第壱歩・大災害+22Days 其の弐
色々と訂正致しました(2014.8.18)。
更に加筆訂正致しました(2014.12.21)。
<トリバネ古戦場>の出口付近。
エンシェントキャピタル・ゾーンまでは、後五十メートルの場所。
鬱蒼とした木々の連なりが途切れ、前方にはぽっかりと開けた広場がある。
まるで乱雑な廃材置き場のように、広場一面に大小様々の骨が散らばっており、その中央辺りにはバランスボールほどの大きさの髑髏が二個鎮座していた。
「“象の墓場”ってこんな感じなんか?」
「こんなんとは違うな」
「えっ、違うんか!?」
「そら違うで。だいたい都市伝説やもん、“象の墓場”って」
ナカルナードの素朴な疑問を、レオ丸は即座に否定した。
象牙のように見える肋骨を指差したまま、軽くショックを受けた顔のナカルナードの肩を、ミスハが軽く叩く。
「では、疑問が氷解した処で、一仕事しましょうか? 法師も宜しいですね?」
ミスハの言葉を号令に、総出でラスボス戦の準備を始める面々。
<退魔の朱御柱>を降ろし、間隔を空けながら馬車の後方を塞ぐように二本、道の両端ギリギリに二本ずつ、少しぬかるんだ地面に打ち立てていく。
その一本一本にレオ丸が起動の偈文を唱え、作動させる。
打ち立てられた計六本の朱い杭は、盛大な火花を放射し始めた。
瞬く間にそれは上下左右に広がり、そして連動するように火花が絡まりあってコの字型の壁の如き様相になる。
僅かな所要時間で軍用馬車は、オレンジ色に輝くバリアに包み込まれた。
此れで、側面や後背からの敵襲を気にせずに戦える。
万全の体勢を整えたレオ丸達は、その頼もしい輝きに照らされながら、ラスボス戦に挑むべく円陣を組んで気合を入れ直した。
「ほな、行くで!」
ナカルナードの力強い宣言に、偵察班の全員がゆっくりと頷く。
やがて。
分厚い鉄板に太い柄を生やした様なグレートソードを肩に担いだまま、ナカルナードは無造作に戦場へと一歩踏み出した。
その途端。
天を睨んでいた髑髏の虚ろな眼窩が、青白い光を放つ。
散らばっていた骨が一斉に地を這いずり、髑髏の元へと集まって来た。
それに伴い陰鬱な灰色の空が、四方から現れたどす黒い雲に覆われてゆく。
気圧が変化し、重苦しい雰囲気を漂わせた嫌な強風が唸りを上げ、威嚇するかのようにナカルナードへと吹きつけた。
弄られ、千々に乱れる、狼牙族特有の強い毛髪。
見上げれば、紅い稲光が陰鬱な暗い空を縦横に走っている。
突如、それらが一つの奔流と化した。
ナカルナードに続きバトルフィールドに踏み込んだレオ丸達の前で、それは轟音を立てて髑髏を貫く。
間近での落雷に、一瞬目を焼かれる偵察班の面々。
列車が急ブレーキを掛けたような軋んだ音が、背けたその耳に届く。
回復した視界の中、異形が身震いをし、天に吼えていた。
<丘巨人>よりは少し小さいが、見上げなければその全身を確認する事が出来ないサイズ。
ロングソードの如き鋭い爪を備えた四本の腕と、禍々しく牙を剥き出した二つの髑髏。
バランスの悪い上半身を、四本の太い脚がしっかりと支えている。
二面一身のボーンゴーレムが、偵察班の行く手を遮った。
「鑑定結果を言うで!」
急いで<学術鑑定>スキルを発動させたレオ丸の言葉に、戦闘陣形を完成させた偵察班全員が耳をそばだてる。
「名前は、<朽ちぬ両面宿儺>!
レベルは91! ランクはパーティやが、準レイドくらいのHPが有りそうや!
単体行動、仲間は居らん! 移動速度は、平均的<守護戦士>並み!
魔法並びに中・遠距離の攻撃は無し! せやけどリーチが予想以上にあるで、不用意に近づくな!
魔法耐性は中の上! 但し、火系統魔法のみ耐性が、中の下や!!」
「おっしゃ、了解! <アンカー・ハウル>ッ!!」
先ずは定石通りに、ナカルナードが盾役を務める。
精神が高揚したらしく、狼の因子が活性化していた。
見る見る内に耳が伸び、眼に特有の輝きが生まれ、鎧の隙間から現れた尾が雄々しく地面を叩く。
獣人化した<守護戦士>の右後ろに、<武闘家>が僅かに腰を落とし両脇を締めて拳を構えながら立った。
先鋒と次鋒へと障壁を張るのは、陣形の両翼を固める二人の<神祇官>。
更に<施療神官>が、透かさず<サンクチュアリ>を展開して、紙鎧である回復職と魔法攻撃職達の防備を固める。
頭に乗せたマサミN以外の召喚モンスターを全て収容していたレオ丸は、新たに召喚していた一頭の特殊モンスターに、指示を出した。
「チーリンLさん、<祝聖韻一声>を!」
「C’est entendu.」
甲高い声で鳴いた<麒麟>のチーリンLが、額の一本角から黄色い煌きを周囲の冒険者達を包むように放つ。
その煌きは、細かい光の粒子となり、ナカルナード達の全身に纏わりつき、余さず吸い込まれていった。
<祝聖韻一声>とは、パラメータに数値として現れないが、パーティ全員の幸運度合いを格段に引き上げる魔法である。
攻撃の命中精度やクリティカル・ダメージの発生率が上昇し、回避や防御行動が向上するなどの効果があった。
しかし代償として、麒麟の契約主である<召喚術師>のHPとMPを、大量に消費させられてしまう。
HPとMPをごっそりと削られ、パラメータが二つともレッドゾーンに至ったレオ丸は、更に極限疲労状態のバッドステータスまで喰らい、後は頼むとばかりに尻餅をついて、へたり込んだ。
庇うように、レオ丸の前に立ちはだかったのは、あるみー。
武器でもある片面太鼓を派手に打ち鳴らし、<虹のアラベスク:赤き情熱>を発動させた。
生み出された無数の真っ赤な音符が、蝶々の如く華麗に宙を舞い、前衛二人と遊撃役のミスハの武具に宿り、火属性を付与していく。
「カウントダウン、5、4、3、2、1、<ライトニングチャンバー>!」
フジキューが得意とする雷撃系魔法が、一斉攻撃開始の合図となる。
トゥーフェイス・ボーンゴーレムの脚目掛けて、<人外王の大剣>の斬撃を豪快に叩き込む、ナカルナード。
高く跳躍し、右側の頭蓋骨を<王虎のゴールデングローブ>を填めた拳で殴りつけたトリニータは、蜻蛉返りをしながらの<ワイバーンキック>と、流れるように連続技を決める。
そして、体勢を崩した敵の背後から、ミスハが長脇差<薔薇十字丸>を鋭く抜き放ち、<ステルスブレイド>を仕掛けた。
「おっさん、柔いなぁ」
ナカルナードは、楽しそうにせせら笑う。
「うっさい、……年長者を労わんかい……」
パラメータの全回復には程遠いレオ丸は、腹に力の入らない小声で反論した。
本当は馬車の荷台で大の字になりたいレオ丸であったが、未使用の<退魔の朱御柱>とドロップアイテムが満載されているためにそれは叶わず、仕方なくのんびりと歩く麒麟の背でグッタリとしながら揺られている。
精神的な疲労困憊は数値以上やな、とレオ丸はぼんやりした頭で思った。
ゲームの時みたいな使い方してたら体が保たんわ、とも。
その頭の上で、マサミNが暢気に欠伸をした。
実際の所要時間は約五分でも、体感時間は二時間以上の総力戦。
トゥーフェイス・ボーンゴーレムは、大量の金貨と幾つもの希少なドロップアイテムを残して、地に沈むように消滅した。
相対性理論を存分に味わいながらの勝利に、偵察班はささやかな勝ち鬨を上げるや、直ぐにその場を後にする。
愚図愚図していては、再び何かが現れるかも知れない、と皆が思ったからだ。
<ノウアスフィアの開墾>が導入される前には存在していなかった、新種のフィールド・ボスのモンスターと戦ったばかりである。
しかも“戦場”の真っ只中、油断して良いはずがない。
偵察班一行は、ミスハを斥候役にしながら<トリバネ古戦場>を突破し、速やかにエンシェントキャピタル・ゾーンへと移動する。
勝利の余韻に、ともすれば緩みそうになる心をを厳にしつつ、一行は遂に第一目的地点へと到達した。
永遠の都・キョウを南から護持する、<護国大聖堂>。
丸みを帯びた三層建ての外観に、元は極彩色であったと思われる色褪せた装飾。
長い年月の洗礼を受けたモノトーンの建造物の横で、シンプルな形状の尖塔が唯一つだけ紅玉色に輝き、往年の面影を微かに残している。
<ヘイアンの呪禁都>という魔所が、間近で毒牙を隠しているキョウの南部は、遙か昔に見捨てられ朽ちるにまかせた場所だった。
遺棄された地に建つ、遺跡になり損ねた廃墟。
その寂れた門の前にて、先行していたミスハの出迎えを受けるレオ丸達。
「ざっと確認しましたが、危険は無いようです」
敷地外縁部に張り巡らされた退魔バリアは、全て正常に作動している事を確認したとの報告に、レオ丸達は<赤封火狐の砦>の出丸を出て以来、ようやく安息を得る事が出来た。
軍用馬車を外壁の出っ張りに鎖で繋ぐと、取り合えず全員で大聖堂内へと入る事にする。
ミスハが、罠の有無を入念に確認しOKサインを出すのを見てから、ナカルナードが重そうな扉に両手を押し当て、力を込めた。
施錠されていなかった大きな扉は、ゆっくりと静かに開いてゆく。
開ききった扉の向こうは、テニスコート二面分はありそうなガランとした空間が広がっていた。
何も置かれていない大理石製と思しき床は、磨き上げられた鏡面如く塵一つ存在せず、自発の淡い光を優しく放っている。
その光に照らされた四方の壁は、極彩色が施された何かの物語が、鮮やかな壁画として描かれていた。
「外面と内面では、エライ違いですねぇ?」
「此処が生きているって、証拠だろうな」
加羅美亭ジェーンの感想に、セラノミクスが同意した。
<ハウリング>の三人は、首を捻りながら壁画を読み解こうとしている。
他の面々も、似たり寄ったりの行動を取っていた。
隈なく床を触り、四方の壁を叩き、仔細に天井を観察し、何かを探そうとやっきになるも、結局何も見つからない。
「法師。……此処は見かけ通りの、がらんどうなんですか?」
「ありゃ? 誰も知らんの?」
部屋の中央で腕組するミスハの問いかけに、入り口付近でぼんやりと空を見上げ座り込んでいたレオ丸は、軽く首を傾げた。
「てっきり知ってるもんやと思とった! いや、スマンスマン」
漸く極限疲労状態から回復したレオ丸は、傍で佇むチーリンLの体に手を掛けながら、大儀そうに腰を上げる。
「ほなね。加羅美亭ジェーンさんは向こうの隅に、忌無芳一君はそっちの隅に、フジキュー君はあっちの隅に、それぞれ移動してくれるか?
ワシはこっちの隅に行くさかい。
ほんで、他の皆は入り口ん処に集合しとくれやっしゃ」
レオ丸の指示に、全員が動く。
「そいじゃあ、隅の人達。
ワシが音頭を取るさかい、部屋の真ん中を意識しながら拍手を一つ、大きく打って頂戴な。
ほな皆さん、御手を拝借、せぇ~のッ!」
一糸乱れる事なく、四人の拍手が綺麗に揃った。
大空間にパーン!と、重ねられて一体となった音が、大きく鳴り響く。
一拍の間を置き、床の照明が唐突に消えた。
扉が開け放たれたままのため、窓の無い屋内は暗闇に支配はされないものの、急な停電状態に不安感を覚えるレオ丸以外の、冒険者達。
不意に、床の中央が小さく点る。
そしてそれは一筋の光となって伸び、天井に当たり弾けた。
床と同じく飾り気が一切省かれた天井が、波打つように震える。
それは光の波紋であった。
「……と、いう訳や」
偵察班一行が見上げるその先、光の波紋が治まった天井一面に並んで、大小二つの魔法陣が脈動しながら現れた。
黄色い光の線で描かれた小さな魔法陣を、青・赤・白・紫の光が四方から囲み鮮やかに点っている。
白い光の線で描かれた大きな魔法陣の中央には、限りなく黒に近い昏い光が渦を巻き、明滅する無数の光点に取り囲まれていた。
「この部屋は、通称“地図の間”。
天井の図形は、見ての通りや……って怖い眼で睨むな、ナカルナード。
アホでも判るように、ちゃ~んと説明したるさかいに。
小さい方が、キョウと四方の護法聖堂を表わしとる。
大きい方が、<ヘイアンの呪禁都>と封印結界を構成する、社や祠やお堂を表しとんねんわ。
……十六年前のTVCMでは、観る者全ての心に残るくらいに、実に印象的な描かれ方をされてたんやけどなぁ!
誰も知らなんだか……。
所謂これが、ジェネレーション・ギャップってヤツか、こりゃ参ったね?
年の差って現実を突きつけられて、ちょいとがっかりだね?
まぁ、マジックユーザー系が四人揃ってへんと発動しぃひん、知る人ぞ知るってレベルの小イベントやから、しゃあないか……」
部屋の真ん中に移動したレオ丸の元に、天井を見上げながら全員が集合する。
「赤はここ南の護法大聖堂、<護国大聖堂>を示してる。
青は東の護法大聖堂、<銀照大聖堂>。
白は西の護法大聖堂、<霊蜂大聖堂>。
紫は北の護法大聖堂、<金鹿大聖堂>。
黄色い線の魔法陣の真ん中が、キョウを表わしとんねん。
ほんで、ブラックホールみたいな黒い渦が、<ヘイアンの呪禁都>。
その周りの星図みたいな光点は、封印結界を構成するちっちゃな御社とかや」
煙管を取り出し咥えたレオ丸は、ふと真剣な顔つきになる。
「……なぁ、皆。今のんを見たか?」
しわぶき一つ無く、静まり返る“地図の間”。
「青色の近くの光点が、一つ消えへんかった?」
「……はい、確かに」
「消えましたね……」
フジキューとミスハが、レオ丸の疑念を肯定する。
「……ってぇ事は?」
「どういう事や?」
「判らんから聞いとんじゃ、おっさん!」
「……考えんでも判れや、馬鹿ルナード……」
「つまり、<銀照大聖堂>近くで何か異変があった。
恐らくは、封印結界を構成する社か何かが一つ、機能停止した。
……という事ですね、法師?」
不毛な言い争いを始めようとしていた二人の間に、ミスハが割り込む。
「せやろな」
五色の煙を吐き出し、思案顔になるレオ丸。
「内的要因か? やとしたら……経年劣化による機能停止か?
それとも外的要因か? せやったら敵性存在による破壊活動か?
どちらにしろ、このまま放っといたら……」
「<スザクモンの鬼祭り>……」
「そやろな」
あるみーの呟きにレオ丸は頷き、一同は言葉を失う。
「そー言えば、<スザクモンの鬼祭り>のホンマの恐怖って、知っとる?」
レオ丸は<彩雲の煙管>を懐に仕舞いつつ、偵察班の面々をぐるりと見回し、ミスハと視線を合わせた。
「“混乱の飽和状態”……」
「ざっつ・らいと! ミスハさんの言うた通り“暴走の連鎖”、別の言い方をすりゃ“玉突き多重事故”の発生やねん。
<ヘイアンの呪禁都>内のダンジョンで倒されなかった鬼共が、わらわらとダンジョンから溢れ出よって、隣接ゾーンへと押し寄せる。
例えば、さっき通って来た<トリバネ古戦場>に行きよったら?
あそこに居った“骨のある奴”と戦い合う……って事はないねん。
数とレベルが違うんでな。
<ヘイアンの呪禁都>内の<人喰い鬼>共の平均レベルは、拡張パックが発売される毎に引き上げられとるから、現在は85レベルや。
……位負けしてしまいよんねんな、低レベルモンスター共は。
だもんで、出没ポイントから逃げ出してしまいよんねん。
筒から押し出される“心太”、みたいにな?
つまり……」
「…………つまり?」
口元を強張らせた忌無芳一が、掠れた声で虚空へと問いかける。
「<スザクモンの鬼祭り>が終了するまで、時間制限でオーガ共が消え失せるまでの間、キョウを中心とした近畿一円に、安全地帯はなくなるって事や。
しかも、押し出された既存のモンスター共は、消えずに移転先に残りよる。
ダンジョン内での戦闘が如何に大事か、理解出来た?
課題は早目に片付けんと、雪だるま式に問題が増えるってのが、<スザクモンの鬼祭り>のホンマの恐怖やねん。
……ゲームん時は、“こいつぁ大変だぁ!”って参加者全員で大笑いしながら戦闘してたけどな?」
「今は……笑い事ではありませんね?」
「……だなぁ」
レオ丸の淡々とした説明に、加羅美亭ジェーンとセラノミクスが呆然と呟く。
「……確かめに行くか!」
しばらく続いた沈黙を、ナカルナードが破った。
「こんな処でウダウダしてても、しゃあ無いやんけ!」
頼れる<守護戦士>の一言に、強張っていた空気が漸く緩む。
「バッと行って、チャッと確認して、何かあったらガツンとかましたったらエエねん!」
「そやな、ダッと行って、パッと確認して、チョイッとやりゃエエわな」
「バッとでも、ダッとでもいいですが、……先に補給をしましょうか?」
段々と、レオ丸とナカルナードの扱いに慣れてきたミスハが、少し早めの昼休みを提案した。
「そういや、気になる事があるんやけどな」
「気になる事?」
味の無い昼食を済ませ、数少ない食べる楽しみである果物を口に頬張りながら、ナカルナードがレオ丸に疑問をぶつける。
「せや。さっき倒したデカイ骸骨やけどな、前はあんなん居らへんかったよな?」
「そやな。普通に、頭一つしかない<白骨の巨兵>しか居らなんだはずや」
「ほな、アレはいったい何やねん?」
「……<両面宿儺>ってモンスターが居る。
<セキガハラ古戦場>の前哨戦に登場する、中レベルのボスや。
せやけど、さっきのは記憶に無い。
もしかしたら……拡張パック導入で追加されたモンスターと、違うか?」
その言葉に、ミスハの眉根が寄る。
「では、<スザクモンの鬼祭り>が発生したら、未知のモンスターが混じって出て来る可能性がありますね」
「……<銀照大聖堂>周辺にも、何か変わったんが居るかもしれへんねぇ?」
「悪魔の事を話すと悪魔が現れる、と言いますし。
不吉な事は言わないで下さいな、法師」
「<エルダー・テイル>では、流石に言霊は発動せぇへんやろ?
大丈夫やて……多分きっと!」
「信じていいんですか、本当に?」
「信じる者は救われる、って何処かの誰かさんが言うてるやん。
それにワシは法螺は吹いても、嘘はつかんって♪」
三十分後。
偵察班の一行は<銀照大聖堂>からさほど離れていない地点にて、戦闘態勢に入っていた。
厳重に張られた封印結界の一角、退魔バリアが一本と小さな御堂が一宇、経年劣化とは全く異なる理由で無残に砕け、破壊されている。
その崩れた結界の裂け目から、一頭のモンスターがのっそりと現れた。
耐え難いほどの生臭い臭気が漂い、得物を構えるレオ丸達の鼻腔を刺激する。
<牛頭大鬼の殺戮者>。
レベルは80、パーティーランクの凶悪モンスター。
本来ならば、ヤサカの地下迷宮の奥底に封じ込められているはずだった。
それが彼らの眼前で、目を血走らせ、涎と呻り声を垂れ流している。
金属鎧並みの強度を持つ剛毛に覆われた太い手には、半分に圧し折られた電柱のような石の棍棒が握られていた。
「嘘つき!」
呆気にとられた顔で麒麟に跨るレオ丸に、ミスハは皆の気持ちを代弁した。
<召喚術師>の契約モンスターは、制限数が確か十二体。
TRPGリプレイの、ヘッジホッグAK老師の活躍には拍手喝采。
凡人Aさんの御作『ヤマトの国の大地人』(http://ncode.syosetu.com/n1619bb/27/)に登場する、二次元ことヨウケン師は、何体のモンスターと召喚契約を結んでいるのか気になる処。
カルカルさんの御作『俺たち、私たち、召喚士!?』(http://ncode.syosetu.com/n4340ca/)の主人公達、《サモンッ!?》の面々の活躍も、要チェックです。
ビバ!!サモナーズ!!