戦場の支度
「……相変わらず暑いですね此処は。」
照り付ける太陽は熱く、熱を吸収した砂も熱く、そしてそれらに影響された気温は物凄く暑い。
正直な話、一秒たりともこんな所にはいたくない。
「私達もそんなに長い時間いたくはありません。それに誰かに悟られるのもよくない。当然舞台は整えさせて頂きます。」
「此処にですか?」
「ええ。彼らも最近出ていないので欲求不満でしょうし。」
……彼ら?
嫌な予感しかしません。
「日は昇る。天から下りし破壊の恩恵。“破壊の天使”。」
「それはちょっと不味いのでは……。」
カンカンカンカンと乾いた鐘の音が四つ鳴り響く。
天から光が四筋砂漠に突き刺さり、エンジェルラダーとして作用する。
それはさながらではなく、言葉通りの“天使の梯”。
天使はそこから降りて来る。
ただ……降りて来る天使の質に難有りなんですよね……。
「やあやあファイア、サンダ、グラヴ、レイ。機嫌はどうですか?」
ピーピーだのキーキーだの人語とは思えない喋りで意志疎通をしている。
なんと言っているか、恐らくカマエルと同化すれば分かるんでしょう。
今の命では不可能でしょうけど。
「さて、早速で悪いのですがお願いがあります。グラヴ、貴方は周囲500mを50m程陥没させて下さい。」
合点承知といった具合に胸を叩き、グラヴは飛んでいった。
次の瞬間周囲に50m程の壁が出現した。
実際は我々が立っている地点が沈んだんですけど。
「次にレイ。貴方は周りを光の壁で覆ってください。」
フイっとレイが人差し指を泳がす。
天井に薄い光の壁が出てくる。
これは触れる物を分解させる壁だ。
試しにそこにあった小石を投げてみる。
……届きませんでしたけど。
「はい、これで終わりです。おっと安心してくださいファイア、サンダ。貴方方にはこの後働いてもらう……かもしれません。」
どちらかと言うと望み薄っぽい、その場を取り繕うだけの様なそれに対し、彼らはとても喜んでいる様だ。
「私が失敗した時の保険、ですね?」
「はい。私がメタトロンとした約束は、“貴方に相応しい魔術師を探す”。そして、その魔術師との交わりを経て気に入らなければ殺していい。その果てに私と戦う事も許可するという物です。」
「成る程。」
私はどうあっても気に入られなければならないようですね。
「さて、準備は完了です。彼は空間の術式兵装は持っていません。つまり戦闘を……行うとは決まっていませんが。」
……十中八九行う事になるでしょう。
「その場合、貴方の精神構造を使う事になりますが、大丈夫ですか?」
「ははは。珍しいですね。君が私の心配など。」
「私も感情を持つ人間です。友が一人いなくなるのはとても悲しい事ですよ。」
「そうですね。私もです。」
私も、君の事が好きですよ紳。
「準備は出来ていますよ。君と会う前からね。」
「承知しました。では始めます。招致。通ずる。対象“ジェイカー・リットネス”。行け、メタトロン。」
そして私は自らの精神構造へと招かれた。




