薄れゆく境界線
1ヶ月後。
ハルはいつも通り学校から帰宅すると、玄関からありさに声をかけた。
「ただいまー。お隣の家、もうだいぶ完成したみたいだな」
ありさは居間のドアからピョコリと顔を出して答えた。
「もう誰か住み始めてるみたいだよ? 私さっき見たもん」
靴を脱ぎながらハルが答えた。
「へーどんな人だった?」
「高校生位のとっても綺麗な女の人だったよ。あの人も私と同じ高校に通うのかな? 私、お友達になりたいな」
「ありさなら、きっとすぐに仲良くなれるさ」
ハルはそう言うと、階段を上がって自室に入った。
いつも通りカバンをベッドの上に投げ出すと、ふと気になって窓を開けて外を眺めた。
ハルの部屋からは隣の家がよく見える。
ほぼ完成した隣の家からは、人の住んでいる様子が見て取れた。
『お隣さん、どんな人なのかな?』
思いを巡らせていると、2階の窓が開き1人の女性が姿を現した。
金色のショートヘアーが印象的で、淡い空色の洋服を着た女性。
どこかで見たことがあるような、不思議な感覚をハルは感じた。
ハルがその姿に見とれていると、女性は窓から上半身をを乗り出して話しかけてきた。
「会いに来ちゃった!」
ハルの鼓動が大きく脈打った。
その女性がRINAであると、直感で感じられたからだ。
女性の髪が小さく揺れた。
まるで砂浜に打ち上げられる白い波のように。
「ねえ、私が誰だがわかる?」
ハルは、自分が驚いているのか、それとも喜んでいるのかさえ分からなかった。
夢と現実の境界線。
未来には存在しなくなっているのかもしれない。
少なくとも、彼等にとってはそうだった。
「私、こっちの世界でもあなたのこと見てていい?」
女性は早く返事が聞きたくて待ちきれないようだった。
ハルは、心の中で伝えた。
――― いいに決まってる。
――― 僕だって、ずっと君を見ていたいから…………
『コンピューターが夢をみるとき』どうでしたでしょうか。
今回は虚像への恋愛をテーマに書いてみました。
私もそうですけど、皆さんも一度くらいはマンガの主人公やヒロインに恋をしたことがあるのではないでしょうか。
AIやマンガのキャラには実体がありません。
でも、だからこそ逆に純粋な恋心が永久に続くのかも。
と、私などは思ってしまいます。
ハルとRINAの恋愛は成就すると思いますか?
感想をお待ちしています。