静止線
「殺す、か。それも別に良いだろう。」
「は?」
「今まで俺は幾人もの人を殺めてきた。ならば、ここらが潮時だろう。」
……なんだこいつ。
見え見えの嘘吐きやがって。
[ほう。貴様の洞察力も中々どうして侮れんな。]
いやだってさ。
こんな事を平然と言う、今まで何人も殺してきた奴ほど胡散臭い物はないよ。
「なーに見え透いた嘘吐いてんのー?」
「ふ。別に嘘ではないよ毬。俺が君らと戦った末、殺されても文句は言わない。」
「それは本当みたいねー。なら望み通りに。」
一触即発。
確かに俺は金石に“付き纏う奴ら”を殺してくれとは言われた。
それに俺は奴らを殺させてもらうとも言った。
しかし……3対2では分が悪いだろ。
[確かに。私の術式兵装を一つでも使えれば話は別だろうが、少しばかり不味いな。]
やっぱ?
[大城毬も言っていたが、あのネフィリムとかいう奴、相当の手練れだ。]
確かにそうっぽいよな。
何か力が滲み出てる。
「おい。ちょっと、毬。」
「ん?なーにですかー?」
ひそひそと話し掛けた俺に普段通りの声で返事をされる。
もうちょっと慎重になってくれよ……。
「……ここは分が悪い。金石を連れて一旦逃げよう。」
「逃げられると思う?」
「いやどうだか……。あんたの妹、大城妙だったか?彼女に助力は頼めないかな。」
「あー無理。」
はやっ!
ちょっとは考えようぜ……。
「左宇ちゃんならまだしも、妙ちゃんは無理ねー。あの子も面白いと思わなきゃ関わってこないもーん。」
「いや、しかし。あんたが頼めばもしくは……。」
「それこそ無理よ~。めんどくさいしー。それにー、妙ちゃんを危ないことに巻き込みたくないし~。」
「あ……。」
それを言われると弱いな。
いくらワレラと言っても女の子だからな。
[……99。]
へ?
[大城妙の魂補充の数だ。つまり、98回なら死ねるということだ。更に、彼女の特性である『反射<ハンシャ>の国』はあらゆる物を反射する。呪文だろうと、術式兵装の攻撃だろうと。]
……前言撤回だこの野郎。
「すげえ強いんじゃないか!」
「わ、びっくりした~。確かに強いよー。」
「く……ええい、もういい!他だ他!」
くっそ一体どうすりゃいいんだ。
[ふむ……いや、やはり戦うしかないようだ。]
……うん。
俺も今気付いた。
[ほお。やはり貴様そうとう洞察力が上がったな。]
何時までもおんぶに抱っこじゃ情けないからな。
「なあ毬。」
「次はなーにっかなー?」
「あの、天から伸びる糸はなんなんだ?」
「ふふふ。気付いたんだね。そ。いくら足掻いても戦う意外に道は無い。そして無いなら切り開けばいいのー。」
「ごもっともだ。」
「あの糸はね、“静止線”。私たちの動きを封じる戒めの術式兵装だよ。」
天から降りるそれ、黄金の糸は金石の家を、動き出さぬよう大地に縛り付けていた。




