表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/138

第零歩・大災害+5Days 其の肆

加筆訂正致しました(2014.08.18)。

更に加筆修正致しました(2014.11.17)。

 ヒラノキレ庄からの帰途、レオ丸達は三ヶ所の社を巡った。


 石造りの巨大な照明灯台に歓声を上げ、急勾配の半円形の橋を渡り、巨木に囲まれた剛健な社殿に到る。

 大地人が信奉する神々の中で、海路の安全を守護する<トライスター海神の社>は、スミヨシ庄の外れに鎮座していた。


 アベノ庄からミナミの街へと戻り、<南の朱大門>通って左を見れば、<昇天閣の塔>が聳えている。

 その最上階に祭られているのが、<ウェンの大地>から招来した童形神、金運招来の<ビルゲイン>であった。


 <昇天閣の塔>からミナミの街の暗部と一般に認識されている、ジャンリン地区に踏み入った一行。

 崩れた町並みの其処彼処から注がれる、興味と悪意と失望と羨望が混じった視線を振り払い足早に通過すると、猥雑な大地人の露店街が広がっている。

 その中央付近で、地域住民の手により大事に護られている、いつも煌びやかで賑やかな<ネオナウの社>。

 ご祭神は、ラッキー・セブン・ゴッズの一柱、<ジェイビス神>。


 その何れにも、神の存在は感じられず、単なる装飾品の如き神像が安置されているだけであった。


「これは、どういう事やろう? もう此の世界に神さんは居らへんのか?

 それとも、何かイベントでも発生せぇへんと、プログラムが起動しないって事なんかな?」


 レオ丸の疑問に、同行者は誰一人として答えを持ち合わせていなかった。



 フレンドリストの登録をし合い、再び会合を持つ事を約束して、レオ丸一行はサターン広場で解散した。

 友好関係を結んだマイコニドに別れを告げたアラクネーは、名残惜しげに幾度も振り返りながら、レオ丸に従いトボトボと八本足を蠢かす。


「器用な歩き方するなぁ、ミチコKさん。昼前やけど一旦、家に帰ろか」


 ねぐらに戻ると、レオ丸はトイレに向かった。

 空腹を感じる時、眠気を覚えた時、そしてトイレを催した時、その度毎にレオ丸は痛感する。

 ああ、ゲームや無くて現実なんやな、と。


「此れで、便所の神さんが居ったら大嗤いやけどなぁあああああああッ!!」


 トイレの扉を開くなり、悲鳴を上げてヘタリ込む、レオ丸。

 薄っすらと照明されたトイレの中に、ぼんやりと浮かび上がる異形の姿。

 黒く艶のない、長い乱れ髪の間から覗く、睫毛の無い暗い瞳。

 薄汚れた灰色のワンピースをぞろっと着て佇む、女性のようなシルエット。


「お帰りなさいませ、旦那様ぁ~~~~~」


 今日の留守番役、<家事幽霊(シルキー)>が青白い首筋を鋭角に傾け、便所タワシを片手に、一礼する。


「た、ただ、ただ今、タエKさん!!

 ……ゴメンやけど、後で今履いているパンツを洗っといてくれるかな?」

「いいともぉぉぉぉ…」


 か細い声を陰鬱に震わせ、タエKは便所タワシを振り上げた。



 パンツを履き替えたレオ丸は、ベッドに寝転びながらフレンドリストを開き、念話で情報収集と情報提供を開始した。

 伝えるべき事と伝えるべきでない事から、伝えたい事だけを選び、直に見聞きした事と伝聞を織り交ぜ、笑い話で糊塗する。

 相手からも又、似たような調子の話を聞かされた。

 ベッドの上にも下にも、話した事と聞いた事を走り書きしたメモが、次から次に散乱していく。

 頃合を見計らい、ナカルナードに念話を掛けたのは、夜の帳がミナミの街を覆ってからであった。

 いつも通り、自分の話したい事から捲くし立てるナカルナード。

 いつも通り、少し苦労しながら内容を整理しつつ相槌を打ち、話を促すレオ丸。


 <ハウリング>と<キングダム>が衝突し掛けた場所は、<新武衛郭(ネオステーション)>。

 双方がスカウトしようとしたのは、アキバ最大の戦闘系ギルド<D.D.D>に以前属していた、ジンガー兄妹だった。

 著名で有能な、高レベル無所属プレイヤーを加入させる事が出来れば、戦力の大幅強化に繋がる。

 しかも、彼らが加入したとなれば、その名前に惹かれて更なる加入者が現れるやもしれない。

 故に、双方が面子を掛けて張り合ったが、それは徒労となった。

 狙われた側からすれば、迷惑でしか無い今回の騒動。

 どちらにも加入する気が無いジンガー兄妹は、睨み合いがなされている間に、さっさと姿を消したのだ。

 こうして二大武闘派ギルドによる、正面衝突は未然に回避されたが、ナカルナードの気は晴れない。

 溜まった鬱屈を解消するべく、ナカルナードは<ハウリング>の一部隊を率いて、ケチの付いた<新武衛郭(ネオステーション)>を後にした。

 一暴れすべく向かった先は、サウザンドマイルズ。

 すると其処には既に、戦闘系ギルドの雄である<ハーティ・ロード>が<岩石巨兵(ストーンゴーレム)>の集団と戦闘をしていた。

 新手の強敵が登場したと勘違いしたストーンゴーレム達は、<ハウリング>の面々にも襲い掛かる。

 <ハーティ・ロード>のギルドマスター、アギラは獲物の横取りをするなと怒鳴り散らした。

 不可抗力だ、とナカルナードは怒鳴り返す。

 不毛な罵声の応酬は、ストーンゴーレムを殲滅した後も続いた。

 “喧嘩屋”を名乗るアギラと、“剛勇無双”の二つ名を持つナカルナード。

 不幸な偶然から始まった無益な口論は、無駄な諍いへと発展するかに思えたが、そうはならなかった。

 サウザンドマイルズの主たる<灼熱の巨兵(エクスプロージョン・ゴーレム)>、俗称<エキスポ・ゴーレム>が強襲して来たからだ。

 不意打ちを喰らい、慌てふためく両ギルドのメンバー達。

 ナカルナードもアギラも、態勢を立て直して撃退する事もままならず、<大神殿>送りを出さずに撤退するだけで、精一杯だった。


「今日は結局、試合中止と引き分けでな。ついてへん一日やったわ!」

「ああ、さよか……」


 二つ名を“剛勇無双”から“軽挙妄動”にを変えたろか、と思いながらもレオ丸は取り敢えず、慰めの言葉を二言三言。

 続けて第三者の立場から論評、そして怒涛のマシンガントークでナカルナードの浅慮と失態を攻め、最後に友人としてのアドバイスを積み重ねる。


「まぁ、済んだ事はしゃあないな」


 レオ丸は、その一言で一旦締めた。


「済んだ事はしゃあないけど、今日の事はちっとも解決してへんで。

 偶々、色んな事が今日に重なっただけで、何れ起こった事態やわな。

 しかも、互いに負けたと思ってへんねんから、明日以降も同じ事が起こる可能性が高いな。

 さて、其処で。

 お前に一つ、提案があるんやけどな」


 レオ丸は、コメカミを揉みながら、ナカルナードの長話に適当な相槌を打っている間に、ふと思いついた事があった。

 早速それを口にする、レオ丸。


「公の場で、力比べをしてみぃひんか?」

「力比べって、なんのや?」

「戦闘ば……戦闘自慢の自分ら各ギルドが、ギルマスを含めたパーティーを一つ作ってな」

「今、戦闘バカって言おうとしたやろ、おっさん! ……ほんで?」

「おっさん言うな、戦闘バカ! いらんトコだけ察しが良くなりやがって。

 ほんでやな、その複数のパーティー同士でな、巴戦をするんや」

「バトルロイヤルか? ナガイ庄の闘技場廃墟でやるんか? それともナゴヤまで出張るんか?」

「いんや、このミナミの街ん中で、するんや」

「どこですんねん! 武器持ってドツキ合いしたら、飛んで来た<衛士>にぶった斬られるやろが!」

「<衛士>が飛んでけぇへん方法でや。……しかも、実に<冒険者>らしい最適な遣り方で、な」

「よう判らんなぁ」

「まぁ、ワシに任せとき。悪いようにはせぇへんから。

 当然、エエようにもせぇへんけどな」

「なんじゃ、そりゃ!?」

「ほな、その支度で忙しぃなったさかいに、一旦念話を切るぞ。

 また明日の午前中にでも連絡するでな、明日は昼まで他出せんと、ギルドホールで大人しぃしとけよ!」

「判った。おっさんが言うんなら、大人しぃしといたるわ!」

「聞き分けエエのう。……それとな、発音はおっさんやのうて」

「ほな、任せんで!」


 一方的に切られた念話に、舌打ちするレオ丸。


「……聞き分けエエんは有り難いが、ちょっとは頭を使うて、ワシの言葉を疑えっちゅうねん」


 苦りきった顔で、微笑むレオ丸。


「そう思わへんか、タエKさん?」


 いつの間にか装いを改め、散らかされたメモ類を綺麗に整理している、タエK。


「さいですね、旦那様」


 姉さん被りで頭髪をキチンと納め、晒した瓜実顔に薄く紅を差し、格子柄の和服に襷掛けで割烹着姿のシルキーは、分厚い瓶底眼鏡を押し上げながら頷いた。


「……よう似合うとるなぁ。せやけど、おかしいなぁ。

 この世界で<サブ職:家政婦>って“メイドさん”と違うんかいな?」

「<家政婦>は、“家政婦”ではございませんか、旦那様?」

「そらそうやけど」

「わたくし、そんじょ其処らの<家事妖精(キキーモラ)>などとは違い、“家政婦”としての誇りがございますので」

「ああ、そうなんや……」

「いつでも何処でも、力の及ぶ限り、旦那様の全ての所業を見させて戴きます」

「あんたは、市原か? それとも松嶋か?」

「金語楼、でございます」

「古すぎて、さっぱり判らんわ!」


 ばっさりと会話を切り捨てたレオ丸に、共感を得られず舌打ちする、タエK。


「まぁエエわ。それよりも、と。

 ……もしもし、邪Q君。今日は付き合うてくれて、おおきにな!

 ほんで早速やねんけど、今から時間を作ってもらえへんかな?

 直に会って相談したい事が出来たんやわ、それも早急に検討して欲しい事が。

 内容? うん、内容はやな、暴れ馬に与える飼葉と馬場についてや。

 詳しい事は会ってから、話すわ。……OKか? 助かるわ!

 ほな1時間後に、アッパーノースの<円柱の斜塔>に来てくれるか?

 おおきに、おおきに。ほな、後で宜しく!」

 

 続けてカズ彦とミスハにも誘いの念話を送り、快諾を得る。


「後は、誰がエエかな? おお、そや!」


 指をパチンと打ち鳴らす、レオ丸。


「もしもし、何度もゴメンな。さっきは与太話に付き合うてくれて有難さん。

 ちょいと相談事が出来たんやけど、話だけでも聞いてくれへんかな?

 それも直に顔突合せながら。……エエか? すまん、おおきに、助かるわ!

 ほな、宜しくな、ゼルデュス学士!」

 当初の構想とは違う展開に四苦八苦の今日この頃。皆様、三が日は如何お過ごしでしたか? 私はいきなりお勤めがございました。貧乏暇無し。

 沙伊さん。御寛恕を賜り誠に恐悦至極。私もジンガー兄妹とアギラを使用させて戴きました。前話からドメルも。

 さて、次話は来週中にもアップ出来ればと、考え中です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ