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第壱歩・大災害+13Days 其の肆

会話だけで、文章を成立させるって難しいですね。

『まおゆう』の素晴らしさを実感しました。最敬礼です。

加筆訂正致しました(2014.8.18)。

更に加筆修正致しました(2014.12.2)

「それで、提案とは何ですか?」

「無条件で、って言うたやんか、自分?

 提案した後で、呑まへん! って言われんのも嫌やしな。

 呑むって言うてくれたら、そちらの質問にも全て答えさせてもらうし」

「判りました。無条件で受け入れましょう。……レオ丸学士なら、此方が呑めない提案をしないでしょうしね」

「おおきに! そう言うてくれると思うたわ」

「それで、どんな提案を呑めば良いんですか?」

「ま、それは後で良いやん。ほんで、何から答えたらエエ?」

「では提案は、後でお伺いしましょう。一番聞きたい事を最初に聞くのも、野暮ですので……。

 それでは最初に、<大地人>が<NPC>では無く、<人間>であると気づかれた理由から、お聞きしましょうか?」

「え? そんな事からかいな?」

「ええ。レオ丸学士の発想の源は、私の専門外ですので、是非お聞きしたいですねぇ」

「そやなぁ。どう説明したらエエかな。……人間が、他の動物と一線を画して違う理由って何やと、ゼルデュス学士は理解しとる?」

「そうですね。“文化”が有るか無いか、でしょうか」

「ほな、“文化”の定義って何や?」

「“文化あるいは文明とは、その広い民族学上の意味で理解されている処では、社会の成員としての人間によって獲得された知識、信条、芸術、法、道徳、慣習や、他の色々な能力や習性を含む複雑な総体である”とは、文化人類学の父とされるタイラーの定義ですが。

 原文だと、

 “ Culture and Civilization, taken in its wide ethnographic sense, is that complex whole which includes knowledge, belief, art, morals, law, custom, and any other capabilities and habits acquired by man as a menmber of society ”」

「……よう、そんなん覚えてんなぁ。印度人も吃驚やな。ワシは、“知識”の次は“信仰”って覚えていたけどな。

 さてや。ワシは、人間が他の動物と違うて獲得した“文化”の正体は、“信仰”やと思うとる。

 今、自分が言うたタイラーの定義で語られている“芸術”“法”“道徳”“慣習”の全てが、“信仰”から派生したと、ワシは理解してんねん。

 んで、その“信仰”ってのは、“畏怖”と“感謝”から成り立つと考えとる。

 “畏怖”が有るから、“法”と“道徳”を守らなアカンと思う。

 “感謝”が有るから、その喜びを“芸術”で表現しようと思う。

 “信仰”が有るから、それを続けるために“慣習”が生まれる」

「なるほど。……そう考えましたか」

「そや。ほんで“畏怖”ってのは、大自然の驚異の前の無力な自分、とも解釈出来るけど、ワシは“死”と考えとる。“有るものが失われる事への恐怖”、って奴やな。

 一方で“感謝”はやな、“生”あるいは“命”と考えとる。“有るものが有る事の有難さ”、やな」

「で、それが<大地人>が<人間>である事と、どう繋がるんですか?」

「この世界ってマジで神様がおるやん? つまり“信仰”は有る訳やんか。

 ほな、“祭祀儀礼”の一環として“葬祭儀礼”は存在するんやろうか? って思うたんや」

「それで、ヒラノキレ庄に?」

「ああ、そうや。どえらいハプニングのオマケつきで、ポロリは皆無の場所やったけどな。

 ま、それはさておき、や。

 動物やったら、家族や仲間が死んだとしても、弔いは何かせぇへんやん?」

「つまり、<大地人>が“葬祭儀礼”を行っていたから、<人間>であると確信した、と」

「そう言うこっちゃね。ネアンデルタール人も埋葬時に、献花してたそうやん。

 ……処でゼルデュス学士は、どんな思考ルートで確信したん?」

「“経済活動”をしていたから、ですね。金貨を使い売買行為をするのは、実に人間的でしたから」

「なるほどなぁ」

「別にシナリオの一環でもなければ、ルーチンワークでもなさそうでした。

 それで、自分も必要のない買い物をしてみましたが、現実の商店街で買い物するのと、何ら変わりはありませんでしたよ」

「そっちは全然、気にも留めなんだなぁ」


「次にお尋ねしたいのは、レオ丸学士の目的です。

 何故に身銭を切ってまで、あんな大掛かりなイベントを仕掛けたんですか?」

「笑顔を隠して涙のお別れをした昨晩、言うたやん。

 あの風景を見たかった、ってさ。

 <冒険者>である我々の<人間>らしく美しい姿、を見たかったんや」

「それだけですか?」

「後は、友達らが居心地よく過ごせるようにしたかった、かな。

 ……泥縄式の、実にお粗末なやり方やったけどな」

「泥縄式の割りには、格好がついたと思いますが?」

「それは、自分らに丸投げしたからやん。

 自分らが何から何まで、キチンと整えてくれたからやんか」

「有難うございます、と一応言っておきます。

 レオ丸学士も、貴重なアイテム類を賞品として多数提供されたんですから、もっと自分を誇っても良いと思いますが?」

「湾岸戦争時の日本のように、金は出しても感謝はされない立場、で十分やで。

 実務は何もせえへんかったし。

 それに、提供したアイテム類はどれもこれも不良在庫やったしな。

 <ハムサ・カフの水晶球>かて、中東サーバで手に入れたはエエけど、どう使うたらエエやら判らんモンやたしなぁ。

 ゼルデュス学士が、<玉造神のコンタクトレンズ>を所持してへんかったら、単なる水晶玉やもんな」

「まさか、リンクして中継カメラになるとは、思いもしませんでしたね」

「このセルデシアって世界は、ホンマに“驚異の部屋(ヴァンダーカンマー)”そのものやね」

「さて、それで。『ウメシン・ダンジョン・トライアル』で、目的は達成されましたか?」

「一応、秩序らしきモンは出来たやろ?

 あんだけ一体感を持ってしもうたら、少なくともミナミの近辺では、もう<PK>をする奴は居らんやろう。

 ……麗港シクシエーレから西とか、ナゴヤ辺りとかは、判らへんけどな。

 ギルド間の、特に戦闘系ギルドのヒエラルキーも出来たし、万々歳やったわ!」

「レオ丸学士の、お望み通りの、ね」

「自分らの、望まん通りの、な」

「……私は別に、誰が勝とうが負けようが、どうでも良かったんですが」

「ほな、言い直そう。……自分が提携している相手の、望まん通りやな」

「私は別に、提携も連携もしているつもりは、まだ有りませんが」

「要請は、されとるんやろ?」

「懇願は、されてませんのでね」

「条件が折り合わんか?」

「安売りするほど、お人好しではありませんから」

「なるほど、な。まぁ、それはそっちの話しやから、置いとこか。

 んで、話を戻すとや。

 自分にモーション仕掛けとる女の子らに、入れ知恵された張りぼてエリートより、戦闘バカが頂点に居った方が、まだマシやとワシは思うけどな?

 アイツは横柄で横着モンやけど、横暴ではないしな」

「確かに。ガチガチの理想主義者が、上から目線でものを言う事ほど、腹が立つモノはありませんからね。

 それはそうと。

 <ハーティ・ロード>のギルマスは、どうして参加しなかったんでしょうね?」

「“売られた喧嘩は、なんぼでも買うが、用意された試合には興味無い!”ってさ。

 今頃は、どっかに遠征しとるんちゃうかな?」

「“わざわざ、正々堂々と競える試合を用意した”と、説明されたんですか?

 それでは参加しませんよね?」

「そやねぇ、誘い方を間違えたわ」

「“物事は正しく言おう”と昨日、言ってましたよね。わざと、誘い方を間違えたんでしょう?」

「いやぁ、うっかりと、言葉の選択を“間違えた”んやわ。

 大失敗やったわな、ホンマに♪

 アギラが参戦してたら、ナカルナードの優勝も無かったかもしれんなぁ?

 いやはや、アギラの勇姿が見れんで、実に誠に残念やったわなぁ!」

「なるほど、……そういう事にしときましょうか」

「そやけど、ホンマの勝者は、自分ら大会運営本部やで」

「ほう?」

「文化祭や学祭を経験しとるプレイヤーがほとんどやろ、<冒険者>って?」

「旅行や合コンの幹事経験者もいるでしょうね」

「それに、現にギルマスしとる奴らは、身に染みて理解しとるやろ。

 <主催者><仕切り役>がいつの世でも、一番大変やってな!」

「だから私達、運営側が真の勝利者だと?」

「韓信や夏侯嬰よりも、蕭何の方が偉いって、劉邦も言うてたやん?」

「“剣履上殿”“入朝不趨”“謁讚不名”の権利でも、与えてくれますか?」

「ワシは太祖みたいな、大層なモンやないで♪」

「そうですね。レオ丸学士はリーダータイプでは、ありませんしね」

「うっわ! 会心の駄洒落をスルーされた! 本日のガッカリ第二弾やな。

 大体、自分に立場と権利を与えてくれる人を決めるんは、此れからやろ?」

「恐らく十日間くらい時間をかけて、色々と調整をしながら決める事になるでしょうね」

「清洲会議か? コンクラーベか?」

「小田原評定にならないよう、鋭意努力しますよ」

「ま、世界の片隅で、全てが上手く行くよう祈念しとくわ。

 多分、拙い方向に行くやろうけど……なぁ?」

「出来れば私の帷幄で、そうならないように尽力して欲しいんですけどね?」

「それをしたら、ナカルナードの気を損ねるし、カズ彦くんに顔向けも出来んようになるし。

 更に言や、誰かさん達の走狗になるんは、嫌やしな。

 見せしめに煮られたくはないもん、ワシは」

「直ぐに神殿で復活出来ますよ」

「わぁ、それなら良いか! って言うと思うか!?」


「それで、ミナミを出られて予想通りに、<ヘイアンの呪禁都>への進路を取られた訳ですが、此れから先はどちらへと向かわれるんですか?」

「<ヘイアンの呪禁都>見物が済んだら、<ニオの水海>経由でナゴヤかな」

「『東海道中膝栗毛』の往路で、ゴールはアキバですか?」

「<書庫塔の林>か、<荊の禁書館>か、魔法都市ツクバも心惹かれるなぁ」

「どれを採っても、レオ丸学士らしい終着地点ですね」

「ホンマは<妖精の輪>を使うて、北欧サーバのロンデニウムにある、<グレートコレクションズ>に行きたいねんけどなぁ」

「西欧サーバのセブンヒルや、ヴィア・デ・フルールも、良いですね」

「中東サーバのイスカンダリアにある<ムセイオン学院>も、もう一遍くらいは行きたいなぁ」

「何年計画で移動されるつもりなんですか?」

「さぁなぁ、元の現実に戻れるまでは、日々旅として旅を住処とす、でもエエかなってな」

「古人と同じく、旅に死す予定ですか?」

「いやまぁ、それぐらいしてでも、会いたい存在に会えるかどうか……」

「会いたい存在、とは?」

「此の、セルデシアを創造した神様に、や」

「それは、アタルヴァ社、でしょう」

「元の世界では、な。……ほな、この世界では、どうやろう?」

「今の世界で、ですか?」

「<神代>は一体、いつ始まったんやろか?

 <神代>を始めたんは、何処の誰何やろうか?」

「ゲームでも語られていませんでしたね、そう言えば」

「ゲームを作ったんが、一神教の国の人達やからな。天地創造をした原初の神を、想定してるはずやねん、多分な……」

「それで、会ってどうするつもり何です?」

「そりゃ勿論、帰る方法を聞くためやん。

 此の世界を仕切っている神様やったら、それぐらい知っているやろ?」

「では、<トライスター海神の社>などを廻られた理由は、もしかして」

「更に上位の神様の居場所を、聞くためやん。……<ウェンの大地>のサウスエンジェルまで、気張って行かなアカンのかなぁ?」

「そんな事を、考えておられたんですか」

「まぁ興味半分、いや興味が九割九分かな?」

「学士の一分、ですか」

「それに、のんびりウロウロしてても、摩訶不思議に出会えるし。

 そーいや、此処に来る前にな、フィラメンツ竹林圏でワシの記憶にない、恐らくゲーム設定にも存在してへん、世にも奇妙なモンスターに会うたで!」

「ほう?」

「残念ながら、チラリとしか見てへんから、はっきりと断定は出来ひんけど、な」

「それは、本当ですか?」

「疑うんなら、調べてみ。……自分は会わへんかったん? ワシが寝ている間に、メッチャ早起きして、ケイハン街道を通った時に?」

「私は陸路を使っていませんので」

「あ、そうなん」

「ゆっくり寝て、ゆっくり朝ごはんを食べてから、これを使って空を飛んで着ましたので」

「あ、そうか。ゼルデュス学士は、<グリフォンの笛>の所持者やったな」

「まぁ、これで予想が外れてレオ丸学士が此処に来なければ、とんだ間抜け者でしたが」


「さて、レオ丸学士の口も滑らかになって来たようですので、そろそろ教えて戴きたく存じますが。

 会得なされた<最終奥義>の、本当の内容を」

「<免許皆伝>、いや<口伝>ってか。

 ……どうでもエエけど、誰に認可されたんや、<口伝>って!?

 やっぱ、どっかに神様が居って、<秘伝>を究めた瞬間に、

 “You gat a KUDEN!!”とか言いよんのかな?

 どう思う、ゼルデュス学士?」

「……私が知るはずないでしょう」

「声が怖いな、ゼルデュス学士。ほな、ワシも真面目に答えよか。

 自分も知っての通り、会得したんは、正味<大災害>でこっちに着てからやな。

 せやけど、理論構築は十年くらい前からやったと思う」

「そんなに、前からですか」

「<大英知>の宴会で、皆に漏らしたんは去年の冬が、始めてやたっかなぁ」

「そうでしたね。面白い事を考えるな、と思いましたよ」

「ふと、な。<外観再決定ポーション>について、<せ学会>の連中とあーだこーだ喋ってた時に、外観を変えんでも見掛けを変えたらって、思い至ったんやわ」

「ほほう」

「随分前の話やで。ブラブラとなサカイの廃墟を更に南へ下った、ドッグバウ山の辺りに行った時の事や。

 ウロウロとしてる内に、<シノダ葛の若葉>の群生地を見つけてな。

 これ幸いと考えなしに採集したんやけど、あれって<外観再決定ポーション>の主原料やん?」

「そうでしたかね?」

「そやねん。ほな、<シノダ葛の若葉>だけを単体で、弄くり回したらどうなるんやろって思うてな、<調剤師>職をやってる奴に頼んで濃縮パウダーにしてもらってん。

 勿論、<大災害>前の話やで。

 ヒラノキレ庄で披露した<竜牙兵(ドラゴントゥースウォーリアー)>は、そのパウダーを<多頭竜(ヒュドラ)>の牙に振り掛けて、普通に<従者召喚・スケルトン>をしただけや」

「それだけじゃ、ないでしょう?」

「後は、この本のお陰やな」

「<大学者ノート>? それは一体何ですか?」

「公式の<エルダー・テイル>では、絶対に存在が許されへん、禁書やわ」

「ルール違反って、奴ですか?」

「卑怯者の飛び道具、って言うべきかな?」

「作麼生!」「説破!」的な、内容が有る様な無い様な問答をさせてみました。

次回も続ける予定です。

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