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凄い一家の日常

作者: 龍太

開いてくださりありがとうございます。

「た、助けて妹ー!」


 お兄ちゃんがまた五月蝿く騒いでいる。確かに私は賑やかなのが好きだ。騒音とかも大好きだ。

 騒音フェチって言っても構わないと思う。


「うるさいなぁ。いつものことなんだし行ってくればいいじゃない。異世界のお姫様、今度こそ連れて帰ってくれば? お父さんもそうやってお母さん手に入れたんだし」


 居間から顔を覗かせると足元にある召喚陣から必死で逃げているお兄ちゃんの姿があった。

 数は、あ、今日は珍しい。たったの七つだ。

 悪魔でも呼び出せそうな赤いのから天使でも出てきそうな青いの。よく見てみると全部で七色で虹だ。

 朝からいいものが見れた気がする。


「俺は、金髪爆乳よりも、黒髪清楚な、貧乳が、好きなんだぁ!」


 羨ましい叫びだなぁ。世の男性諸君が聞いたら殴りかかられても文句は言えないよこれ。

 イケメンとは言い難い兄なんだし性格で好きになってくれる人の方がいいと思うけどなぁ。


「はいはい。同じクラスの今野さんでしょ? でも知ってる? あの人昨日告白されてたよ」


 確かお兄ちゃんと同じクラスにいる鎌野って人だったかな。あの人は顔もいいし家も豪邸なんだよね。

 加えて性格は……少し悪いけど。女の子向けのゲームに出てくる俺様系? って言うのかな。

 弟が起きたら聞いてみよう。


「だ、誰に!?」

「鎌野先輩」

「マジかよ……あ」


 絶望した顔のお兄ちゃんは召喚陣に足を合わせてしまって吸い込まれた。んー、橙色かぁ。橙だと何系統の世界なんだろう。

 今回は中世系か、それとも……。とか言ってる間にお兄ちゃんが戻ってきた。


「五年かかったぁ! 記憶消えかかってる!」

「何処系?」

「え、エジプト系だった! 伝説の巨獣を倒したら、神話の巨獣を倒して戦争に巻き込まれて最後は巨獣を蘇らせて大団円!」

「中東系かな。王女様?」

「村娘って、まだ、魔法陣が! が!」


 おー。浮いてる浮いてる、お兄ちゃんが浮いてる。

 開眼系の世界だったのかな。でも浮いてるからって安心できるわけじゃないよね。


「それで、そうだ! 今野さんがかm」

「行ってらっしゃい」


 キリがなさそうなので別の色に吸い込まれたお兄ちゃんを見送ってご飯を食べるのに戻った。

 毎度毎度、逃げられないのにどうしてああも必死で逃げるんだろう。むしろあっちの世界に居た方がいいんじゃないかな。

 でもお兄ちゃんが戻ってこないと色々大変だから嬉しいけど。


「うーん。弟もいつ起きるんだか」


 VRMMOの世界に閉じ込めれてニ年が経つ弟の部屋を見上げる。今は病院にいるから居ないけど。

 でもこれで通算三度目だよ弟。前は三年で、その前が四年だったからそろそろ戻ると思うけど。

 今日の帰りにでも病院に行って盆栽でも置いていってあげようか。もう少し向こうの世界で楽しんでいられるようにって。

 最近の病院も進歩して寝てても筋肉が衰えなくなってるのが凄い。

 けどお兄ちゃんたちには色々起こってて凄いと思う。羨ましいとは思わないけど。

 お兄ちゃんは確かに魔法とか闘気とか、魔法具とか使えてて毎日楽そうだけどさ。あれだけ戦いに駆り出されるのは大変だよ。

 通路でまた叫び声がして、連れ去られる音もした。本当ご苦労様です。


「あ、電話だ」


 首のあたりに埋め込んであるチップが脳内に直接音を届けた。ARディスプレイを開いて、と。


「もしもし? お父さん? 何してるの? うん。うん。ああ、宇宙で銀河大戦? さすが勇者は大変だねー。え、馬鹿にしてないよぉ。それで? どこ? いや、近いと食材の値段上がるしさぁ。お母さんはまた誘拐されたの? お母さん見た目十代前半だもんねー。うん。うん。大丈夫こっちはいつも通りだから。お兄ちゃんは異世界で弟はVR世界。うんわかった。半年以内ね。じゃあその時は全員でご飯だね。はーい。お父さんも身体に気をつけてね」


 あー。結構長話しちゃった。随分遠くで戦争しているんだなぁ。お父さん凄い。仕事だっていうのが凄い。

 私だったら絶対に艦隊戦とか無理だよ。倒れる自信あるもん。


「えーと。お兄ちゃんの朝ご飯はいいか別に」


 全部終わっても夕方か、一時間目が終わる頃だろうし。

 食べるならコンビニで買うか卵かけご飯でも食べると思う。


「じゃあ行ってくるねー」


 玄関まで出て、今日は皆が頑張っていることがわかったから靴を履かずに、汚れない靴下で外へ出る。

 部屋のドアを開けて、とりあえずドカンと一発散弾銃を撃った。おぉ、今日は六匹かぁ。

 溜息をついてドアに鍵をかけてと。

 後ろから迫ってきた黒い生物みたいのをハンドガンで撃つ。弾代お小遣いでまかなうの大変なのになぁ。


「靴を履かずに外へ出れば、境界の向こう側でーすってね」


 足には靴下だけ。お兄ちゃんは多分、靴を履けばある程度は大丈夫だと思うけど。

 半境界の世界は大変だよ、本当。魔法少女じゃないけどその代わりはしないとね。


「さぁて。変な生物ちゃーん。触手ちゃんはちょっとNGね。リリカルイーグルで皆ドカンと一発昇天しーちゃえ」


 星を付けるように言ってから私の手の中にある四十四口径が火を噴いた。レーザーガンじゃ味わえないこの威力、楽しくなる。

 お兄ちゃんは異世界で順調に世界を救ってるし。弟はネットの世界で順調に死人を救ってるし。お父さんとお母さんは宇宙で戦争を調停しようとしてるし。

 なら私もいっちょ、魔物を倒してご近所の平和ぐらいは守りますかね。


 こんな事だって大したことじゃないけど。

 一番大変なのは妹だ。

 私たちはただ戦ってればいいけれど。妹はいつだって日常に居る。非日常を生きる私たちの中で一人だけ日常だから。

 寂しい思いとか、色々な現実と戦ってる。

 私たちがこうしてちょっとだけ頑張るのはそんな妹と少しでも一緒にいたいからだ。


「さあ今日もいっちょ可愛い妹と夕飯を食べるために殲滅しますかー!」


 だから。私は今日も銃を撃って。お兄ちゃんは異世界を救って、弟はVRの世界から皆を解放して、お父さんとお母さんは星を救う。

 皆揃って妹と夕飯を食べるために!

読んでくださりありがとうございました。

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