第参歩・大災害+47Days 其の陸
後、一回。長くても二回で、コラボ編も終了でごいす。
今回は、名前だけはオールスターにて。皆様、お名前のみ拝借させて戴きました。感謝感謝です!
「こちら、季節外れですが牡丹鍋。きちんとした味噌はまだできないので謹製醤油Ver.2.1で味付けしました。好き好きで卵を絡めてください。
こちらは単純な串焼きですが、私の味付けとタエKさんの味付け二種類があります。食べ比べてご堪能ください。
そして、現実ではもはや禁止となった食材、生レバ刺しでございます。採算度外視で買い付けたゴマを絞ったゴマ油と絡めてお召し上がりください。
薬味としては、これまた貴重なニンニク、スワ手前で仕入れたワサビの千切りがあります。タレも用意しまして、こちらは醤油と砂糖、日本酒を煮切りにしたもので、やや甘めにしてあります。
あ、アマミYさんはそのままでどうぞ。できればレオ丸殿は多めに召し上がった方がいいですよ、血が足りないみたいですから。
後は適当な野草で作ったサラダです。ドレッシングは自作の和風です。
さ、召し上がれ」
「「「いただきます」」」
ユストゥス氏が口上を一齣、語り終えると同時に、ワシらは遅い晩餐会を賑やかに和やかに、所々では荒々しく、始めた。
山ん中での、野宿する間の晩飯やとは思えんくらい、実に豪勢なモンやった。
串焼きを奪い合い、どつき合いをしている、ニャンコの介君とドワーフのフ君。
エルヴィン君は、健啖ぶりを披露し合っとる。
……ユストゥス氏は、イアハート嬢と葉月嬢とイチャイチャしながら、ペチャクチャとモグモグしとる。
生肝の新しい味覚の虜になっていたアマミYさんが、不穏な雰囲気を醸したり、ユストゥス氏に味覚の確かさを褒められたタエKさんが、胡乱な行動をしたりしたけど、まぁ概ね、何事もなく会食は終了した。
腹はいつも以上に“満足”の二文字で膨れ上がり、頬は“火傷”の二文字で腫れたりしとるけど、まぁ概ね、何事もなく……詳しくはウェブで! ……って言いたい処やけど、まぁテキトーに想像しといてや。
せやけど、やっぱ御飯は大人数でワイワイ言いながら喰うんが、一番美味しいなぁ。
ハチマンでの最後の夜の大宴会は、文句なしに美味しかった!
今の晩御飯も中々のモンやった。
けど。
今夜のメインディッシュは、此れからや。
俎上に載せられてる御魚さんは、ワシや。
単に捌かれるだけで済むんか、それとも丁寧に骨抜き処理までされるんかは知らんけど。
せやけど、ワシ一人で乗るのは寂しいし、他にも誰か一緒に載ってもらおうか?
ほんで、どっちが先に江海に移れるか、勝負しよやおまへんか?
食後の、まったりとした雰囲気が漂い出した、焚き火回り。
それぞれがダラダラとした感じで座り、タエKさんが淹れてくれた茶を、静かにお茶を飲んでる。
ユストゥス氏の両サイドは、エルフとハーフアルヴの御内儀と御妾さんが固めとる。不自然な空気はあらへんから、コレが常態なんやろな、多分。
ワシの両隣は勿論、“家族”や。コレも、常の如しや。
他の三人は、その辺に適当に居る。
さて、と。
ほな早速、此方から口火を切らさせてもらおか?
台所で一番偉いんは、包丁を持ってる奴とは限らへんで。
鯛かて海老かて跳ね倒すし、鰻かて目打ちされるまでは大人しいしてへんしな?
先ずは、ユストゥス氏。
トップバッターとして、自分から俎板に上がってもらおか。
ワシは、妙にふやけた顔をしとるユストゥスに、茶を啜りながら問いかけた。
「そや、自分らアキバから来たんやろ? ちょいとどうなってるか、教えてくれへん?」
「さいきん、えんたくかいぎというとうちきこうができました。
はらぐろめがねがつくりました。
ついでにあじのするりょうりのつくりかたもひろめました。
おわり」
ユストゥス氏は、夏休みの宿題の絵日記を発表する小学生みたいな、何とも珍妙な抑揚で話しよった。
聞きようによっては、昔ながらの宇宙人みたいな喋り方やな?
実に初歩的で幼稚な、無感情トークってヤツをニヤニヤしながら、ユストゥス氏が態とらしく言うたらば、や。
「ああんもう潤くん、統治機構だなんて反逆心あふれる言葉を使えるなんて素敵!!」
感情溢れ捲くりのベタ甘な台詞を吐いて、葉月嬢が横から、ユストゥス氏の頭を自らの胸に抱き込みよった。
「葉月先生、少し控えめに……柔らかい通り越して肋骨痛い」
「……このくらい?」
「……うん、やわっこい」
人目を憚らずにイチャイチャしだす、オオカミ男とイカ小悪魔。
君らは、宮口二郎大先生と天本英世御大か!?
どえらいラブシーンを見せつけやがって!
…………。
イカん! ミスハさんの胸に、顔を埋めさせてもろうた事を、思い出した。
今頃になって恥かしぃなって来たでゲソ!
うわぁぁぁッ!!
思い出させんな、見せつけんな、アホンダラァ!!
「おかしいやん! そんな言葉知っとって褒められるんは! それやったらワシの方がもっと難しい言葉知っ……すみませんごめんなさい調子乗りましたその目はやめて!
……それになんやねんその状況! 周りもなんか言うたれや!」
照れ隠しで怒鳴り声を上げたら、狐と猫とドワーフが一糸乱れぬ統一行動をしよる。
いやいやいやいや、と手を縦にして、顔を仰ぐよう横に振りよった。
君らは、どっかの児童劇団出身か? 何、仕付けられとんねん!
「ただのスキンシップなんです。気にしないでください。気にしたら、負けなんです」
「ケケケ、イアハートは見ての通り胸がっ!?」
妙に悟った顔で解説するドワーフのフ君の横で、妙に下衆い表情で軽口を叩いたエルヴィン君の顔面に、何処からか現れ出でたる大きめの石が、ミシリと減り込んだ。
うん、口は災いの元。
触らぬ乳サイズに祟りなし。
「……エルヴィンはいつも失礼なこと言うから黙らせたわ」
イアハート嬢の眼が、地獄から来たガラガラヘビみたいに周囲を睥睨しよった。
怯んだカメレオンの如く、誰もが寂として口を閉ざしとる。
何とだらしない、奴らや。
エルヴィン君の昔ながらの知己として、ワシは大きく口を開き……静かに深呼吸して口を噤み、自然な動きで視線を逸らした。
人間誰しも、我が身が一番可愛いもん!
「まったく、まだ慣れないねエルヴィン、何度目だよ?」
「一日おきじゃない? 私とユンさんがいちゃついてる時毎回だから……もしかしてエルヴィンさんてイアハートさんに惚れてるから気を引きたくてかも!!」
「あらあら~」
「……」
ワシの左右に腰を落ち着けている、アマミYさんとタエKさんが、何とも落ち着きのない様子を、あからさまにしだしよった。
……我が身が一番可愛いねんで、ワシ?
せやし、何もせぇへん。今直ぐにでも、ワタシは蟹になりたい。
「おいおい、イアハートは私の」
予定通りなのか、何となくの流れからなのか。
ユストゥス氏がヘイトもどきを、態と此方へと撒き散らしよった。
ヘイトもどきに煽られた、アマミYさんとタエKさんが嬌声じみた歓声を上げ、ワシの方を期待のこもった雰囲気で見よる。
何でワシが、ヘイトもどきのトップやねん?
ワシは珊瑚礁で何不自由なく過ごすスベスベマンジュウガニの境地に居てんねんから、妙なプレッシャーを与えんといて欲しいなぁ。
此れ以上、妙なちょっかいをかけるんやったら、蟹光線を喰らわせんぞ!
そんな風に、ワシが反撃の機会を窺っていたら。
ニャンコ眼小僧が、一切の空気を無視して、問いかけてきよった。
実に恐ろしきは、チョー天然なり。
「アキバの状況スか? そッスねぇ、先輩の言う通り、<円卓会議>と味のする料理のおかげで、落ち着いたって感じスね」
暢気に快活に話す、ニャンコの龍之介君。
ん?
何か今の言葉に、違和感を覚えるんやけど、気のせいかいな?
「落ち着いた? そらまたどういうことや? 毎日が日曜日もといお祭りやったんか?」
「違うスよ」
あっけらからんと、苦笑する龍之介君。
もしかして君、意外と剛の者なんか?
ユストゥス氏の瞳の温度が、どんどん下がって来てんで。
大丈夫か、MAJIDE?
「日常、と言ったらいいんスかね、普通のゲームのテンションに戻った、ってことス。今まではふさぎ込んでた連中ばかりで」
「まぁ、今のアキバはゲームの時よりはアッパー気味ですかね。
その<円卓会議>の設立を陰に陽に“指揮”していたのが、シロエさんです」
ドワーフのフの彼が、龍之介君の足りない言葉を補いよった。
うん、まぁ、こっちは有難いんやけど。
君らの生命は、大丈夫か?
それにつけても…………。
「シロエ、か……」
此処ん処、ホンマよう聞かされる名前……やなぁ。
「そういえば、レオ丸さんて<放蕩者の茶会>の面々と面識あるんですってね?
てことはこのゲーム、結構長いんですか?」
「……誰から聞いたん?」
「エルヴィンさんからです。さっき念話でっ!?」
ワタルノのフ君は、後頭部に石礫による攻撃を受けた。
HPに結構なダメージ。[悶絶]の状態異常発生。
そーいや、以前に読んだラノベに、名言があったなぁ。
“敵を倒すには、先ず味方から!”
現状では仮想敵であるワシを倒すために、味方を一人生贄に奉げるという高等戦術! では、ないやろな……どう考えても。
「いーうーなーよー。
まぁいいか。こちらはレオ丸殿の『現状』での『ご活躍』も共有済みですよ」
葉月嬢の、なけなしの胸にもたれたままの、ユストゥス氏。
石を投げたつけたポーズを、器用にも崩さずに言葉を続けよる。
「アキバの様子は龍くんから教えたから、さ?
だから、ミナミに関して、どんないきさつがあったのかをご教示願いたいなぁ、と」
話しの判る、ちょい悪でエロ猿みたいやった仮面を何の躊躇いもなく剥ぎ捨て、イカにも底意地の悪そうな笑みを浮かべよった。
な~んか、悪い事を考えているみたいやな?
……葉月嬢の胸板で、ほっぺを少し歪ませとるんは、態とかい?
で、何でワシの可愛らしいポンポンに、視線を注いどんねん?
…………。
ああ、そーいう事か……。
う~~~む、既に餌に釣られて入り込んだ簗に閉じ込められた蟹でやしたか、ワシは。
アマミYさんを見遣ると、微かに嘆息を漏らし、そっぽを向かれた。
流石は元大地人の貴族、って設定を持っていらっしゃるだけあるわな、アマミYさんは。
当の昔に、交渉の傍観者の立場を確保してはったんか。
今頃になり、気づきましたわ。
せやけど、ワシに注意喚起をせぇへんかったって事は……。
つまり、命に関わりのない子供騙しレベルって事やね、アマミYさん?
ほな、タエKさんは?
……うん、気づいてへんわな。むしろ、いつもより陽気やな。
そないに料理の腕を競い合えたのが、嬉しかったんか、タエKさん。
そいつぁ、良かった! って、そーいや昔、『陽気な幽霊』って映画があったよな?
レックス・ハリスン版と玉松ワカナ版と、二種類も。
自分は勿論、……新興キネマの方やろね?
さて、と。
引っかけられたんなら、しゃあないわな。
さっさと白旗揚げて、ミズーリの甲板に上がろうか。
せやけど、溜息くらいは吐かさせてな、ユストゥス氏?
「……なるほどなぁ、ワシは既に略式でお話しすることが決まってた、ちゅうわけやな?
ま、半宿一飯の恩義があるし、話せる事なら何でも話させてもらいまひょ。
ただし……、知ってる事に知らん事はないけど知らん事に知ってる事はないよってに、それでオッケーやんね?」
「お話が早くて大変結構。それはもう、当然でしょう?
……まぁ、私は知らないことでも知ってる振りしますけど。
とはいえ、こちらもお伝えすることはしますから、基本的にはギブアンドテイク、ってことで。
じゃあ、まずはそちらからお願いしますね。エルヴィン、筆記よろしくー」
ユストゥス氏の声に従い、エルヴィンくんを見たら。
減り込んだ石が、彼の顔から漸く外れた処やった……。
何となく見えない小鳥がピヨピヨと、エルヴィン君の頭の上を舞っているように思えるが果たして大丈夫なんかね?
まぁ、ステータス画面で確認した限りじゃ、[気絶]しとるだけやし、その内に回復するやろう。……ホンマ、<冒険者>の体って無駄に頑丈やなぁ。
ってな事を、エルヴィン君の少し凹んだ寝顔を見ながら考えてたら。
「ひゃあん!!」
と、葉月嬢が嬌声を上げよった。
公衆の面前でのイチャラブ行為が、モザイク加工行為にランクアップしかけた処で、漸く真面目な声を出すユストゥス氏。
「……先ずは此方の話からしましょうか。ススキノの話も含めましょうか。
イアハート、責任持って起こして!!」
ふぅ。
真面目な態度に移行しようとする過程でも、キャッキャウフフ♪的な事を必要とする彼らを見ながら、ワシは心の中で一息吐いた。
そろそろ、アドバンテージを取り返さな、な。
ワシは、パチンと手を打ち鳴らして、注目を集めさせてもろうた。
「いや、先にワシの方から話させてんか?
此れ以上そちらにサービスしてもろうても、ワシには払えきれん。
せめて、テーブルチャージ料代わりに、こっちから話しをさせてんか?」
ちょいと御免やで、と断りを入れて<彩雲の煙管>を咥える。
上を向いて煙を吹き出してから、正面に顔を戻すと、エルヴィン君も漸く正気を取り戻しとった。
水浴びした後の犬みたいに、頭を何度も振っているエルヴィン君。
ほな、彼がシャンとするまでは、軽い御話からさせてもらおか。
「ちょいと、長話になるけど勘弁やで。
疑問、質問があったらば、思いついた時にしてくれたらエエ。
出来る限り誠実に答えさせてもらうさかいに」
あくまでも、出来る限り、やけどな。
「先ずは、ワシの交友関係から話しをしよか。
言うなれば、全ての発端かもしれんしな?
自分らが今一番訊きたい事は、ミナミの事やろ?
<Plant hwyaden>っちゅうギルドの事を一番知りたいやろ?
ゼルデュスって言う名の、其処で実務の仕切りをしとる陰険野郎は、ワシの趣味的同僚的存在やったでな。
そして何よりも、武闘派をドカドカ集めて調子こいてエラそうにブイブイ言うとるアホンダラは、ワシの弟分みたいな奴やった。
誰の事かは知ってるやろ? ……<ハウリング>のギルマス、ナカルナードの事や。
ワシの事と、こいつらの事から、お話ししよか」
煙と共に吐き出したワシの言葉を、<月光>の皆さんは真剣な顔して聞いとる。
特にユストゥス氏の眼が、嬉しそうに楽しそうに、スッと細くなりよった。
エルヴィン君も、腰の魔法鞄から皮カバーのノートと羽ペンを、自然な動作で取り出して、ワシの一言一句を聞き漏らさない体勢になりよった。
他の面々も居住まいを正しとる。
脇目を振ると、アマミYさんは背筋を伸ばし、超然とした笑みを湛えとった。
タエKさんは……退屈そうに欠伸をしとる。
ま、そやろな。
ワシは頭の中で、話さなければ彼らが納得してくれへんであろう事・恐らく彼らが知らないであろう事・話さなくてもよい瑣末な事・絶対に話してはいけない事、それらを素早く整理する。
話す順序は、臨機応変や。
彼らの反応を見ながら、組み立てりゃエエわさ。
話さなければ彼らが納得してくれへんであろう事は、如何にしてミナミの街が混乱から平静になり、混沌へと移行したか。其処でワシらが何をしたか、や。
恐らく彼らが知らないであろう事は、<Plant hwyaden>を指導する立場の、インティクスとゼルデュスの二人と、<Plant hwyaden>に全面協力しとる<ハウリング>のナカルナードの事。それに組しようとしとる、大地人貴族達の事。<赤封火狐の砦>の事。ロマトリスの黄金書府の現状。
話さなくてもよい瑣末な事は、ワシが情報を入手しとるアキバとミナミの交友関係についてやなぁ。ミスハさんについても、詳しくは話さんでエエやろ。名前を匂わすくらいはしてもエエかな?
絶対に話してはいけない事は、ワシが仕出かした事やな、勿論。人を殺した話なんてホイホイ話ししたら、そいつは正真正銘ホンマモンのアホや。ワシも流石に其処までアホやないし。ロマトリスに関して開陳してもエエんは、……当たり障りのない情報だけやな。
ってな訳で、ワシは彼らの反応を見ながら、<大災害>が始まるずっと以前からの長い長い物語を始めた。
何となく、被告人席に立っているみたいな気分やけど?
腰を下ろしたまま、咥え煙管をしながら、ワシは勧進帳みたいに空で意見陳述をベラベラと並べたてたった。
あ、言うとくけどな。
思いつくままに一方的に喋り倒すだけなら、一時間くらいは屁でもないで♪
<ウメシン・ダンジョン>から<赤封火狐の砦>での大地人との共闘の話をし終えたくらいで、口の中が少し乾いてきたんで、タエKさんが淹れ直しててくれた茶を一口飲んで、さて続きをと思ったら。
「レオ丸殿、ちょっとお待ちを。
ずっと此方のコートへ、ボールを打ち込みっ放しで疲れたでしょう?
そろそろ、サーブ権を此方に渡してくれませんかね?」
いや、別に疲れてへんけど? まだまだ喋れんで♪
せやけど、まぁエエか。
今お話しさせてもろうた内容で、先に提供されたサービス分はお返しさせてもろうたはずやんな。
編集点みたいにキリが良い処ってのもあるし、こっからは御互いにどっこいどっこいの立場って事でオッケーでやすか?
ほな、こっちの方が年長さんやし、年少さんに遊び場を譲りましょう。
五回の表の攻撃は、そちらからどうぞ。
ってワシが右手を差し伸べて、ユストゥス氏に言葉の続きを促した。
………………。
………………。
………………。
黙って聞いとったら、エライ話を打っ込んで来よったなぁ。
ススキノで何しとんねん、君らはッ!?
シロエって子……青年も、何やらかしとんねん?
ハリウッド映画をリアルに再現してきたんか、自分らもシロエ青年の方も。
テヘランの、アメリカ大使館みたいにならんで良かったねぇ。
エンテベ空港よりも大成功ってなぁ……、ホンマか?って疑いたくなるけどな?
それと、や。
彼方此方の端々でシロエって奴の話をちょいちょいと聞いたけど、今まで聞いた話とはエラく印象が違ってね?
裏側の一番昏い処に潜んで全く表に出て来ない、帷幄内だけが全世界の人かと思っていたんやけど、きっちりと前線に出張る軍配者やったんか……。
それに、直継って子と、何よりも……にゃん太氏!
どーりで道理で、ワタルノフ君が先走って<茶会>を口走るはずやわな。
処で、ワタルノフ君や。
何で君もワシみたいに、ポカンと口を開けてんねん?
エルヴィン君もや。
折角の理知的な顔立ちが、台なしやで?
んん!? って事は……。
君ら二人は、ユストゥス氏らと一緒にススキノへは行ったりは、せぇへんかったって事かいな?
そーいや。
ユストゥス氏の先の説明では、“仲間達とススキノへ行った”とは言うてたけど、誰々と何人で行ったとまでは、言うてなかったよな。
今は、<月光>ってギルドを作っちゃいるけど、そもそも構成員は何人くらい居るんやろうな?
思わせぶりな話し方から推察すると、そこそこの人数が居てそうやけど。
ほんで、レベルは当然の事としても、個人個人の<冒険者>としての能力も高いんやろうなぁ、きっと。
此処に居るメンバーが最強戦力で、アキバの留守番組が最弱って、そんな心許ない班分けなんか、ワシやったら怖ぁてようせぇへんしな。
各所から聞いた範囲やと、今のアキバは、一応は最低限の安全が確保されたようや。
せやけど、まだまだ安全を構築しつつある状態やわな。
水面は一切波立ってへんけど、水面下はドロドロしたモンが対流している感じなんやろうねぇ。
そんな処に、未熟な仲間を置き去りにして、遠出なんか出来ひんし。
って事はつまり、手練を何人も抱えた、恐ろしく強いギルドの一員なんやろうなユストゥス氏らは。
彼らは、仲間達と責任を分担して、お互いがお互いを背負い合わなならん。
ぼっちは、その種の責任を背負うんを放棄した存在や。
その代わりにそれ以外の、ありとあらゆる全ての事を背負う覚悟をせなならん。
彼ら全員の表情には、その種の責任を背負っている自負が見える。
さてワシの顔には、彼らとは違う類の覚悟が見せられてるんやろうかね?
それにしても。
にゃん太氏に、シロエ青年に、直継青年か……。
アキバには今、元<茶会>の人間がチラホラと居るんやねぇ。
<西風の旅団>のワンツートップも、そうなんやったよなぁ。
ほんならワシも、<茶会>の関係者っぽく見られたりしとんのかな?
そいつは……ちぃーっと不味いなぁ。
正味の処、ワシは<茶会>の一員と違うし。
偶々、一員達が、友達やってだけやし。
カズ彦君や……、インティクスの小娘について訊かれても、通り一遍の事しか答えられんし。
したらば、偶発的な接触をするまでは、此方からアプローチするんも厳禁やな。
アキバの誰かに連絡するんも、彼らから遠い処のみか。
エンちゃんは(○)。彼がオッケーなんやから、エンちゃん経由でやったらヘルメスの可愛くない嬢ちゃん達や、もしかしたらキリー=Aye-MAM!にも手を広げても問題なかろう。
テンプルサイドのユウタ君、ロデ研のカズミ嬢とリエ嬢も、(○)。
彼と彼女らには、中心点から少しずれた位置からの意見が聞けるやろう。
後は、ナンバーシックスもといナーサリー君は、ソロやし問題なしやろう。
朝霧の御前さんは、事情を説明しさえすりゃオッケーやし。
………………。
うん! 検証した結果で(×)なんは、此方から連絡したらアカンのは、一人だけ!
立てばウワバミ、座ればオロチ、歩く姿は養老の瀧、の彼女だけ!
所謂、早苗さんだけやわ!
アンゴルモワならぬアセトアルデヒドの大王の、彼女にだけは絶対に、見つからんようにせねば!
幾ら飲んでも大丈夫な体になったとはいえ……、ワシの豆腐メンタルが最終戦争終了まで、持たんかもしれへんしなぁ?
って余計な事を考えている間に、チーム<月光>の五回表の攻撃が終わったようや。
ほな、五回の裏。ワシの手番やね。
ワシが此れから語るんは、<大地人>に纏わるエトセトラと、此の世界についてのアレやコレや。
キョウを中心にしてウェストランデを支配しとる、どっちかってーと食い物にして寄生して私物化しとる、大地人貴族共について、一丁語ったろう。
ほんで、<エルダー・テイル>がゲームであった頃に、本社や支社のデザイナー達が無邪気に散りばめよった、歪つ過ぎる設定が、如何に此の現実と化した<大災害>後な<エルダー・テイル>に悪影響を及ぼしているんか、を熱弁させてもらおう。
序でに、一緒に考えてもらおう!
“知に比する富無く、無知に比する貧無し”って、アリ・イブン・アブ・タリブも言うてるしな♪
それに、三人寄れば文殊の知恵って、言うやん?
此処には、それ以上の人数が居るんやし。
でも、まぁ……。
“大男、総身に知恵が回りかね”と“小男は総身も知恵も高が知れ”が集まった処で、大した答えが出ぇへんかも、しれんけどね?
それでも。
下手の考えよりは、休憩時間が短くて済むやろ。
なぁ、ユストゥス君?
今回は、石ノ森御大へのオマージュが、五ヵ所です。
全て判った貴方は、ヴィーやんの仲間です♪