ラグナロク:終幕
四肢をずたずたにされ、仰向けになる私の顔に深紅の血が飛沫となり付着する。
それを目を瞑る事なく私は眺める。
「……ぐう。」
「痛みは神が人に握らせた一欠けらの罪悪感、とか言ったなお前。」
血はメタトロンの胸に突き刺さった『雷』から滴り落ちたり、傷口の隙間から垂れたりしている。
「神の代理人であるお前がそれに興じるとはね。気分はどうだいメタトロン?」
「……非常に不愉快だ。こんな気分生まれて初めて体感したよ……。だが……。」
「何故この様な事態になったか、か。いいでしょう説明してやる。どうせ私もお前も今は動けない。」
天高く消え失せた『雷』が何故メタトロンの体に突き刺さっているか。
メタトロンから離れる事で、重力の刃は段々と締め上げる力を失っていったんだ。
そのおかげで『雷』を、本来それがあるべき場所である『ロッカー』に戻せたのだ。
これについての詳しい説明は省く。
一つ言っておくと、この『ロッカー』は登録した物を瞬時に手元に呼び寄せたり、指定の場所に送ったり、逆に『ロッカー』にその物を仕舞ったり出来る物だ。
そこに一度『雷』を仕舞い、再び上空に、下に向かって飛び出す形で出現させた。
メタトロンも自らに刃が立つ寸前で気付き、重力の刃を投げつけた。
が、そんな事は読めていた。
事前に木に括り付け仕掛けていたパイファー・ツェリスカに繋がるワイヤーを、私は口で引く事で発砲した。
ガスガンを百強化させた程度の弾では完全に弾けない事くらい私にも分かっていたさ。
ほんの少し、少しだけずれればよかった。
なぜなら、メタトロンの意識は私の“魅惑”が惑わせていたからだ。
重力の刃は的確に『雷』へと放たれた。
1cm交わるか否かの正確さでね。
それ以上は私の“魅惑”では無理でした。
まして“操脳”を使うなんてね。
しかし重力の刃に弾は当たり、2cm横にずれた。
「……そして僕の体に『雷』が突き刺さった訳か。いやー参るな……。人がこんなの受けたら死ぬよ……。」
「ふん。人の体なんて仮初めだろお前の場合。人型の天使や悪魔もいるが、お前は違います。」
「その姿は僕が君を認めた時見せよう……。」
「ふう……。ここまでして認めてもらえませんか。」
流石に、少ししんどい。
両手両足は私の“回復”で治すのが不可能なレベル。
身動きが取れないとなると、先ほどの様な不意打ち狙いになりますが……。
パイファー・ツェリスカは使ってしまったし……。
こうなってくると打つ手がまるで見当たらない。
「まあ……認めかかってはいるんだよジェイカー・リットネス……。僕が君を名で呼ぶのが証拠だ。」
「確かに名で呼ばれるとは光栄ですよメタトロン。」
「……よし決めた。」
無造作に『雷』の刃を掴み引き抜きはじめるメタトロン。
背中に押し出すのではなく、腹から引き抜く。
見ているだけで痛々しい。
「“修復”。」
「な……にを……?」
“修復”。
“回復”と“光”の上位呪文。
通常の“回復”や“超回復”などが文字通り回復させるだけ。
傷を治したり血を止めたりするだけなのに対し、“修復”は補填による治療を行う。
いや治療なんて生温いもんじゃない。
文字通り“修復”、全てを修復するんだ。
私の両手両足は返ってきた。
「……???」
「……意味分からない?僕が手足を失うなら未だしも、人である君が失っては話にならないんだよ……。嘗めていると考えてもらって構わない……。」
「……いえ。感謝しますよ。私の部品達を返してくれた事にね。」
差し出された血塗れの『雷』を受け取る。
軽く振るってやると刃に付いていた血は綺麗に無くなった。
「さてと、それでこれ以上何をやらせる気ですか?」
「……簡単だよ。……天高く炎立つ。天蓋を焦がす灼熱の天国“炎の柱”。」
「っ!」
凄い勢いで熱波が押し寄せた。
激しく辺りの木や岩を燃やしていく。
あまりの激しさに目を瞑る事数秒。
はたと消え失せた熱波。
目を開けると、周りの物は全て焼き尽くされていた。
「これが“炎の柱”……。出現させただけで周囲を焼き尽くすとはね。」
「んー……今のは半分くらい演出です。」
思わずずこーっとこけた。
「ははは、そうですか。」
「はい。……ではこれが最後の一撃です。これによって君を認めるか……否か、決める。心して掛かってくれ。」
「当然。」
メタトロンは振りかぶって構え。
対して私は正眼の構え。
次で全て決まるなら、最後くらいとんでもファンタジーにするのも悪くない。
「……いくよ。アストラル―――」
「いきますよ『雷』。大地両斬―――」
「イグニス!」
「雷撃抜刀!」
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