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ExtraMaxWay  作者: 凩夏明野
第七章-真実操作-
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月の酩酊落葉に麻酔

さて、始まったのはいい。

が、中途半端に“影の王冠”を掴む右手が、一抹の不安をも掴んでいる気がする。

左手は、自然に開いて構えていたのでくっついてはいない。

しかし、右手を固定した術式兵装の正体が分からない限り、“影の王冠”を握るのは止めた方がいいだろう。

[良い判断だ。今の状態では、“影の王冠”は右手と同化している。解除、再び召喚は中々難しい。]

……成る程。

“中々難しい”ね。

つまりだ、左手は最後の切り札な訳だな。

[その通り。心して掛かり、気を逃すな。]

了解した!


「酔い時に香りの追随。“月の酩酊(キマメ)落葉に麻酔(メサニフタ)”ァ!」


スマタカシがナイフの術式兵装を召喚した。

……特に何の変哲も無いナイフっぽいな。


「<あれは対したことないよー。>」


「お?」


ああ、ベリネでボイスチャット……。


「<悪い悪い。最近使ってなかったからすっかり忘れてたよこれの事。>」


スマタカシのしょぼいナイフを軽く避けながら話す。

……おいおい。

ほんっと大した事ないなこの人。


「<まー身近にある物程忘れるもんだよねー。でー、“月の酩酊落葉に麻酔”なんだけど。あれはね―――>」


「<おっと待った。>」


「<へー?>」


「<そうネタバレばかりされても面白くない。>」


それに、俺のためにもならない。

この先の戦闘では基本的に敵の情報なんて入らないだろうからな。

[よく言った。今日は驚かされてばかりだ。]

お褒め頂き恐悦至極。


「<そっかー。まー私も説明するの怠かったから助かったよー。>」


「<おう。あーでも、一つ教えてくれ。何でネフィリムは戦わないんだ?>」


センマイカも見てるだけだけど。


「<あーそれね。あのね、基本的にネフィリムは手を出さないの。あいつの術式兵装って二つなんだけど、そのどっちもこの世界で使うには強力過ぎるの。>」


[うむ。奴がネフィリムという名を冠し、更にエグリゴリを指揮しているとしたら、同化している者は確実にあやつだからな。]

あやつ?

[ネタバレは良くないのだろう?]

……はいはい聞きませんよ。


「っと。」


投げつけられたナイフを“影の王冠”で弾き躱す。


「ッダッアー!なんで当たんねえんだよ畜生が!」


「あんたの腕が悪いんじゃないかな。」


「カクシンを突くんじゃねえよコラァッ!」


ぶんぶんと振るわれるナイフを、先程同様軽く避ける。


「大体さ、投げたナイフを解除、再召喚ってすぐ出来るならもっとばーぱー投げるべきじゃね?こっち剣でそっちナイフ。リーチの差が歴然過ぎて同情したくなる。」


「喧しい!てめえは先公か畜生がァ!」


と言いながら投げては解除、再召喚を繰り返し始めた。

学習能力、というか人の言った事を素直に受け止める率直さは持っているみたいだな。


「ま、結局当たらないんだけどな。」


「くっそくっそくっそォォ!」


「孝、手伝うか?」


「うっせー俺にやらせろボケェ!」


センマイカの差し出した手は普通に拒んだ。

どうなんかねこりゃ。

3対2になるかと思ってたけど、実際はタイマンだ。

毬も何処から出したのか、ベンチに座ってサンドイッチをほうばりながら観戦している。

いや……ネフィリムもいつのまにか隣に座って笑いながら話してるぞ……。

緊張感無さすぎ……。


「おいてめえ!どこ見てんだよ。」


「あ?おお、悪い悪……い?」


ん……?

目を擦る。

なんだ……?眠いのか俺?

昨日は確か、深夜1時に寝て、今日は午前9時頃に起きた筈だ。

眠気なんてからっきしだと思うが……あ。


「成る程……。これが、お前の術式兵装“月の酩酊落葉に麻酔”、か。ネタが割れれば何て事ない。名前にヒントがあるじゃん。」


「はっはァ!そうさ。切り付けられたり、突き刺されたり、匂いを嗅ぐだけでも眠くなる。恐ろしいだろォ!」


こういうさ、自分の能力をべらべら話す敵って、なんか知らんが雑魚か強敵に綺麗に二分されるんだよな。

[おお確かに。]

しっかしな。

眠くなるって。

“眠らせる”じゃなくて“眠くなる”。

どんだけ中途半端なんだ。

あ、そう言えばさ、なんであの人“攻撃”使わないんだ?

“攻撃”を使って投げりゃもうちょっとは早くなるだろうに。

[さあな。使わぬのか使えぬのか。]

なんとなく後者の気がする。


「もういい攻める。“攻撃”星三十。」


「うっわ!」


星十五を解放し、一気にスマタカシの前に移動。

ナイフをぶんぶん振るわれるも、既にそこに俺はいない。


「遅いし勘も悪すぎ。」


「あぎゃあああああああああ!」


背後に回っていた俺は、“影の王冠”で一閃。

“月の酩酊落葉に麻酔”を持つ金石の右腕を二の腕の辺りで切り落としてやった。

空中ではナイフを掴んでいた右手も、地面に落ちた衝撃で開きナイフは音を発てながら跳ねた。

右腕から血がぼとぼと、いや、だーだーと流れている。


「……あんたならこれで戦闘不能だ。腕を渡す訳にはいかないが、さっさと病院にでも行って治療してもらえ。」


「ふ、ざけるなァ!はあ、ぐ……“回復”……+“水”。“超回復”ゥ!」


「……!」


まさかこいつが“超回復”を使えるとは。

“回復”と“水”の上位呪文“超回復”。

初めて見たがその威力は凄い。

あれだけ出ていた血は止まり、傷口は完全に治っている。

右腕は家出したままだが。


「っはー、あはははは。どうだァ!ああ?」


「どうだって言われてもな。病院に行かなくても死ななくて済むってだけで、右腕は戻ってないぜ?それに、眠気も覚めたぞ?」


嗅がせ続けるか、傷付け続けるかしないと効果が切れるらしい。

中途半端だ。


「るせー!ええいもういい。センマイカ、手伝ってくれ!」


「やれやれ。」


スマタカシの隣にセンマイカが立つ。

ようやっと力を発揮出来そうだ。

悪魔:賢悪魔『サミレス』

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