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「お兄ちゃん、これ何?」

ありさは林の中を流れる小川の一角を指差した。

「ん、なんだこれは?」


真っ黒で、まるで穴が開いているかのような空間がそこにはあった。

川沿いにある苔の生えた大きな岩のすぐ横、ハルとありさはそこへゆっくりと近づいていった。

「これって、こういうオブジェ? それともバグっていうもの?」

ありさが不思議そうに黒い空間を覗き込む。

「オブジェクトって事もなさそうだし…… それにしてもめずらしいな、バグなんて……」


ハルの言う通り、現在ではバグは珍しい。

AIが発達した現在では、不自然なプログラムのミスは基本システムがそれを発見し自動的に修正してしまうからだ。


怖いもの見たさか、それとも好奇心からだろうか、ありさは黒い部分に靴のつま先をつけようとした。

「ちょっと待て!」

ハルの警告は遅かった。

黒い闇に足先が触れたありさは一瞬動きが止まった。

そして、そこから不思議な光が現れたと思ったら、それはありさの足を伝わり彼女の体全体を包んでいった。

白一色に染まり光を放つありさ、やがて光は消え去ったが、彼女自身はその衝撃の為か力なく地面に横たわってしまった。

「ありさ! どうした!」

ハルは横になった彼女の隣に膝を立てて座り、肩を大きくゆすって反応をみた。

「おい! 聞こえるか!?」

大きな声で叫んだが、声は林に響くばかりで彼女は無反応のままだった。

ゲームの中で起きた刺激は、リアル世界のプレイヤーにも伝えられる。

(もしかしたら、ありさ本人にも何か起きているかもしれない……)

嫌な予感を覚えたハルは、すぐにゲームをログオフし現実世界に意識を戻した。


ブレインリーダーを机の上に投げ出し、妹の部屋へ急ぐハル。

すぐ隣の部屋に駆け込んだハルは中に居るありさの様子を確認した。

彼女は椅子に座ったまま、上半身を机の上に力なく伏せていた。

ハルの嫌な予感とは、まさにこのことだった。

両肩を掴んでゆすりながら声を掛けるハル。

「おい、ありさ! しっかりしろ!」

彼女は目を閉じたまま動かなかった。


やがてありさは病院に運ばれた。

意識が戻らないまま数日が過ぎ、病院では一通りの処置が施されたものの、彼女の症状は一向に改善される様子がなかった。

ハルは自分を責めていた。

あの時、ありさを救う方法はなかったのだろうか……と。


ハルはありさの治療に役立つ情報が欲しかった。

そして決めた。

ありさが意識を失う原因になったあの場所へもう一度行ってみようと。



 --- 舞台は再び『フェイス』の世界へ ---



「ハル、あなたを待っていました」

ゲームを始めたハルに、RINAがいつもと違うメッセージを送ってきた。



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