落日に燦然たる福音
「君は撃ちませんよ。少なくとも“それ”はね。」
「それは、ですか。随分含みますね。」
尚も銃口は後頭部に突き付けられたままで、一切の油断を許さない現状ではある。
だが、それにしても彼は『素魚』の引き金を引く事はないでしょう。
彼が人を試す時にすることはたった一つ。
ただ質問するだけ。
“貴方は神を信じますか?”。
「貴方は私の手の内を知っていますからね。相手が果たして殺していい者なのか、それとも生かすべきなのか。私は必ずそれを知らなければならない。」
「それが、神に殉ずる者の宿命ですからね。という訳で、早くしてくれませんか?私もそれほど暇ではないのです。」
「そのようですね。」
後頭部の違和感が瞬時に消えた。
後ろを向くと、紳の手は銃を握る格好のままだった。
「“手”の方は鈍っていないです。むしろ上がっていますね。ですが“神”の方はどうでしょうか。」
「それを試すのが貴方でしょう?さっさとしたらどうです。」
「そうします。日は落ちる。燦然と輝く星の下に、誓え。“落日に燦然たる福音”。」
次は額に新しい違和感。
空だった紳の右手に現れた拳銃が原因だ。
「では問います。貴方は神を信じますか?」
「無論です。と言っても、君に殺されないためだけにですけど。」
「そうですか。……結構。ではやります。」
「……!」
瞬間、私の額を9mmの弾丸が貫いた。




