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無気力

作者: 松浦 慶

人間ってある一定量以上尊厳を踏みにじられると総てがどうでも良くなるのさ。


どんなに舐められようが負けようが己にかけるプライドというのが剥落していて

張り合いとか生き甲斐みたいなものがなくて空虚間を抱えたままそれでもそこに妙な心地よさがあって、


そのうち他人にも趣味にも関心を払わなくなって夢とか自信とかとっくの昔に脱ぎ捨て

ふと我に返ったときそこにいた自分の世界との比重に対して何とも無価値だとか


ゴミみたいだとか己を評価している自分ですら最早傍観者になって、かつての競争心と意欲に満ちた

自分までもが馬鹿に思えてくる。


頑張ってももう限界が見えてるし、徒労の報酬をもて余して

無力を噛みしめる意味を見出だすことが出来ない。


正か負かも定かではない社会というスパイラルに放り込まれてただ漠然とした毎日を

漠然とした不安とともに漫然と遣り過ごす。


文句ばかり言う奴は出世しないとかその成果は努力の賜物とか、

ありふれた言葉と数字の高い低いの狭間に僕らの価値はどんどん埋もれてゆく。沈んでゆく。


当然のことについてあれこれ考えることもしなくなった。

疑問を呈する者は愚かと等しくなり、夢を語る者は楽観的と揶揄され、何を敬い何を己の師として

何が己の個性かとか、その一切を見失った。


地に足がつかないまるで放浪者のような心細さを抱えて気休めや嗜みを糧に虚しく生きる。

楽しいとか幸せとか最早感覚ではなく単なる客観的事実と成り果てた。


僕は幸せである。否、幸せを感じていない。


道を歩けば転び、転ぶと軽蔑を喰らい、人を見下す卑怯でつまらない人間と

見下されるような惨めな人間たる自分に出会う。


何の為の人生か。


その滑稽かつ切実な問いに答える者は未だにいない。


誰かの為とか自分の為とかどちらも当てはまりそうにないけど粗末にしてはいけないと言い伝えられた命。


僕は地上を歩いても空は動かない。

そのくらいに影響力の無い薄っぺらい命が今こうして呟くことに辛うじて笑うしかない。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 尊厳が全て踏みにじられたときの、虚脱感でしょうか。 [一言] ――文句ばかり言う奴は出世しないとかその成果は努力の賜物とか、ありふれた言葉と数字の高い低いの狭間に僕らの価値はどんどん埋もれ…
2012/03/04 16:53 退会済み
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