGOON-ww2は朗々と謳い上げるような調子で命令を下す。
「レベル70以下の者は、大地人の少年少女達と共に船内の総点検に当たるべし
<TABLE TALKERS>の面々は貨物室を担当し、荷物の固定作業を。
他の者は居住区画を今一度点検し、乗員の部屋割りを行い給え。
レベル80以上の者は、次の分担にて甲板上の実務に邁進せしめよ。
女性陣は、埠頭と当船とを繋留する索を回収し、適切に集積するべし。
男性陣は、マストに登り帆の点検をした後、全周囲警戒の任を果すべし。
以上、総員かかれ!」
「「「「「Ay ay Captain!」」」」」
DRAGOON-ww2は、甲板上と船内の各所に散って行く者達を満足気に眺めた後、レオ丸の方を向き申し訳なさそうな表情を見せた。
「あのー……、実際の出航準備って此れで良かったんですかね?」
「え!? ……ああ、エエんと違うか……なぁ?」
予想外の問いを投げかけられたレオ丸は、戸惑いながら他の五人を見遣る。
だが、振られたテイルザーン達も明確な答えは持ち合わせていない。
例えレベルは高くとも、実際には誰しもがズブの素人ばかり。
DRAGOON-ww2は、冒険者としては<提督>の職を所持していても、プレイヤーとしては船舶免許など所持してはいないし、其れはレオ丸達とて同様であったのだ。
「其れ……と、……どーすれば出航出来るんでしょうか?」
先ほどまでの凛々しさは何処へやら、途方に暮れるDRAGOON-ww2。
「大丈夫やって、……ワシらは<召喚術師>やんか?」
三流詐欺師が浮かべるような満面の微笑みをした<召喚術師>が、貸し剥がしにあった零細企業経営者のようにしょぼくれる<召喚術師>の、落ちた肩を力強く叩いた。
「御者台に座れば、勝手に馬が馬車を引っ張ってくれるモンやろ?
馬車を引くのは馬であって、御者や乗客やあらへんで♪」
「……ああ!」
レオ丸の言に蒙を啓かれたのか誑かされたのか、宙にある見えないボタンを連打しつつ合点合点と呟き、顔を上げるDRAGOON-ww2。
「まぁ、自分がしんどくなったら、ワシに襷を渡してくれりゃエエし♪」
「Ay ay Champ!」
先ほどまでとは別人のように晴れやかな声で返事をすると、DRAGOON-ww2は弾むような足取りで進み、船の舳先で立ち止まる。
♪ 海行かば 水漬く屍 山行かば 草生す屍 ♪
DRAGOON-ww2は『万葉集』の巻十八、「賀陸奥国出金詔書歌」に記された詞を詠じながら、ベルトから指揮棒に似た群青色の魔法杖を外し、右手に握り振り上げた。
「“守るも攻むるも白骨の むべなる巨躯ぞ頼みなる”」
何処かで聞いたような文言を詠唱し終えた途端、DRAGOON-ww2が頭上へと振り翳す魔法杖の先端が眩く輝き、銀色の電光を沖合へと放射する。
「迅鯨、宜候!」
DRAGOON-ww2の呼びかけに、銀色の電光に射抜かれた海面直下で何かが呼応し、大量の海水を持ち上げ掻き分けた。
現れ出でたのは、元の現実でも滅多と見られぬ、巨大な海洋生物である。
より正確に言えば。
巨大な海洋生物のような、何か他のモノであった。
全長は帆船とほぼ同じく約二十メートル、流線型よりも丸みが強調された 所謂、涙滴型のユーモラスなフォルム。
されど、幾つもの青い鬼火を周囲に漂わせているために、可愛げは欠片も見当たらない異形な巨体のユニーク・モンスター。
<白き化鯨>は、家一軒くらいなら簡単に呑み込めるサイズの大口を開け、霧笛のような鳴き声を上げながら近づいて来た。
「……何や、漂白剤で洗い過ぎた木星のオバケ……みたいやな」
突如現れた怪物に、大地人が乗り込む何艘もの艀が右往左往し、操船を誤って衝突したり、転覆したりしている。
<冒険者>に取っては“ユニーク”が加味される存在でも、<大地人>に取ってはタダの“モンスター”だ。
騒乱は陸上でも発生し、太いはずの肝を潰した海の男達が大声を挙げて荷物を放り出し、慌て過ぎて他者とぶつかったり、すっ転んだりしていた。
まるで往年のコメディ映画の如く、大混乱に陥る小さな港町。
「まぁ、テンヤワンヤの状態で舞台から掃けるんは、いつもの事やしなぁ……」
そんな常ならぬ風景から目を逸らしたレオ丸は、五色の煙を吹き上げながら暢気な感想を漏らすと、ミスハ達は沈黙と伏し目で以て賛同の意を表する。
其れから程なくして。
舳先から放たれた、幾本もの繋留索を咥え込んだ<白き化鯨>が勇躍、沖へと泳ぎ出す。
帆を張らず、ユニーク・モンスターに牽引されるが侭の帆船は、こうして何事もなく出航した。
騒擾をもたらされた神聖皇国ウェストランデの領内に属する港町と、蹴散らされ逃げ惑う幾多の船舶は、無事とは言い難かったが。
天空を降り続けた太陽が水平線の彼方へと没し、世界は夜に包まれる。
見た事があるようなないような、何とも微妙な配置で星が満天に瞬いていた。
右側の三分の一ほどが黒く塗り潰された月が、中天から煌々と照らしている。
其の月明かりの下、弧状列島ヤマトの海岸線を遥か左舷に望みながら、快調に航海を続ける一隻の帆船。
時刻で言えば凡そ二十時頃に、DRAGOON-ww2から船頭役を引き継いだレオ丸は、一頭の“家族”を召喚する。
現在、繋留索を両手に分けて持ち、悠々とした泳ぎで帆船を牽引するのは半人半魚の巨大モンスター、<海魔竜魚>だ。
<口伝>習得時に、召喚した状態の“家族”達、つまり契約従者達と“家長”たる<召喚術師>の知覚は、まるで<幻獣憑依>をしているが如くに同調していた。
従って、吹きつける海風に逆らいながら大声を張り上げる必要もなく、ミキMへはスムーズに指示が出来ている。
己と同じサイズの帆船を曳きながらも、ミキMは浅瀬や暗礁を容易に回避し久々の遊泳を満喫していた。
其の愉悦さえ、レオ丸にはダイレクトに伝わって来る。
不意に、脳内で鈴を転がすような音がした。
マサミNを撫でていない方の手で宙を軽く叩き、念話を繋げるレオ丸。
「御機嫌ですね、法師」
「ふぁいん・さんきゅー、ミスハさん。はう・あー・ゆー?」
「見渡す限り漁火も見えず胡乱な存在も認められず、ただただ波が月に照らされ煌いているだけです。
聞こえて来るのも波音と風の音ばかりですから……法師の歌声がクリアに届きました、マストの上までね」
「其れは其れは御耳汚しでやんしたな、はっはっはー。
……『Yo ho♪』の方が良かったかい?」
「『月月火水木金金』でなければ何でも結構ですよ、って其れよりも。
改めて、法師と御話しをしたいと望んでる者が居るんですが」
「遅い昼飯の時に自己紹介大会したし、其の後で大地人の子ら共、自分の下の子ら共、色々と御話しをしたやん?
あー……そー言えば。
竹やら鉄やらのカーテンの向こう側の人らとは、ゆっくりと御話ししてへんかったなぁ」
「其の、中国とロシアの冒険者から、会談の申し込みがあるのですが、……操船の御邪魔ですか?」
「んにゃ、大丈夫でやんすよ」
「私も同席致しますので」
「へいへい、そいつぁ心丈夫やけども。
……処で其れは“懇談”やなくて、“密談”って認識でOKなん?」
「ええ、恐らくは」
「ほな、テイルザーン君と……頭文字ファンブル君にも参加してもらおうか?」
「え?」
「単なる茶飲み話なんやったら、ワシらだけでもエエけどな。
ヒソヒソ話をするんやったら、ワシら以外にも居てもらわんと」
「“密なるを以って良しとすべし”、じゃないんですか?」
「せやねぇ……コレが完全なる“謀”で、此処がナゴヤか何処かの街中やったら、そーするけどな。
閉ざされた……とは言え高々臼砲艦クラスの、言わば猫の額程度でしかない甲板上では、ある程度はオープンにせんと。
……なぁ、其処に潜んどる自分らかて、そう思うやろ?」
レオ丸が胡坐を掻いたまま、首だけを背後へと傾け五色の煙を吹き上げる。
すると、暗がりで息を飲む音が、四つばかし立てられた。
「あ~~~っと、……済みません」
月が灯す明るさの中へ、のそりと現れたのはテイルザーン。
其の背後に、頭文字ファンブルとホウトウシゲン、そして志摩楼藤村が肩を並べて立っている。
四人共に、何処かバツの悪い表情をしていた。
「自分ら、そんな処で突っ立ってんと此方においでや、……更に二人も追加が居るとは思わへんかったけど、まぁエエか。
……って訳で、ミスハさん。
リルルさんやレンインさんに、こっちの人数が増えたけど、其れでもエエんやったらお越しやす、ってお伝えあれ」
「了解しました」
「ゴメンやけど、今からちょいと真面目な話をするさかいに、自分らは御家へ帰っておくれよし。
また、召喚した時には宜しく頼むでねぇ」
「承りました、いつ何時でも御意のままに」
「気が向いたら、お相手したげるっチャ」
月光が作るレオ丸の影の中へと、幽きほどの音を立てず体を没する<獅子女>を追い、<金瞳黒猫>も身を軽々と翻し飛び込んだ。
「HPやMP的には兎も角、精神的には大分疲れたろうに。
自分らは充分に寝たんか?」
「そりゃあ、勿論。気持ちよく、ひと眠りさせて戴きましたわ」
「そいつぁ、重畳。……ほいで、雁首揃えてどないしたん?」
レオ丸の右手側にテイルザーンと志摩楼藤村が座り、左手側に頭文字ファンブルとホウトウシゲンが腰を下ろす。
「色々とレクチャーしてもらおうか、って思いまして」
「レクチャー?」
「ええ、まぁ」
レオ丸が、テイルザーンの言を鸚鵡返しすると、返事をしたのは頭文字ファンブルだった。
「ふぅ~~~ん」
繁々と、零細ギルド<TABLE TALKERS>のギルマスの顔を眺める、レオ丸。
黒いツバ広の帽子、ピッタリとしたワイシャツにリボンタイ、長めのコートをマントのように羽織り、ピカピカに磨き上げられたブーツという装い。
顔の上半分をマスクで覆えば『マスク・オブ・ゾロ』になり、腰に差した二本のレイピアを拳銃に変えれば『OK牧場の決斗』の主人公になりそうな、伊達男スタイルだ。
「ダグラス・フェアバンクスとバート・ランカスターの分岐点、ってか?」
「はい?」
「いや、こっちの話や。さて、ほな、そっちの話をしよっか?
ホンで、どーいった事を聞きたいんかな?
あー、それと。
ホウトウシゲン君と志摩楼藤村修士、自分ら二人とはゆっくりと話をしたいなぁって思ってたんで、丁度良かったわ。
って事は……テイルザーン君は、後見役的なオブザーバーかね?」
「まぁ、そんな感じです。……彼らとは、以前から面識があったんですか?」
「いえ、面識はありませぬ。此方が一方的に、認知していただけですな」
銀縁眼鏡を指一本でクイッと持ち上げた志摩楼藤村が、ひそと呟く。
「そーですナリー。我らは会員でしかないナリー」
「会員、って何の?」
テイルザーンの疑問に、レオ丸は軽く笑い声を立てた。
「二十年も<エルダー・テイル>をしてたらな、ソロ・プレイヤーでもボッチ・プレイヤーにはならず、実に色々な繋がりが出来てしまうもんでな。
こー見えてもワシは、幾つかの団体で偉そうにしとんねん♪
つっても、ぜーんぶオフ会主体のサークル活動やけどね。
……志摩楼藤村修士は、サブ職が<学者>のみで構成されとる<大英知図書館学士院>のメンバーでな、若手のホープやねんな。
ホンで、ホウトウシゲン君は、<せ学会>の一員やねん」
テイルザーンの隣で正座する和装のハーフアルヴと、頭文字ファンブルの横で体育座りをしているドワーフが、ペコリと頭を下げる。
「そーいや、ホウトウシゲン君」
「はいですナリー」
「シゲン君とは連絡を取りあっているん?」
「してますナリー」
「誰なんだ、シゲンって?」
「僕と似て非なる名前ながら、<せ学会>東北支部での出世頭ですナリー。
ギルマスも、間接的に御世話になっておられますナリー」
「え?」
「<大災害>直後、<TABLE TALKERS>の身の振り方を話し合った時に、アキバの状況を教えてくれた情報源ですナリー」
「ああ!」
「僕は<せ学会>東京支部所属ナリーですが、同じ“鳳雛”を愛する同好の士として仲良くしているですナリー」
「法師だけじゃなく、ホウトウシゲンにも独自の人脈があるって事か」
「そうですナリー」
「“縁に連るれば唐の物”ってな。……其れとも、『縁の金糸で結ばれて』か?」
「其れでは、O・ヘンリー御大の如しですな、レオ丸学士」
「的確なツッコミを有難う、志摩楼藤村修士。
せやけど“縁”なんざ結ぶ気になりゃ、いつでも何処でも結べるモンやしな。
“合縁奇縁”のタネは、其の辺にゴロゴロしとるんやし。
但し。
己が縁を結びとうて堪らん相手と“縁”を結ぶには、並大抵の努力をしたとて叶う確率は滅茶苦茶低いモンやけどね?
しかも“縁”ってヤツは、劣化したビニール紐よりも脆いモンやし」
はてさて、と言いながらレオ丸は<淨玻璃眼鏡>越しに、頭文字ファンブルと視線を合わせた。
「自分がワシに尋ねたい事を、優先順位を無視して挙げ連ねれば。
ミスハさんの事、<Plant hwyaden>の事、ミスハさんの部下と彼女らが護衛しとる風に見える大地人の青少年達の事、かなぁ?」
「後はレオ丸法師、……貴方のスタンスですね」
「ワシのスタンスは……、“遊行三昧”の一言に尽きるわ」
「では、噂に聞いた“ウメシン・ダンジョン”の一件や、今回の試合の事も全て法師の仰る“ゆぎょうざんまい”とやらの一環なんですか?」
「せやねぇ。其れ以上でも、其れ以下でもないなぁ」
「誰かの……例えば<Plant hwyaden>に利するための行いではない、と?」
「ワシは常に、……ワシとワシの友達全員の味方やわさ。
言い換えればワシの敵は、ワシとワシの友達に仇なさんとするモノや、な。
“万人の福利を願う事が、自らの福利に繋がる。
自分や自分の所属する小社会のみの福利を願う人は利己的であって、そうする事は、決して其の人のためにはならない”
……偉大なる魂のガンディー師の、言葉やねんけどね。
ワシは“万人の福利”のために何かをするほどには、人間が出来てへんし。
ワシが独りで何か出来る事なんざ精々、“自分や自分の所属する小社会のみの福利を願う”てワチャワチャするだけやわさ。
ほな、何でワシは“自分や自分の所属する小社会のみの福利を願う”て、アタフタジタバタしとるんかって言うたら……」
レオ丸は、全員の視線を受け止めながら、月を見上げる。
「“利己主義者”……やからかもしれんね。
こーんな、よく知ってるのにさっぱり理解出来ひん世界で生きるには、せめて笑顔を絶やさぬようにするしかないやんか?
ワシは眉間の皺がどんだけ深くなろうとも、笑い皺を刻んで生きていたい。
其のためには、皆が笑顔で居られるようにしたい。
ワシにとって最も楽しい光景は、友達が笑いさんざめいてる光景やからな」
帆船の舳先から離れた方から、幾つかの靴音が響いて来た。
「ミスハさんも、テイルザーン君も、志摩楼藤村修士も、ホウトウシゲン君も。
……袖摺り合うた、頭文字ファンブル君、自分も。
ナゴヤで一緒に試合を行った皆も、今此の船に同乗しとるお嬢さん方や大地人の子達も含めて、全てが須らく他生の縁で結ばれとる。
言い換えれば、皆が皆、友達や。
友達のために労苦を惜しまず、利益は共有財産とする。
そんなこんなが叶えられるんならば、ワシはどんだけ狡い事でもあくどい事でもやらかすで。
悪名なんざ今更ナンボもろうても屁でもないし、ワシの望みを叶えるために何人死のうが知ったこっちゃないし。
ま、其れがワシの……スタンスかね?」
黙って聞いていた者達の心に、氷の刃を突きつけるような冷えた笑みを浮かべながら、美味そうに<彩雲の煙管>を吸いつけるレオ丸。
「しかし其れにしても……頭文字ファンブル君は、仲間を守るんに悪戦苦闘しっ放しなんやろう?
今日の事も明日からの事も、先ずは情報を集めん事には身動き取れんしな。
船長さんがが海路の危険をなーんも知らんでは、速攻座礁、ホンで転覆沈没コースやもんね。
ギルマスってのは、ホンマに大変な役割やわなぁ。
つまる処……彼女もな、今は<Plant hwyaden>のギルメンやけど、ギルマスとしての役割を忘れた訳やないって事やねん。
なぁ、ミスハさん?」
「何でしょう?」
ほっそりとした首を傾げたミスハは、レンインとズァンロンとリルルの、海外サーバからの冒険者達をレオ丸の対面側へと案内する。
其の傍らにマリユスと知世を控えさせるや、首を傾けたままでレオ丸の背後へと腰を下ろした。
「先ほどから、私の名を連呼なされていたようですが。
私を出汁にして、一体何の御話をなされていたんですか?」
「ギルマスは辛いよ! って話やわ。
後はまぁ、友達が笑ってくれるならワシは悪魔にでもなる♪ って話かな。
さてさて、ほしたら。
“渡航者”が知りたいヤマトの情勢と<冒険者>達の内情も、<Plant hwyaden>の思惑も、<大地人>の青少年達の目的も、本人や関係者達に直接訊ねるんが、正味一番手っ取り早いわな?
って訳で、深夜のぶっちゃけ大座談会、の始まり始まり♪」
レオ丸の、実に空々しい言い草が海風に掻き回され、霧散し消えて行く。
そして参加者達の、何ともわざとらしい仕草で立てられた小さな拍手は、満天の星空の煌きにより静かに昇華されたのだった。
急いで慌てての投稿故に、今晩遅くにも加筆か修正をさせて戴くやも?
ホウスウ様。
勝手に設定を書き加えてしまいました、御免なさい。御作のお邪魔になるようでしたらば何卒、御一報を。急ぎ、修正致します。
其れと、先の活動報告に御言葉を連ねて下さいました皆様方。
誠に忝く、有難く存じます! さんきゅーでーす♪
そして、妄想屋様に改めて感謝を。様々な創意を凝らして下さいましたナゴヤ圏の設定、有り難く流用させて戴きました。
誠に忝く、あっつく御礼申し上げまする!