76/106
紳士
その男はこのくそ暑い、いえ、目茶苦茶に暑いこの砂漠で白いスーツを着て立っていた。
汗の一滴も流さず涼しげにだ。
その右手には一丁の拳銃。
左手には一丁のサブマシンガン。
「本当に久しぶりだね紳。爽君は何処かな?彼にも来てほしいと言った筈だが。」
「爽なら今街に行っています。食料や水を買いにね。」
「成る程。では彼が来るまでそこの喫茶店でゆっくりと話しでも―――」
銃弾は放たれた。
拳銃から出現したそれは、私の左頬を掠め砂に埋もれた。
「と思いましたが。やれやれ。戦わなければならないんですか?」
「貴方の腕が鈍っていないか、それを確かめなければいけないでしょう?」
「それも別に悪くは無い。けれど、あまり無駄な労力を使いたくはない。事態は差し迫っている訳ではないけど、それでも怪我はしたくないからね。」
取りあえず腰に結わえてある鞘から刀を抜く。
烈電『雷』という人工兵装の刀だ。
「と言いながら、貴方だって臨戦体勢じゃないですか。」
「銃を持つ相手に丸腰で相対する程肝は据わっていないのでね。」
紳がジリジリと左に動く。
それに合わせて私は右に動く。
こうなってしまっては戦いは避けられないだろう。
「大丈夫。貴方ならきっと怪我なんてしないでしょう。」
そしてサブマシンガン『素魚』は火を撃った。




