第弐歩・大災害+34Days 其の伍
漸くと言うか、やっと第一部の終了です。<第零歩>の其の壱から此処までが、<ミナミの街>篇でした。
チェックをすると、アリャリャでしたので、一部を加筆訂正致しました。
を、更に加筆しました(平身低頭)。更に色々と訂正致しました。(2014.08.19)
更に加筆修正致しました。(2015.02.22)
呼吸困難に陥るほどの大笑いをした玄翁は、ひいひいと言いながら右手で宙を軽く叩く。
「……頭の中に……自分の声が……ワンテンポ遅れて……聞こえてくるのは、実に変な感じだな。
通話相手を前にして、携帯電話で話しているみたいだ……」
密室での交渉開始直前に、レオ丸が指を宙で遊ばせたのは、念話を繋ぐため。
別室で控える玄翁に、ゼルデュスとの会話を全て伝え、入室のタイミングを知らせるためであった。
「処で、レオ丸さん。……レオ丸さん!」
「……エエねん。ワシは“根暗満載”やねん。これからずっと、“あの人、アレなんだって!”ってと長い渡り廊下の途中で後ろ指差されて、“駄目な奴”ってレッテル貼られ続けるねん……」
蹲り、地面に“の”の字を書いたり、見事な鼠の絵を描いたりしているレオ丸に、樹里は溜息の替わりに鼻を鳴らした。
「判りました! ……私が素敵でカッチョイイ二つ名を考えてあげますから!」
「ホンマやな!」
ガバッと身を起こしたレオ丸が、鬼気迫る顔で樹里に詰め寄る。
「え……ええ、お……約束します……」
「約束やで!!」
脅迫めかして突き出されたレオ丸の右の小指に、仕方なく指を絡める樹里。
「ゆーびきーりげーんまーん、うーそつーいたら、<貪り食う汚泥>を十リットルのーます!」
「え? いや、それは、ちょっと!」
「ゆーびきった!!」
必死に逃げようとする樹里の指を強引に絡め取ってから、レオ丸は勢いよく指を離した。
「さて、懸案事項が解決した処で!……何か聞きたい事でもあるん、樹里さん?」
機嫌を良くしたレオ丸の問いかけに、返事はない。
今度は、口を丸くし両手で両耳を塞いだポーズで、樹里の方が機能停止モードになっていた。
生気も光もなくした其の瞳は、まるでガラス玉のようである。
「……こいつは、しばらく駄目みたいだぜ、レオ丸学士?」
「……みたいやな、赤羽修士」
「仕方ない。それじゃあ彼女の聞きたい事を、俺が代理で聞くとするか。
レオ丸学士、あんたが張ったっていう結界の、取り扱い注意点を教えてくれませんかね?」
「ああ、それなぁ。……ワシの力って言うよりは、樹里さんの力の方が大きいんやけどな。それと、フレーバー・テキストの御蔭かな?
ま、それはさておいといて、と。
判りやすく言うとやな、プレイヤーズタウンの“衛士”機能と一緒や」
「つまり?」
「殺意や強烈な害意が関知されたら、瞬時に“衛兵”が登場するやんか?
それを参考にしてな、<ハチマンの新宮>に対して強烈な害意や悪意を持つ者に対してのみ、“排除結界”が発動するように仕込みをしたんやわ」
「じゃあ、先ほどのは?」
「恐らくミスハさんがよほど強烈な害意、恐らくは神前に奉納された起請文の略奪と破棄、それを考えながら<お社の山>に侵入しようとしたんやろうねぇ」
「それじゃ、俺らも不敬な振る舞いを企んだら?」
「勿論、排除される。……そもそも神仏に対して、人が大事にしているモンに悪さしようとするなんて、言語道断やし」
「そりゃ、そうですね。改めて自戒しないと」
「そう言うこっちゃ」
「それで、その石像は?」
「エジプトの<ムセイオン学院>で回収した、置物っぽい<守護者>やわ。
狛犬代わりに使ってくれたらって、カズ彦君が気を利かせてくれたようやね」
「ガーディアン?」
「アイテム所有者の命令に忠実な、な。フレーバーテキストを読めば、“飼い主の言う事をよく聞く、少し頭の悪い獰猛な番犬”ってヤツみたいやな……」
「それは、……大丈夫なんですか、ね?」
「……自信無いなぁ」
「……樹里君が再起動してから、判断しますか」
「旦那様ぁ~~~!」
社務所から、暗幕で頬被りをしたままのタエKが卑屈な姿勢で、丼茶碗を抱えコソコソと現れた。
「……コント以外で、コソ泥っぽい存在を初めて見ましたよ」
「……ワシもや」
「旦那様」
キョロキョロと辺りを見回し、小声で呼びかけるタエKに、レオ丸は何とも言えない顔をする。
吐き出す五色の煙も、項垂れたように地を這っていた。
「旦那様、こいつはどうしましょう?」
挙動不審な仕草のまま、水仙のような白い花を咲かせた植物が生えた器を、差し出すタエK。
「レオ丸学士。俺の見間違いじゃなければ、その花は……呼吸してるんじゃあ?」
「そやで、呼吸する……正確には、酸素を食ってるんやで、名前の通りに」
<喰らうモノ>と一括で分類される異形種植物の一種、<酸素喰い>は幾つも咲かせた白い花弁を開閉させ、周囲の酸素を可憐に貪っていた。
「<人食い草>とは、近縁種でも遠い親戚でもない、雑草の一種やねんけどね。
種が地に落ちた瞬間から、芽が出て葉が伸び、あっという間に花を咲かせよる。
スモールストーンの薬草園にも、捜したらちょいちょいと生えてんで」
「…………ああッ!」
何かに気付き声を上げる玄翁に、レオ丸はニヤニヤしながら頷く。
「せや。さっきの部屋を真っ暗にしてたんは、部屋の片隅に置いてたコレを隠すためでもあんねん。
暗い部屋に多人数で居ったら、勝手に息苦しく感じるやんか?
実際には、<酸素喰い>が酸素をバカバカ喰うてたんやけどな。
体内に取り込まれる酸素量が若干でも減れば、脳へと送られる酸素量も低下するから、結果的に思考力が次第に低下しよる。
まぁ、実際には自分が入室した時と、繊細さ故にグロッキーしてしもうたメリサンド嬢が退出する時に、密室状態がキャンセルされてしもうとるから、何処まで有効やったかは不明やけどね?」
「……狡すっからぁ」
レオ丸は受け取った丼鉢を、硬直したまま微動だにしない樹里の前に置いた。
「ワシみたいな三一奴は、小細工してなんぼやろ?」
足元の石像を持ち抱えて、その傍に並べる。
物言わぬ彫像と化している樹里の足元に、二体の石像が鎮座し、その前に白い花の鉢植えが一つ。
レオ丸はそっと手を合わせて、頭を下げた。
「早く良くなりますように、っと。……さて、これから何しよう?」
首を振りお手上げのポーズを取ってから、玄翁はレオ丸に一礼する。
「本当にまぁ、何から何まで……。そうですねぇ、……釣りでもしますか?」
「ほえ? 釣り? ……ああ、それもエエなぁ。なーんも考えずに水面に糸を垂らすってのは、今のワシには最高の贅沢やなぁ」
「本格的なフィッシングでもないし、釣竿はそのへんの枝で良いだろうし」
「釣り糸は、ミチコKさんにでも出してもらうか」
「では、行きますか」
「留守番は、樹里さんに任せよか。タエKさんも一緒においで♪」
「承りました」
人気の失せた社務所の前にて、立ち尽くし凍りついたままの、樹里。
その御前では<酸素喰い>が、せっせと酸素を食べていた。
「長閑だねぇ」
ニオの水海の湖岸の土手に腰掛け、レオ丸は煙管を吹かせた。
玄翁もほんの少し離れた所で、大欠伸をしている。
二人の手には、此処への途上で拾った手ごろな枝が握られており、その枝先には<カンダタの糸>が結わえ付けられていた。
<煉獄の毒蜘蛛>のミチコKは、<カンダタの糸>を提供した序でに、木々の間にも糸を張り巡らせてハンモックのような寝床を作り、アンニュイな顔で微風に揺られている。
「お?」
即席の竿に手応えを感じ、慌てて引き上げるレオ丸。
煌く水面から、真っ赤な背びれが特徴的な<ブラッドバス>が、銀色の鱗を輝かせて宙へと躍り出た。
「便利なアイテムやなぁ」
レオ丸は、ブラッドバスの口から<イルゼビルの釣針>を外し、玄翁を見る。
「でしょう?」
未だ釣果ゼロの玄翁は、気にした風もなく笑顔で答える。
「餌要らず、ってぇのがエエわな。……イソメやらゴカイやらを触らんで済むってのが、有難い」
「そんな軟弱な事では、太公望にはなれませんぜ?」
「別に、大物狙いなんかしてへんし。人を釣り上げても、腹は膨れへんし。
それよりも、コレって生で食えるんやろか?」
草の上でピチピチと跳ねるブラッドバスを見ながら、レオ丸は首を捻る。
「ブラックバスの生食やと、躊躇するけどなぁ。
こいつは大きさだけは一緒でも、違う種類やし……。
大体からして“Bloodbath”、和訳したらば“大量殺人”って一体全体、どないな名前やねん?」
鰓に指を引っ掛けて持ち上げ、矯めつ眇めつするレオ丸。
「いけません、旦那様。生食など、はしたのうございます」
よほど気に入ったのか、暗幕の頬被りをしたままのタエKが、レオ丸の背後から手を伸ばしブラッドバスを取り上げた。
落とさないように右手でしっかりと掴むと、その辺に落ちていた長めの枝を拾い上げる。
「旦那様。<水妖>と<火蜥蜴>を召喚して戴けますか?」
「あ、ああ」
レオ丸が左手に念を込めると、地に青色と赤色の魔法円が刻まれ、その上に二種の精霊が現出した。
ウンディーネが出した水で軽く洗った枝を、同じく水洗いをしたブラッドバスの口から突き入れて串刺しにし、サラマンダーが発する熱源で炙り始める、タエK。
GIGIGIGI……GEGEGEGE……。
体表の至る処から真っ赤な鮮血を滴らせて、名前通りの姿で焼かれるブラッドバスが上げる奇怪な断末魔に、サラマンダーも心なしか嫌そうな顔をしていた。
「はい、お待たせ致しました。本来でしたら飾り塩をすべきなのですが、偶には野趣溢れるお味も宜しいかと」
手渡された赤黒い焼き魚に、レオ丸は呆然とする。
ゆっくりと背後を振り返ると、玄翁の眼が点になっていた。
「風味が落ちますので、冷めぬ内にお召し上がり下さいまし」
機械的な動きで、不気味なブラッドバスの串焼きに齧り付く、レオ丸。
先ずは、一口。ゆっくりと咀嚼し、嚥下する。続けて、二口。三口目からは貪るように。
頭と尾鰭だけ原型を残した、ブラッドバスの白骨死体が串ごとレオ丸の手から滑り落ちた。
“不器用なクシが、唯一不器用でない調理の腕で作ったんだよ。冷めると美味しくなくなるよ”
レオ丸の脳裏に今朝方、ユウタとの念話に割り込んできたヤエの言葉が、リフレインする。
「εὕρηκα!!」
そう一声叫ぶと、レオ丸は大童で着ていた衣装を脱ぎ、装備を全て放り出すや、一目散でニオの水海へ駆け出した。
衣装の影で、黒い霧が迷惑そうに身動ぎをする。
レオ丸は、ザブンと水音高く飛び込み、溺れたように湖面でバチャバチャと藻掻いてから、再び土手を攀じ登り、草の上をグルグルと走り回る。
何度も息を荒く吐き出しながら、レオ丸は玄翁の前にて漸く足を止めた。
「エウレカ!!」
玄翁は点になったままの目で、びしょ濡れのレオ丸の顔を見て、ずぶ濡れの胴体を見て、ぐしょ濡れの下半身からは目を逸らした。
「eurekaは、いいけど。……股間でブラブラしている粗末な“トラウマ”を、仕舞ってからにしてくれませんかね、レオ丸学士?」
「“トラウマ”は大きさの事やない! そんな事より大変やで、赤羽修士!」
「先ずは服を着たらどうです? ……何でまたいきなり、ストリーキングをされたんだか……」
「アルキメデス大先生に、敬意を表したかったから! 所謂一つの、様式美!」
召喚したままのサラマンダーで体を乾かし、身支度を整え直したレオ丸は、玄翁の竿を指差す。
「今や! 釣り上げろ!」
へいへい、と言われるままに玄翁が竿を引き上げると、やや小振りなブラッドバスが宙で身を躍らせた。
「もらうで!!」
手を伸ばして<カンダタの糸>の先から引き千切るように獲物を外すと、そのままタエKへとパスするレオ丸。
「焼き加減はウェルダンで宜しく!」
投げ渡されたブラッドバスに、手早く調理を施す<家事幽霊>。
GIGIGIGIGIGI……GEGEGEGEGEGE……。
お待たせしました、とタエKが言う前に串焼きを引っ手繰ったレオ丸は、玄翁にそれを突き出す。
「さぁ喰え、直ぐ喰え、とっとと喰え!!」
何とも食欲を誘わない見た目の、ブラッドバスの串焼きを受け取った玄翁は、じっくりとその焼き身を観察する。
次いで、すんすんと臭いを嗅いだ玄翁の目に、驚きの色が宿った。
目を大きく見開いたまま、ブラッドバスにむしゃぶりつくように齧り、あっという間に一匹を食べ尽くした玄翁が、ぽつりと呟く。
「eureka」
玄翁は、急いで服を脱ぎ始めた。
「樹里さん!! 大変や!!」
耳元で叫ばれたその言葉で、樹里の意識が覚醒した。
虚ろな視線が宙を彷徨い、やがて焦点が定まり下へと向く。
泡食ったようにジタバタしている玄翁とレオ丸が、そこに居た。
「……どう……されたん……ですか?」
「エエからこれを、喰らいやがれ!!」
突然、樹里の視界を何かが大写しとなり、それが口へと押し込まれる。
「にゃにひゅりゅん……で……しゅ!?」
もぐもぐという咀嚼音を立てる口元以外の、樹里の動きが再び止まった。
ゴクンと飲み込む音がし、樹里がぎこちなく再稼動する。
「……これは、一体?」
ワクワクした様子で、樹里のリアクションを待っていたレオ丸と玄翁が、当てが外れたように口元を歪め、揃って舌打ちをした。
「……何や、脱がへんのかい」
「……このクールビッチめ」
「何かおっしゃいましたか?」
驚きの表情は崩さないで、樹里が冷静な声を出す。
「何でもあらへんで。いや、何でもあらへん事はない! エライこっちゃで!!」
「そうだぜ、樹里君! 革命的で画期的な出来事だぜ!!」
両手を振り回し、何かを誤魔化しながら口々に叫び出すレオ丸と玄翁。
「今、喰うたやろ!? 骨まで味わったやろ!? 焼いた魚を!!」
「料理だ! ご飯だ! メシだぜ!!」
疑念だらけで首を捻っていた樹里の顔に、理解の色が広がる。
「香り! 味!」
両手を胸の前で組んで、恍惚の笑みを浮かべる樹里。その周囲を飛び跳ねながら回る、レオ丸と玄翁。
「何が一体、どうされたんですか!?」
叫ぶような樹里の問いかけに、レオ丸は満面の笑顔で背後を指差す。
「全て、彼女の御蔭なんや!!」
「……アラクネーが、この奇跡を!?」
レオ丸の指差す先には、浮かれている契約主の狂騒に、付き合いきれないといった顔で首を振るミチコKが居た。
「……ちゃうちゃう。彼女もまぁ、関係ない事はないけど、主役やない。主役は何処や!? タエKさん、タエKさんは、何処や!?」
「お呼びでしょうか、旦那様?」
社務所の裏から、頬被りをしたままのタエKが高速の抜き足差し足で、音も立てずに現れる。
「自分は、……何処の何を目指しているんか、教えてくれるか?」
「家政婦とは即ち、家の政を司る者。政には、表と裏がございますので」
「え~~~っと、それについては、今は置いとこか。話の脱線した先が、迷宮に繋がってそうやし。
それは、それとして! さて、お立会い! って既に皆、立っているか!」
「いいから、話を先に進めて下さいませんか?」
「まぁまぁイライラしたらアカンで、樹里さん。カルシウムか、それともカルシウムかが足りてへんのと違うか?」
「カルシウムなら、先ほどボリボリと戴きましたから!」
「それなら良かった。ほんでやな、彼女、タエKさんはやな、見ての通り紛う方なき<家事幽霊>やねん!」
天を仰ぎ両手を広げ、爪先立ちでクルクルと回転しているレオ丸の契約従者を、胡散臭いモノを見る目で眺める樹里。
「……見ての通りシルキーやねん、けどな……。名前の通り家事全般をこなす、モンスターやねんな。家事全般……つまり、“炊事”が出来るって事やねん!」
「だ・か・ら、それがどうしたんですか?」
「……ワシが不自然なくらいに“呪い”“魔法”が使える理由を、昨夜話したやろ?
理由は、サブ職の<学者>の能力で、“呪い”や“魔法”を理解したからやんか。
サブ職には、様々な能力があるわな。それには全て理由がある。
<料理人>って、サブ職にも理由がある。
この世界で料理を食べるには、作成メニューを使えば誰でも料理を入手出来る。但し、味は既に知っての通りや。
じゃあ、食材を切ったり焼いたりすればエエやん、って思ってもゲル状か変な黒炭になってしまう。
それは何でかって言うたら、<料理人>やないからやってん。
処がぎっちょん、此方のタエKさんは“家事”の、“炊事”のプロや!
“調理”の能力を持った者しか、料理を作られへんのんや、此の世界では!」
レオ丸の指差す先で、回転のし過ぎで目を回したのか、倒れ臥したタエKがミチコKに介抱されている。
「信じるか信じひんかは、樹里さん次第や。せやけど、香りと味のする料理を、証拠として既に提示したで!」
「なるほど、納得しました。他の事は兎も角として、彼女に“調理”の技能がある、事だけは信用しましょう。
調理が出来なければ、料理を作る事が出来ない、という事も。
<料理人>だけが調理出来るが、他の多くのサブ職は、調理の能力を有しない。
そして……私のサブ職は……<戦司祭>……」
「それを言ったら、俺のサブ職だって<鍛冶師>だぜ、樹里君。
だが、<「名誉」と「火」と「水」>のギルメンには、<料理人>が二人も居るじゃないか?」
地に崩れ、俯いていた樹里が顔を上げた。その顔が、眩しいばかりに輝く。
「既に念話で簡単に説明し、思いつくままに買えるだけの食材を買え、と指示しておいた。
特に、黒胡椒と唐辛子などの各種香辛料と、ニンニクは絶対に買って来いと」
「序でに、な。<調剤師>と<錬金術師>の子に、薬種屋でも買い物しといて、と伝えたわ」
「薬種屋?」
「“鬱金”“ガラムマサラ”“馬斤”“肉荳蒄”“胡荽”“小荳蒄”“肉桂”“丁字”、全部、漢方の薬種や。……今夜は、カレーやで、樹里さん?」
カレー。
樹里の意識に、その単語が深く刻み込まれる。
「もし仮に<料理人>にスパイスの調合は出来ひんでも、<調剤師>か<錬金術師>なら出来るやろ」
カレー。
樹里の鼻腔に、あの刺激的な香りの記憶が馥郁と蘇った。
「これで、あの湿気った不味いメシともおさらばだぜ、なぁ樹里君」
カレー。
樹里の口内に、じわじわと唾が溢れ始める。
「カレー!!」
前触れなしに絶叫する、樹里。
冷静さを失くし珍しく前後不覚に取り乱した彼女の姿に、レオ丸と玄翁、そして二体の契約従者が後退った。
「カレーですか!? カレーですね!? カレーと言えば、カレーですよ!!」
狂気乱舞を突き抜けた樹里の狂乱する様子に、レオ丸と玄翁は顔を見合わせ、苦笑いを漏らす。
「樹里君も、人の子ですねぇ、レオ丸学士?」
「命短し、食せよ乙女ってか、赤羽修士?」
クルクルと回転しステップを踏み、飛び跳ね、更に舞い踊り続ける樹里。
余りの取り乱しっぷりに、心配になった玄翁がゆっくりと近づくと、樹里はその手を取りワルツへと誘った。
華麗な舞いというよりは、樹里が玄翁を振り回しているようではあったが。
舞い踊り続ける二人を見て、気持ちの良い雰囲気に包まれたレオ丸は、タエKに寄り添われ、ミチコKの体に凭れながら、<彩雲の煙管>を吹かす。
細く長く天へと吐き出された五色の煙は、緩やかに螺旋を描き昇って行った。
その日、午後から夜にかけて。
<ハチマンの新宮>の社務所は、冒険者達の大宴会場となった。
中天に懸かる月が照らす中、山海珍味というには些かチープ過ぎる料理ばかりではあったが、それら約一ヶ月振りの“美味しい料理”を腹一杯に詰め込んだレオ丸は、<お社の山>の山道を苦しそうに登っていた。
鳥居の前に到り、漸く足を止め、大きく息を吐く。
「さてと、アグニ君。重たいモンを運んでもうて、御免な」
「いえいえ、先生が何をするのか興味ありますし」
アグニは、担いでいた巨大な素焼きの水瓶を、少し窪んだ場所を選んでそっと下ろした。
その水瓶の口よりも少し高い斜面に、レオ丸は抱えていた鉢植え代わりの丼茶碗を設置する。
相変わらず、元気に空気を貪っている<空気喰い>。
「さてさて、と」
レオ丸は、<マリョーナの鞍袋>に手を入れ、暫く弄ってから二粒の種子を摘み出した。
「ジャジャーン! <水素喰いの種>!!」
「何ですか、それは?」
玄翁と共に、アグニの後ろに従っていた樹里が、レオ丸の手元を注視する。
「さて、此処で樹里さんに質問です。酸素原子一つに水素原子を二つ、化合させたら何が出来るやろか?」
「それは勿論、“水”です」
レオ丸は摘み出した二粒の種子を、丼茶碗に埋め込んだ。
少し下がり、手についた土を払うレオ丸の目の前で、その変化が起こった。
<酸素喰い>の葉影から、小さな芽が二つ、ひょこっと顔を出す。
顔を出した芽が少し身震いし、葉を形成した。
葉は瞬時に大きく伸び、その間から茎が幾本も生え出て来る。
生え出た茎の先には小さな蕾があり、やがて可愛らしい花を幾つも咲かせた。
花開いた青い花弁が、呼吸するようにパクパクと動く。
「<水素喰い>の誕生。さて、答えは此の後でっせ」
青い花を咲かせた茎が、傍で白い花を咲かせる茎に絡みついた。
絡み付いた水仙のような二種の植物は、重みに耐えかねたのか、幾つもの花弁が纏まって水瓶の上に垂れかかる。
それら花弁の先に、清水の雫が生まれた。
月光を反射させながら、何滴もの雫が水瓶へと落ちる。
「って訳で、はい大正解。<酸素喰い>と<水素喰い>を一緒に植えたら、タダで“水”が手に入るねんわ。栄養は、酸素と水素だけ。植えられる条件さえ整えたら、いつでも何処でもってね。
……ウンディーネを召喚出来るなら、必要のないアイテムやけどね?
これらは<ハチマンの新宮>さんへ、ワシからの最後の寄進や。
参詣の際の手水鉢として御遣い下さいな。
……満杯になるまで、エラく時間がかかるのは御愛嬌って事で♪」
レオ丸は鳥居越しに拍手を打ち、<ハチマンの新宮>へ礼を尽くした。
「もう旅立たれてしまうのですか?」
「こんな夜中に出立しなくとも……」
「まだまだ、色んな事を教えて欲しいです」
<お社の山>を下りて直ぐ、レオ丸は出立の意思を三人に告げた。
社務所の傍で聳える古木の太い枝葉の下で、レオ丸は後ろ手を組みながら煙管を燻らす。
傍らには、日中はレオ丸の衣装に隠れ、先ほどは麓で待機していたアマミYが、静かに控えていた。
「“陽の当たる場所”よりは、“陽の当たらぬ場所”の方が、ワシの性分に合うとるし、此処は自分達の生活圏であって、ワシの安住の場やないしなぁ。
それに、ワシが此処に居ったらまたもや、何やかやと理由をつけて、ミナミの毒蟲が這いよって来よるやろし。
……そーいや皆さんは、“バタフライ効果”ってのを知ってるやろ?」
見えない疑問符を浮かべ首を捻るアグニの横で、何かに気づき口篭る樹里。
「カオス理論がどうしたって言うんです、レオ丸学士?」
ただ一人、正面から答えを返した玄翁に、レオ丸は苦い笑みを見せる。
「どーやらワシが、その“北京で羽ばたいた蝶々”やねんわ、赤羽修士。
ミスハさんが帰る前に、判り易く解説してくれたやん、ワシが為した事と、それがどんな結果になったかを。
結局の処、ワシが思いつきで良かれと思ってやった事は、全て裏目になってしもうた。
……土を耕して種を蒔いても、余所見してた所為で真っ黒なカラスに全部喰われてしもうたわ」
「それは、結果論でしかないでしょう?
レオ丸学士の発案が実を結んで、少なくともミナミの近辺は、大分落ち着いたじゃないですか。
……別に、為政者筆頭でも、総責任者でも何でもないでしょう、レオ丸学士は?
蝶々は好き勝手に飛ぶだけで、それが廻り回ってニューヨークで嵐になったとしても、蝶々に責任は無いと思いますよ、俺は。
どちらかと言えば、蝶々の羽ばたきを嵐に変えてしまった奴、奴らが悪いんじゃないですかね?」
「おおきにな、赤羽修士。……そう言ってもらえると、心が少しだけ静まるわ」
徐に煙管を口から外し、隣に控えるアマミYに預けると、レオ丸は玄翁の前へと進み出た。
いつになく真剣な雰囲気を纏うレオ丸に、玄翁は背筋を伸ばし身構える。
「<大英知図書館学士院>の<ROR>の一員として、汝に命ずる。胸を張り、頭を上げたままで、跪け、赤羽修士」
言われたまま、背筋を伸ばしたままに跪く玄翁。
「汝に問う、速やかに答えよ。汝は本と生き、本の元にて死す事を誓うや否や?」
「我、答え給う。本と共に生き、本の元にて死ぬものなり」
「汝が滅した後も、本は滅せぬと信じるや否や?」
「我、滅するとも、本は永劫の命を持つ事を信じるものなり」
「本に、誓うや否や?」
「我、本に誓い給う」
「……立たれよ、我らが同胞よ。
我は、汝が学士位に相応しい事を、此処に認める」
玄翁の手を取り、立ち上がらせると、レオ丸はにっこりと微笑んだ。
「赤羽学士。此れよりは、<五日物語>を名乗るべし。……おめでとう!」
「有難う、レオ丸学士。……しかし、<五日物語>とはまた……」
「ワシが選んだんと違うで。<大性典>ちゃんに、託されたんやで」
「マオーちゃんが、“名付け親”か。では有難く、拝受しますよ」
「いつか現実に戻れたら、……改めて<エルダー・テイル>にログインして、皆の前で正式な儀式で以って授与するさかいに」
「その時を、楽しみにしていますよ、レオ丸学士」
「ああ、早く笑いながらコーヒー片手に、煙管じゃなくて煙草でも吸いながらゲームをしたいもんやな、赤羽学士」
「あ、そうだ!」
羨ましそうに二人の大人の交歓を見詰めていたアグニが、不意に素っ頓狂な声を上げる。
「レオ丸先生に、お土産があったんです!」
腰に着けた<ダザネックの魔法の鞄>に手を入れるや、アグニは布袋を一つ取り出した。
「気に入ってもらえるかどうか……」
「何やろ?」
アグニから布袋を受け取り、口を縛る紐を解いて中を覗くレオ丸。
その鼻先を、懐かしい薫りがくすぐる。
布袋の中には、五十本ほどの細い紙巻が入っていた。
「た! 煙草やんか!!!」
驚愕の声を上げたレオ丸を見ながら、得意そうに鼻を擦るアグニ。
「ハチマンで買い物をしている際に、道端に出した椅子に座って煙草を吸っている、大地人のお爺さんが居たんです。
あれ? って思って話しかけたら、大地人も煙草を吸う者は多い、との事でした。
何処で売っているのかと聞いたら、ウチで扱っていると言われたんで、購入してみました。
現実ならば買う事は出来ませんが、こっちには年齢制限がありませんから」
レオ丸は、心の奥底から湧き出す満面の笑みを浮かべて、何度も頭を下げる。
アグニは、くすぐったそう笑顔で応じた。
「……其処で扱ってた銘柄は一つだけでしたんで、お口に合えば良いのですが」
「最高の御褒美やわ、アグニ君! 早速に吸わせてもらお!」
布袋から取り出した一本の紙巻煙草を、鼻に近づけて懐かしむように薫りを味わい、充分に楽しんでから徐に口に咥えるレオ丸。
アマミYが差し出す<彩雲の煙管>の火皿で点火し、巻きが甘く柔らかい煙草を慈しむように優しく持ち、ゆっくりゆっくりと肺を煙で満たしてから、レオ丸は満足げな笑みを湛えながら煙を吐き出した。
「……美味しいなぁ…………、煙草も………、心遣いも…………」
ほわっと吐き出された白い煙が染みたのか、レオ丸の頬を一筋の涙が零れて流れ、顎から滴り落ちる。
樹里達三人とアマミYは、静かにその様を見守った。
大事に吸っても、いずれは終わる。
火傷をしないギリギリまで味わったレオ丸は、短くなった煙草を煙管の火皿へと詰めた。
今度は煙管で味わい始めるレオ丸に、三人と一体は優しく微笑む。
「……笑わんといてや。煙草吸いって奴は、元来みみっちいんやから」
「そんな事では笑いませんよ、レオ丸さん」
あ! そうだ、と樹里が手を叩いた。
「格好良い二つ名ですけど……、“極楽蝶々”ってのはどうでしょうか?」
「“極楽蝶々”?」
「ええ。本当なら“極楽蜻蛉”にしたい処ですけど、蜻蛉みたいに真っ直ぐ飛ぶ人ではありませんし、あちらこちらへフラフラと飛び廻られるレオ丸さんには、丁度良いかと……」
「……今、適当に考えたやろ、樹里さん?」
「そ……そんな事は、ナイデスヨ?」
レオ丸は、少しだけ挙動不審な樹里を、鼻で笑う。
「ふん、まエエわ。“極楽蝶々”の二つ名、有難く頂戴しましょ。ほな、名付けてくれた御礼」
懐から一枚の木札を取り出し、樹里に押し付けるレオ丸。
「カズ彦君の置き土産、パート2。<壬生狼>の記章入りの名札や。
これを社務所の入り口の、目立つ処に張っといたら、鬱陶しい毒蟲共除けになるさかいに。
置き土産パート1の石像は、フレーバーテキストをよう読んで、気に入ったら設置したらエエわ。
……それと、肝心な事を言うとかんと、な。
今日の晩餐の件は、絶対に秘密にしときや!
何れは何処かの誰かが、或いは既に誰かが、気付いているかもしれへんけど。
“美味しい御飯の作り方”は、今のセルデシアでは最強の武器になる情報や。
せやけど、遣い方を誤ったら最悪の武器になるでな。
樹里さんと赤羽学士は、充分に理解しているやろうからエエけど。
……アグニ君は今一つ理解出来てへん顔やな?
って事は、<「名誉」と「火」と「水」>の子らも、この情報の恐ろしさを充分に理解してへんのんやろうなぁ。
破壊力のあり過ぎる情報やと認識して、くれぐれも取り扱いには注意してや。
……誰かが早く、この重大な秘密情報を広めるなり、暴露するなりしてくれたら、楽やねんけどな?
秘密が存知になれば、大手を振って美味いモンが喰えるんやけど、な。
今暫くは、こっそりひっそりと調理して、食べるしかないで。
絶対に情報公開の“ファースト・ペンギン”になったらアカンで!
“先頭を走るレミング”に、必ずなってしまうからな!
恐らくは、この情報が最初に広まるんは、東の方からや。
何故か? を聞きなや。……ワシは何故か知っている、だけやねんから。
耳をそばだてて、聞き漏らさんようにしいや。
現状ではより多くの情報を、誰にも悟られずに、隠匿した者の方が有利になるさかいな。さてさて……、誰が広めるのやら、ねぇ?」
改めて樹里達三人の顔をよく見てから、レオ丸は深々と一礼した。
「怒涛の二日間、御面倒をおかけしました。お付き合い戴き、誠に有難う」
頭を下げられた三人も、慌てて腰を折る。
「こ、此方こそ!」
「楽しかったですよ、レオ丸学士」
「色々と教えて戴いて有難うございました、レオ丸先生」
同時に頭を上げた四人は、照れ隠しに笑い合った。
「ほな、ボチボチと」
<中将蓮糸織翡色地衣>の右袖を捲くったレオ丸が、剥き出した手に幾重にも巻いた黒い数珠、<化の百八数珠>に念を込めた途端、夜のしじまを揺さぶる鈍い音がした。
レオ丸の足元から、昏く輝く藍色の光の線が四方八方に伸び、急な角度で屈折するや円の外縁となり、一つの魔法円を形成した。
直径およそ五メートルの、その魔法円の中に幾つかの内円が地に刻まれ、内円の中から異形の者達が続々と湧き出してくる。
樹里達が微かに慄きながら見詰める中、現出する六体の<動く骸骨>と、一頭の白骨の小柄な馬。
続けて<蒼き鬼火>も五体、レオ丸は召喚した。
「良き日、佳き時、善き場所にて、またお会いしやしょう。
樹里さん、これからも皆の心と思いを、大事に守ってやって下さいな。
アグニ君、これからも面白い事と楽しい事を仰山見つけや。
“山川草木悉有仏性”。
世の中のあらゆるモノには、仏さんに成る要素があるって意味や。
身の回りの草花や天空の星にも、意味はあるしお手本になる。
“興味”さえあれば、どんな世の中でも境遇でも、快活に笑って誰かを支えて支えられて、生きてけるさかいな!
メリサンド嬢と、<「名誉」と「火」と「水」>の皆にも、仲良く元気でと伝えといておくれよし♪ ……ほんで、赤羽学士!」
|<死神の仔馬(サン=サーンス・ポニー)>にひらりと跨ったレオ丸が、捨てセリフを放つ。
「大きい自分が、小さい成りしてるんは、中々に楽しませてもろうたわ♪」
「うるせぇ!」
手綱を手にしたレオ丸の背後に、アマミYが軽やかに飛び乗り、横座りの姿勢で三人に手を振った。
六体のスケルトンを護衛にした白骨の小柄な馬が、一人と一体を背に乗せて、鬼火の仄かな灯りに照らされた夜道を歩み始める。
心臓の弱い人が見たら、確実に寿命を縮めるほどのインパクトと共に、レオ丸の姿が闇へと紛れ、微かな足音と五色の煙を残し、消えて行った。
感動的とは言い難い別離の場にて、闇の向こうを見透かすように、いつまでも立ち尽くす樹里と玄翁とアグニ。
「……赤羽君。アレって、ワザとなのかなぁ?」
「いや、あの人は意外と天然だぜ、樹里君」
「……樹里さんが贈った二つ名って、……何でしたっけ?」
「……何て言ったっけ、私?」
「“ネクロマンサー”のまんまで、……いいんじゃねぇかな」
「だよねー」
「ですよねー」
足元の草から発せられる虫達の音色が、三人の声に唱和する。
月光に照らされた<お社の山>が凛と輝き、ハチマンの夜は何事もなく穏やかに更けていった。
此処までお付き合い下さいました、皆様方。特に御賛助を賜りました御先達並びに同志諸兄には本当に感謝申し上げます。
レオ丸がミナミを未だ出立する前に見送った、沙伊様の『アキバへの旅程』の皆様。貴方方のお姿を見なければ、レオ丸は旅を始めなかったかもしれません。
佐竹三郎様の『残念職と呼ばないで。(仮)』の、エンクルマ氏の明るさは、レオ丸の馬鹿さ加減をより愉快に照らして下さいました。
いちぼ好きです様の『ある毒使いの死』は、レオ丸の思考をより強いものにして下さいました。ユーリアス氏とテイルザーン氏の御協力、誠に忝く候。やっと、煙草が吸えました!!
ヤマネ様の『辺境の街にて』がそもそも、私が執筆を始めた理由でもあります。恐らく同じ切欠をお持ちの方は多いでしょう。ユウタ氏とヤエ嬢、そして微かながら櫛八玉嬢は、至高の目標であります。
相馬将宗様の『疾風と西風』の、ルーグ・ヴァーミリオン氏の語り口調には、痺れました。何れ改めて、実名にて登場戴きたく候。
或未品様の『とある新人の孤軍奮闘』の、銀薙氏には名前だけをお借り致しましたが、何れは<月光>の皆様方とも共演致したく存じます。ユストゥス氏の思考力は羨ましいなぁ。
そして、島村不二郎様には、私の抜かりを救って下さいました。公式では消えたミスハが、非公式ながら復活させる事が出来ましたのは、島村様の御蔭です。『<ロデ研>材料分科会』の<召喚術師>のお二人、カズミ嬢とリエ嬢の今後益々の活躍に期待致しております。
最後になりましたが、淡海いさな様の御寛恕がございませんでしたら、<第弐歩>は此処までのお話になってはおりませんでした。
『ハチマンの宮司』という作品に出会わなければ、七転八倒の末にお話自体を放り捨てていたやもしれません。
最大級の感謝を申し述べさせて戴きます。本当に有難うございました。
樹里・グリーンフィンガース嬢、赤羽玄翁氏、アグニ氏よ永遠なれ。
改めて感想を述べさせて戴くと、“他人の褌で相撲を取る”って何て素晴らしいんだろう! 温もりが誠に有難いなぁ! でした。
あ、決して私は、変態デハアリマセンヨ(苦笑)!
『<Plant hwyaden>を造っちゃったっぽい、男?』篇は、これで閉幕です。
次話からは、北陸と岐阜の旅路になります。目指せ、十月までのアキバ到達!




