ラグナロク:開戦
「ち。」
彼に向かって真っすぐ突き進んでいた五筋の雷は、彼の前方2mに到達した時点で制御を無くし、彼の周りをぐるぐる回りはじめた。
「……ほう。人でこれほどの“兵装環装”を創る……。」
メタトロンが右の人差し指で天を指す。
と、雷は光を一層増し天へと帰っていった。
「斎奥院、という方が創ったそうです。詳しい事は私も知りません。」
この刀はあの人から受け継いだだけの物ですから。
「……そうか。さて……。」
ポンと本を閉じると、それは光の粒子に成り消えた。
「呪文……君らが魔術と称するそれに於て、“火”も“電気”も、……所謂自然呪文は、本来の力を失っている。……次点に堕ちた大地に塗れているからな。」
「確かに。」
我々の使う自然呪文単体にはなんら力はない。
上位呪文に使う以外はね。
「……まあ、それはそれで一興なのだがね。」
彼の周囲を先ほどとは違う光が回転し始めた。
熱を帯びている所からして、火だな。
「君に本当の“火”を見せてやろう。かつて世界を飲み込んだ……火の海を。」
「う……!く!」
熱い……!
回転から放射された火があちこちにその熱を配っている。
「っ!はっ!……うわ!?けほ……!」
こちらに飛んできた火を『雷』で切り裂く。
そこから吹き出た熱波に喘ぐ。
更に追撃の火が五つ。
不味い……!
「……“攻撃”星十。」
一つの火に星二ずつ使い斬る。
でないと、追いつかない。
「速度を上げてもついて来るか……。同化もしていない生身でそれが出来る……。やはり強い。」
「お褒め頂き光栄至極。ただ、あまり私の精神構造を燃やさないで頂きたい。」
「……失礼。しかし……ここで戦うのは少し乗らない。“大地”星七……。」
「ん?うわっと!?」
私の下の地面が盛り上がる。
いや、至る所が隆起してきた。
岩壁、石柱、丘、果ては木まで生えてきている。
これが純粋な“大地”……。
大地の原点使いにも通ずる力だ。
「準備完了……。開戦だ。神の代理人と、人とのね……。」




