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第伍歩・大災害+69Days 其の伍

 現時点では結論が出ないと判っている事を基にして、ウダウダと考えるんは結構大変でした。

 だもんで、今回の話はすっごくウダウダしています。

 多分、読むのがすっごくかったるいでしょう。

 一先ずはお詫びを(平身低頭)。

 まるで全てのエネルギーを使い果たしたみたいに……って、多分そーなんやろうけど。

 <変異女王蟻(ゼムアント・クィーン)>が金貨の山脈と共にドロップした<迷宮の真核(ダンジョン・コア)>は、綺麗さっぱり消えてしもうた。

 何でやろう?

 何でもう一個出てきて、……出て来た途端に消滅したんや?


 不っ思議だな、不っ思議だな、はてさてさぁ~て、と。


 つらつらと今の状況を鑑みるに最適……かどーかはさっぱりやけど、取り敢えず三つばかし材料があるさかいにコレらを基にして、ちょっくら胡散臭い仮説を立ててみっか?

 材料は以下の通りでござい。

 一つ目は、<変異蟻(ゼムアント)>って存在。

 二つ目は、其の蟻んこの、“戦争屋(ウォーモンガー)”的な行動内容。

 三つ目は、もう一つの<迷宮の真核(ダンジョン・コア)>。

 何処かの寄席の三題噺みたいやけど、……まぁエエやろう。

 先ずは、一つ目の材料から解析してみっか?


 “此の世界(セルデシア)”には、モンスターが矢鱈と居りよる。

 だもんで、記録魔で設定ディレッタントのワシかて、其の種類の総数……実数でもエエけど、が、一体全体どんくらいおるんかは、正直判らん。

 数十なんか、数百なんか、……まさか一万体と二千体って事はないやろう。

 八千体でも多過ぎるし、一億体と二千体って……もうエエか。

 兎も角、どんだけ居るんかは想像もつかへんが、ワシが此れまでの<エルダー・テイル>プレイヤー人生で遭遇したんと、“此の世界(セルデシア)”で遭遇したんとを足したとて、全体の半数にも満たへんのと違うかな?

 ただ其れでも、や。

 自分がテリトリーにしてた場所に出るモンスターは、100%と言っても過言やないほどには把握しとる。

 せやから、八幡市……やのうて<フィラメンツ竹林圏>で<万年竹(バンブートレント)>に遭遇した時は、正直ビビった。

 そら、そーやわな。

 通い慣れた道すがらで「あ、トゲトゲがおるわ」って思うたら、ソレがトゲナシトゲトゲやった! ……みたいな感じやってんから。

 いや、どっちかゆーたら「あ、新種や、トゲアリトゲナシトゲトゲを発見!」、ってなトコか?

 まぁ何れにしても、おるはずない奴に遭うたら誰しもが吃驚仰天するやん。

 ホンで脳内検索をしてみたけど……ゼムアントに似たモンスターって、記憶にあらへんなぁ。

 そもそも、<エルダー・テイル>で遊んでいた時に、蟻がモチーフのモンスターと遭遇した事はねーけど、噂には聞いたよーな気がするが、少なくともゼムアントってな名前やなかったはずやし……。

 って事は……つまり……ゼムアントは、ゲーム由来のモンスターやのうて、“此の世界(セルデシア)”由来のモンスターって事でエエんかな?

 そーやとしたら……バンブートレントも、そーなんかな。

 もし、そーやとしたら……。

 学校の授業で習うた、1492年のコロンブスの新大陸発見みたいやな!

 今の学校ではどう教えてるんかは知らんけど、ワシが学生やった頃はそう習うた。

 ……正確を期すにゃらば、新大陸到達やわなぁ。

 未知なるモノは突然現れる訳やなく、既に其処にある。

 其れを確認し、認識する者が居て初めて、其れは其処にあると認知される、ってな。

 つまり、や。

 <エルダー・テイル>ってゲームやと、プログラマーが設定せぇへん限り、存在しないモノは存在せぇへんけど、“此の世界(セルデシア)”が実存する未知なる世界であるならば、遭遇せぇへん限り確認出来ひんモノが此処には存在しているって事になる。

 ……此れからも、未知なる何かに出くわす可能性が大、って事か。

 更に言うたら。

 “此の世界(セルデシア)”の生態系って、どーなってんのやろう?

 大地人、家畜、野生の生物、モンスター、亜人、冒険者。

 最初の四つが“此の世界(セルデシア)”の原生生物で、後の二つが別世界からの外来種やけど……。

 さて、其処でやけど。

 “生物”とは何ぞや?

 一般的にゃあ、“自己増殖能力”“エネルギー変換能力”“恒常性維持能力”“自己と外界との明確な隔離”などが重要定義として挙げられるんやけど。

 “進化”ってのも重要な要素やんなぁ。

 せやけど“此の世界(セルデシア)”は、聖書で語られてるみたいに最初から完成品ばかりが並べられた陳列棚みたいに思えるんやけどね?

 元の現実やと、ワシら人類は猿から進化した生物やわ。

 残念ながら“レプティリアン・ヒューマノイド”と称されるヒト型爬虫類も、“恐竜人(ディノサウロイド)”も想像上の生き物でしかあらへんのやさかいに、元の世界の人類種は、猿から進化し猿人を経た種族しかおらへん。

 処が、“此の世界(セルデシア)”における人類は、一種類ではあらへん。

 ロング・ロング・タイム・アゴーの<神代>の事は不明やけど、少なくとも三百五十年前には四種類の人類がおった。

 <ヒューマン><アルヴ><エルフ><ドワーフ>の、四種や。

 此の四種の祖先は、ぜーんぶ“猿”の一択なんやろうか?

 生存競争から<アルヴ>のみが強制的に脱落させられ、僅かな生き残りである<六傾姫(ルークィンジェ)>が最後っ屁とばかりに新たなヒト型生物を召喚し、其れに対抗してノーストリリア計画が発動して、<猫人族><狼牙族><狐尾族>と<法儀族>が生み出され、<ヒューマン>と<アルヴ>の混血である<ハーフアルヴ>が此の世に登場する。

 今“此の世界(セルデシア)”には、八種類の人類と沢山の亜人という、ヒト型生物が一粒万倍みたいに満ち溢れとる。

 ざっと歴史を振り返れば、其処には“自然”な“進化”の痕跡は見つからへん。

 実に人為的な、システマティックな結果やわ。

 まぁ、生物の環境対応による“変化”や“変容”はあったとしても、高々数百年で単細胞やない霊長類が“進化”するはずないわな。

 死んだら、骨も残さず消滅してしまうんやから、化石なんて残ってへんし、確かめようもあらへんさかい、あくまでも推測の域を出ぇへんけどね?

 そーいや。

 ゲームやった頃は、<盗賊>とか<山賊>とか<海賊>とかの、<大地人の荒くれ者>達は<モンスター>と同じ扱いで、討伐対象やったけど。

 “此の世界(セルデシア)”における<大地人の荒くれ者>達は、果たして<大地人>なんやろうか? 其れとも<モンスター>なんやろうか?

 どっちや?

 <大地人>は死に際して遺品を残すが、<モンスター>は成敗されると戦利品をドロップする。

 ほな、<大災害>後の現在、<大地人の荒くれ者>を倒したらば、遺品が残るんか、其れとも戦利品がドロップされるんか、…………どっちや?


 ……何の話やったっけ?

 ああ、そうや、ゼムアントの話やった。

 ゼムアントは其の名の通りに、“変異”しくさりやがった。

 あれは、単なる“変異”やったんやろうか? 其れとも“進化”の途上やったんやろうか? 果たして、果たして……。


 うん、判らん!

 次、行ってみよー、次!


 二つ目の材料、……ゼムアントは何故あないに好戦的やったんやろうか?

 単なる“縄張り意識”やったんかな?

 其れとも、三つ目の材料と関連しとるんかな?

 関連しとらんとすれば。

 恐らくは、新たな要素を積極的に取り込み、より優れた“変異”をするためなんやろう、な。

 <大地人>よりも強い<モンスター>、<モンスター>よりも強い<冒険者>。

 其れを“変異”の要素として取り込もうとして、襲いかかって来た?

 いや、待てよ。

 ダンジョンの中で、ゼムアント・クィーンと戦った冒険者は、ワシだけや。

 ハニャア君達は、戦ってへん。

 彼らが戦うたんは、地上に出て、変異してからや。

 正確に言うたら、ワシも変異前とは戦ってへん。

 ワシら冒険者が戦った相手は、下っ端の兵隊蟻だけや。

 いとやんごとなき女王陛下と干戈を交えたんは、<鋼尾翼竜(ワイヴァーン)>とかやん。

 って事は?

 下っ端と雲上は個々として独立しておらず、全体が一個の生物として成立しとるモンスターやったんやろうか?

 珊瑚とか、管クラゲ類みたいな、無性生殖により増殖した多数の固体が接続した“群体”やったとか。

 もし、そーならば。

 此れがホントの、“群体蟻”!

 ……山田君、座布団全部持って行っとくれ! ってか?


 あるいはやっぱり、縄張りを荒らされてムカついただけとか。

 『おはよう!こどもショー』のワンコーナーで悪逆非道を繰り広げた正義の味方の、“真っ赤なアイツ”みたいに?

 うむ、其の可能性も捨てきれへんな。

 可能性って言うたら、第三の選択……やのうて三つ目の材料とリンクした結果、ってぇのも考えられるんやけどねぇ。


 さて、此の世の森羅万象には、“共食い”って行為がありよる。

 同類の生物が互いに食い合う行為、や。

 大雑把な説明をすれば、草食の生物だけはしない、って一般には思われとる行為やな。

 分類上は草食動物にカテゴライズされとるカバも、仲間の死体を食べる事があるとか。

 仲間だけやなく多種の、インパラを捕食した事例もあるそうな。

 とある生物学者の意見によれば、


 “自分と同じ種の個体を食べる事は、大いなるメリットがある。

 自分と同じ種には、必要な栄養素がすべて含まれているのだから”


 雑食性生物はより顕著で、様々な理由で自分と同じ種を食べる事がある。

 配偶行動の一環で、雌が雄を餌として食べる。

 繁殖時に、孵化した幼体が親を食べたり、未受精卵を餌として食べたりする。

 成長段階で、大きく成長した個体が自分より小さい個体を食べる。

 単に、食用に適していたために食べたりする。

 生活圏が過密になった結果、全体のバランスを調整するために、仲間を食べる。

 交尾の際にオスを食べる生物で有名なんは、カマキリ、蜘蛛、サソリやな。

 人間に近い種のチンパンジーでさえ、仲間を食料としたりする。

 まぁ……人間にも、人食い習慣(カニバリズム)は紀元前から現代まであるしなぁ……。

 カニバリズムと言えば、蟻なんかの社会性昆虫が行う“種内捕食”にも当て嵌められたりするんやけど……、今回のもソレなんかな?

 あるいは、“共食いモルフ”現象が起こったんか?

 生活圏の密度が高まり過ぎると同じ種を捕食し易いように頭部が異常発達した個体が誕生する、ってぇのが“共食いモルフ”やけど、そーなるんは両生類だけやしな。

 しかも生殖能力ゼロの個体やし、……違うか。

 って事は、“種内捕食”が最有力候補やなぁ。

 ホンで今回の一件にソレを当て嵌めるとするならば、何を以って同じ種と比定するかと言や、そりゃー勿論、<迷宮の真核(ダンジョン・コア)>や。


 ゲームの都合上……って言うたら実も蓋もない話やけど。

 ファンタジーゲームに登場するダンジョンって、そないに数は多くあらへん。

 恐らくは、一つの区域に一つずつ……あるかないかやろうな。

 容量とか、プログラミングとか、制約が多過ぎるコンピーターのゲームや言うても、冒険の舞台として便利なダンジョンを、そないにボコボコと配置は出来ひん。

 プレイヤーが、ダンジョンに潜る理由は、其処にお宝やアイテムがあるって理由だけやなく、ゲームをクリアするために必須の行動やから、や。

 因みに。

 ダンジョンってのは、古フランス語で“天守”を意味する単語や。

 其れが転じて“地下牢”になり、いつしか“地下迷宮”になってしもうた。


 ……何の話やったっけ?

 ああ、そうや、ゼムアントがワシらを執拗に襲いかかって来た理由や。

 ゼムアント(あいつら)に戦闘教義(ドクトリン)があるとは思えんけど、少なくとも何らかの恣意的な、いや、根源的な生存本能に由来する行動指針があるはずや。

 より強いモンスターになるため。

 より広範な生存圏を確保するため。

 どちらか、なんか?

 其れとも、両方ともなんか?

 もしかしたら、其の両方の目的すら二次的なんかもしれへん、って事は考えられへんやろうか?


 ふと、思いついたんやけど。

 ゼムアント・クィーンは、別の要因に左右されてたって事はないやろうか?

 別の要因が何にか? って言うたら勿論、<迷宮の真核(ダンジョンコア)>にや。

 そもそも、<迷宮の真核(ダンジョン・コア)>って何やろう?

 純粋にアイテムなんやろうか?

 もしかしたら、別の何かなんかもしれへんなぁ。

 別の何か……が、何なんかは正直判らんけども、判らんなりに考えてみっか。


 <迷宮の真核(ダンジョン・コア)>の能力は、モンスターを産み出し続ける事や。

 例えるならソレは、全自動の工場とやる事は一緒やわなぁ。

 エネルギー源と原材料は、<オーケアノス運河>が運んでくれよる。

 しかも<オーケアノス運河>ってヤツは、涸れる事ない無尽蔵の補給源やが、リンクしてなきゃどーもならん。

 リンクするためにゃ、弧状列島ヤマトの大地と密着し続ける必要性があるし、より濃密な状態を維持したいにゃら、少しでも地下に潜り、<オーケアノス運河>との距離を縮めんとな。

 だもんで、<迷宮の真核(ダンジョン・コア)>は概ね、地下迷宮(ダンジョン)の最深部に設置されとる……はずや。

 とは言え、具体的な確認例が壊滅的なくらいに皆無やから、あくまでも推測の域の暗中模索でしかないけどなぁ。

 ほいで、と。

 遺伝子にしても何にしても、此の世の全ての事象は何らかのプログラム……のようなモンが介在しとる。

 より正しく言うにゃらば、“其れが其れであるために必要な方程式”やろうか?

 <迷宮の真核(ダンジョン・コア)>は、<迷宮の真核(ダンジョン・コア)>であり続けるためには、モンスターを産み出し続けんとならん。

 カラクリ屋敷形式(トラップハウス)は、まぁ、別の理屈があるんやろうけど、一般的なダンジョンはモンスターが一定の法則で出現し続けるモンや。

 其の法則をコントロールするんが、<迷宮の真核(ダンジョン・コア)>の役割やろう。

 過不足なく、常にモンスターを安定供給する全自動工場。

 全てがゲームやった頃に<迷宮の真核(ダンジョン・コア)>を動かしていたんは、ゼロと1とで構成された実にデジタルなプログラムや。

 せやけど今は、別のプログラム……別の法則で動いているはずやわ、な。

 其れは<迷宮の真核(ダンジョン・コア)>だけやなく、モンスターにも言える事やん?

 モンスターにも社会性があるヤツと、ないヤツが居る。

 亜人と同じカテゴリーには入れられずとも、“群れ”って言う集団生活するモンスターが何種類もなぁ。

 有名な処やと、<鷲獅子(グリフォン)>とか<下水ネズミ(ソウワーラット)>。

 個々で自我を持つ生物は皆、“群れ”をなせば必ずリーダーが生まれよる。

 リーダーが生まれれば、必ず“群れ”としての“意識”が派生しよる。

 “意識”ってぇのに注目すりゃ、また別のアプローチが出来るわな。

 二十一世紀のアメリカ西海岸の、とある大学の研究によるにゃらば。

 生物の“意識”ってのは、中脳とか言う中枢神経系に関連しとるんやそうな。

 中脳は、視覚や聴覚にも関係しとるんやけど、其の働きは人間も昆虫も一緒やねんと。

 昆虫は体が小さいさかい、必然的に脳も小さいモンしか持っとらんけど、其れが丸々、中脳と同じ機能を所持しとるらしい。

 記憶や認識なんかの“意識”の別の側面を繋ぎ合わせて、意思決定に利用しとるらしいねんなー。

 とは言え、脊椎動物に比べりゃ昆虫の脳の作りは、ごっつぅ単純やけど。

 其れでも昆虫は、ワシら人間に及ばんけど、其れなりに其の些細な“意識

”でもって、世界を認識しとるらしい。

 ゼムアントは昆虫やのうてモンスターやし、サイズもワシらと同じくらいやが。

 ……果たして、“意識”はどーやったんやろうか?

 サイズに関係なく、昆虫並みの“意識”で世界を認識し、生存本能を構築するプログラムのような何かに従って、逞しく日々を生きているだけなんやろうか。

 う~~~む、脳みそがグルグルしてきたなー。

 やっぱ、モンスターと動物の差が何なんか判らん限り、思考が先に進まんわ。

 序に言うたら、<迷宮の真核(ダンジョン・コア)>も、な。

 ゼムアント・クィーンは、アイテムとしてドロップしたんやろうか?

 いや、違うよなぁ。

 恐らくは、何処かのダンジョンの最奥に設置されていたんを、ゼムアント・クィーンが取り込んで、癒着してしもうたんやろう。

 其のダンジョンが機能していたんか、機能停止中やったんかまでは定かやないけど、兎に角、<迷宮の真核(ダンジョン・コア)>はゼムアント・クィーンの内部に宿ってしもうた。

 其れが、“変異”の最初やったんやろう、な。

 もしかしたら、単なる蟻型モンスターでしかなかったんが異物(ダンジョン・コア)を取り込んだ結果、“変異”した……?

 うむ、一番腑に落ちる仮説やな。

 蟻型モンスターが<迷宮の真核(ダンジョン・コア)>を取り込む事によって、ゼムアントに変異し、最短距離で生存競争の勝者となるべく更なる“変異”を求めて、より確かな“適者生存”の道を選択するために?

 いや、ちょいと仮説がズレたかいな?

 十九世紀を生きはったハーバート・スペンサー御大が提唱しやはった、“社会進化論”ってな概念は、社会学の枠を打ち破って世界に蔓延しよって、“進化”って単語と共に“適者生存”って単語がバラ撒かれた。

 其れにメッチャ感化されたんが、チャールズ・ダーウィン御大やわな。

 “生物の多様性”と、進化における“自然選択”。

 ダーウィン御大の『種の起源』もしくは、『種の起原』において長々と文字を連ねた其の二つの考えを説明する際に、“適者生存”って言葉を引用しやはった。

 生物は常に、生存する環境に適応するように変化し続け、其の結果として様々な形となって現れる。

 多様化した生物は全て環境に対応し続けた結果で、しかも其の正解は幾つも幾つもあるのだ! ……とか何とか。

 せやけど、二世紀後の生物学ではダーウィン御大が世に広めた概念とは、相反する概念が大いに支持されてたりするわな。

 其りは、“運者生存”。

 アジャスト出来たから生存出来たんやなく、ラッキーやったから生き残った、ってな考え方やわな。

 関西の球団から飛び出し、メジャー・リーグで活躍した長谷川投手は、アメリカっちゅー環境に適応するように考えを改めたから、生き残れたって語ってたけど。

 野茂投手やイチロー選手は、日本球界時代に今は亡き名将の仰木彬監督に巡り会うってな幸運に恵まれたさかいに、日本でもアメリカでも大活躍出来たと言える。

 野茂投手がバファローズに入団した時の監督が、鈴木啓示さんやったら?

 イチロー選手がブルーウェーブ在籍時の監督がずーっと、土井正三さんやったら?

 つまりや。

 “エライから生き残れた!”んか?

 “生き残れたからエライ!”んか?

 ……ワシにゃあ、後者の“無事是名馬”的な方が自然に思えるなぁ。


 って事は、さ。

 ゼムアント・クィーンが其のえげつない腹ん中に、<迷宮の真核(ダンジョン・コア)>を収めとったんも、偶然って事やろうなぁ。

 ホンで偶々、バグり捲くった挙句に機能停止させられとったポンコツ・ダンジョンの直ぐ傍に巣作りしたんも、偶然。

 其処に、ワシが阿呆面さげてやって来て、再起動させたんも偶然……ってか?


 んな、都合のエエ偶然が重なるかい!

 いや……世の中には、そんな都合のエエ偶然もちょいちょい起こるんよなぁ。

 超有名な事実でゆーたら、ペニシリンの発見がそーやわな。

 まぁ、こーゆーたらアレやけど。

 もしワシに医学的な知識と技術があったとしても、過去にタイムスリップしたとて、ペニシリンを再現する自信は此れっぽっちも、ないなー。

 絶対に、無理やわ。

 二回連続で宝くじの一等に当たるくらいに、無理やわ。

 即ち今回の事は……組違い賞が当たったくらいのラッキーやった、って事か?

 ……全然、嬉しないなー。

 せめてワシがアリクイやったら大喜びやねんけどなー、せやけどアリクイが食うんはシロアリで、シロアリはゴキブリの仲間やから蟻やないし。

 やっぱ、嬉しないなー。

 蟻ん子を食ったりするんは、チンパンジーとかやったなぁ。

 って事は、ワシは人間様から猿にランクダウンかー。

 嬉しない事、此の上ないなー。



 ……何の話やったっけ?

 ああ、せや、確か……トルネード投法と振り子打法の有用性やった、な。

 先の大戦の最中、二十八歳で戦死なされた楠本保選手は、社会人野球チームの全高雄に所属してはったんやけど、此の偉大なる野球人がトルネード投法の嚆矢とされてはる。

 1932年の夏の甲子園第十八回大会、……此の頃は高校野球とは言わへんで全国中等学校優勝大会って名称やったけど、其の時に三十六イニングで六十四個の三振を奪っていやはる。

 翌年の第十回センバツ大会では、準々決勝で後の伝説的大投手の沢村栄治御大にも投げ勝っていやはる!

 全身の筋肉の反発作用を最大限に利用した投げ方は、凄まじいまでの球威と球速でもってマウンドから一気に、捕手のミットへとまっしぐら!

 モーションがブレ易いためにノーコンになりがちとか、牽制がし辛いとか、二段モーションとしてボークを取られ易いとか、そもそも強靭な下半身と絶妙のバランス感覚がないと習得出来ないとか、デメリットも多いけど!

 常時バッテリーを組む捕手は、指の骨が変形するくらいの衝撃を受けるらしい其の脅威の剛速球を投じられる投法は、実に魅力的やわ!

 指が変形、やで!

 変形……変形……へんけ…………違うねん、野球の話は、今は関係ないねん。


 ああ、危な。

危うく……記憶と思考の逆スパイラル現象に陥るトコやった!

 そんな現象はないけどなー。

 さてさて、本題に話を戻すべし。


 “此の世界(セルデシア)”に“進化”ってな概念があるんかどーかは、現時点では確かめようがあらへんけども、似たような別モンなら存在しよる。

 “レベルアップ”と“クラスチェンジ”やわ。

 一例を挙げりゃあ、<緑小鬼(ゴブリン)>か。

 <緑小鬼の百鬼長(ゴブリン・キャプテン)>と、<緑小鬼の将軍(ゴブリン・ジェネラル)>。

 <緑小鬼の呪術師(ゴブリン・シャーマン)>と、<緑小鬼の霊媒師(ゴブリン・メディウム)>。

 下位個体と上位個体の差は、単なる肩書きの変更だけやなく、HP・MP・体格や見かけがガラリと変わってしまいよる。

 モンスター……いや、亜人か……まぁカテゴリーは一纏めになるさかいにモンスターでエエか……、モンスターとしたら全く別モンになりよるわ。

 魔法に対する耐性が変わる事もあるし、何より攻撃手段が変わりよるし。

 他にも“進化”の亜種として、<緑小鬼の調教師(ゴブリン・テイマー)>なんてのも居るしなぁ。

 <小牙竜鬼(コボルド)>も種類豊富やし、亜人やない<動く骸骨(スケルトン)>やドラゴンの類もバリエーションがありよる。

 此れらは“進化”の果てなんか、そーやないんか。

 春日三球師匠風に言うたら、“其れを考えたら一晩中眠らんなくなんねん”。

 ……不眠症になった事はあらへんし、此れからもなるつもりはないけどなー。

 ふむ。

 まぁ、何れにしても、や。

 生物は須らく“変化”し続けるし、年月を重ねりゃ其れは“進化”となる。

 “変化”にしろ“進化”にしろ、起こる原因は“偶然”が偶発的に起き続ける“環境”が大きな要因やわなぁ。

 モンスターや亜人も生物の範疇に入れるべき、……なんやろう。

 で、あるにゃらば。

 モンスターや亜人も、刻々と“進化”をし続けるに、ちまいない。

 ワシらの生きてきた元の世界の尺度で言や、すんごく長い時間が必要やねんけど、“此の世界(セルデシア)”やと其の尺度は通用せぇへん。

 なーんせ、時間の概念が違うんやさかいに。

 だもんで、“此の世界(セルデシア)”やと時間をかけた悠長な“進化”やのうて、短時間で発生する“変異”がモンスターや亜人を変えていくんやろう。


 例えば、ゴブリンを例に挙げりゃ。

 最初は単なるゴブリンが、密な集団を作れば個体の強弱で“階級”が生み出され、其れを要因として最も強いモンがゴブリン・キャプテンとなる。

 幾つかの集団が寄せ集まれば、複数居るゴブリン・キャプテンの中の最も秀でたヤツがゴブリン・ジェネラルとなる。

 更にゴブリン・ジェネラルが複数寄れば、其の内の一個体が<緑小鬼王(ゴブリン・キング)>となる。

 強さの種類がHPやなくてMPにゃらば、シャーマンやメディウムに。

 偶々、他のモンスターとの親和性が良ければ、テイマーに。

 ゴブリンという固有種における“変化”は、“進化”とも言えるし、“変異”だとも言える。

 但し、や。

 “進化”であれ“変異”であれ、其れは“偶然”に左右されよる。

 ほいで“偶然”は全ての個体に起こるもんやない。

 って訳で。

 とあるゼムアント・クィーンが“偶然”に遭遇した……<迷宮の真核(ダンジョン・コア)>に出会って取り込んでしまった結果……が、今回の顛末なんやろーな。

 其れと、や。

 <迷宮の真核(ダンジョン・コア)>の特殊性も、影響したんやろーな。


「ああ……、そーゆー事か……」


 ダンジョンは、様々なモンスターを産み出す場所で、其の基となるんは<迷宮の真核(ダンジョン・コア)>って存在や。

 穴倉を掘り続けて巣とし、仲間を増やし生存圏を拡大させる事が大事である蟻型モンスターとは、共通項が多いわな。

 反発しても可笑しないけど、……融和してしもうたんやろうな。

 もし仮に。

 <迷宮の真核(ダンジョン・コア)>がアイテムやのうて生物的な何かであれば、ゾンビ・ファンガスや冬虫夏草みたいな寄生関係になってたんやも?

 せやけど。

 何ぼ考えても、<迷宮の真核(ダンジョン・コア)>はあくまでもアイテムであって、其れ以上のモンでも其れ以下でもあらへん。

 事実、ワシはアイテムとして保有しとるんやし。

 エエとこ“触媒”、……“変化”のための切欠やわなぁ。

 ホンで更なる“進化”を求めて……ん?

 考えが振り出しに戻った、よーな。

 って事は、此れがワシの思いついた思考の果て……って事か。

 まぁ、ワシなりに納得出来たような気がすんな!


「なるほどねぇー」


 謎の水晶ドクロを巡って、一介の考古学者とソ連の秘密部隊がドンパチやらかす映画から生まれた“核の冷蔵庫”みたいな結論やけど?

 でもまぁ、今のワシには……此れが精一杯の思考やな……。

 其れに比べりゃ、さ。

 <迷宮の真核(ダンジョン・コア)>が消滅した理由の方がはるかに推察し易いやな。

 恐らく……いやきっと、能力の限界を超えてしもうたんやろう。

 所謂、エネルギー充填百二十ぱーせんと! を乱発し過ぎたって事やわな。

 其の挙句、第三艦橋だけやなく船体自体が負荷に耐え切れず、見事に轟沈。

 哀れ、英雄の丘行きと相成り候、さらばさらば。

 昔から“無理に通れば道理で苦しい”ってゆーし、な?

 何事も腹八分目が大事って事やんねー。

 ではでは、そろそろと……閉会式の挨拶でもすっか。


「ザッツ・オール・フィニッシュ!! 皆さん、お疲れさんでしたッ!!」

 山本ヤマネ先生の『辺境の街にて』http://ncode.syosetu.com/n3210u/・最新投稿分にて蟻型モンスターが登場して、「おお!」って感動し。

 テラン先生の『アリの巣ダンジョンへようこそ!』http://ncode.syosetu.com/n7186cv/ を熟読して萌えまくり。

 インディ・ジョーンズの四作目を鑑賞して、実感しました。


 今のトレンドは、蟻だ!


 まぁ、ウチでは駆逐しちゃいましたが(苦笑)。

 って訳で、次回で<第伍歩>は終了……出来るんじゃないかな、って思ったりしています。

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