地獄の園
取りあえず下から上へ剣を振り上げ斬りつけてみる。
ドルイトスの体に当たったが、刃が体を通り抜けることはなかった。
「これは痛い。すぐに放してほしいくらいに僕を痛い。」
「大した“防御”だ……!“影の王冠”を防ぐなんて。」
[使い方が上手いだけだろう。本来“影の王冠”を体で防ぐには“防御”星二十は必要なはずだ。こいつの“防御”は3程しか掛かっていない。]
一点集中って訳か……!
軽く言っているが凄いぞこいつ。
当てつづけているにも関わらず、防ぎきっているんだから。
「いい加減くれよ放してくれよ俺を。」
「う!これは……。」
視界が歪む。
ついでに“影の王冠”を掴む右腕の感覚があやふやになってきた。
[“魅惑”を周囲に張り、“操脳”を指先から流し込まれている……。]
指先からだと?
刃を介してか?
[ああ。流石は鏡使いと……呼ばれる操り師、の一人。]
悪魔?大丈夫か?
[間抜けな問いを吐くな。さっさと、貴様が離れねば……私の意識は飛ぶ。]
それはまずい。
俺もこのまま吐くのは御免だし、右腕の感覚が消えるのも御免だ!
「おっと離れたお前に俺が。」
3m程離れて距離を取る。
それと同時に視界は通常に戻り、右腕の感覚も元に……戻らなかった。
[不味いな……。“魅惑”は距離を取れば大丈夫。基本的に、空間に垂れ流しているだけだからな……。だが、この“操脳”……右腕と貴様の精神を、巡る。]
それってつまり、体から抜けないって事か?
[その、通り。抜くには―――]
抜くには?
……おい。
……おい!
「君の心の平穏を乱せばお前と契約の切れる。」
「てめえ……。」
おい返事してくれよ!
……。
駄目、なのか?
悪魔の意識が感じられない。
“帰ってしまった”という訳ではなさそうだが……。
[心を乱す。つまり奴は我が主の精神を時間制限を設けて主と隔離しているのです。]
へ?
悪魔が出てこれないはずの心から、声がする。
[お忘れか主。ベレトにございます。]
ああ……ごめんベレト。
忘れていた訳じゃないんだ。
[良いのです。儂はいつでも我が主を立てるのが役目です故。]
「そろそろ俺だってお前を反撃したいと思うんだ。」
「ち……喧しい野郎め。」
ベレト、あんたが出てきた事はは嬉しいし心強い。
そこで聞きたいんだが、この右腕のイライラを払拭する手はないか?
[無論あります。]
マジかよ。
だったらもうちょい早く出てきて欲しかった。
[私は常に主を立てます故。それに、たまには儂も戦いたいのです。]
ははは。
流石、地獄の軍団を率いる大王だ。
よし、術があるのならちゃっちゃと実行しよう。
どうすりゃいいんだ?
[儂の庭園をお使い下さい。彼奴の脆弱な“操脳”など全て洗い流してくれる。]
成る程了解した。
「算段は纏まらない。お前が俺に対して出来ることはあるはずがある。」
「意味分かんねえ事ばっか言ってんじゃねえよ。いくぜ。44の軍勢、無限であり夢幻の攻域。最高末路の生き地獄、解放にして開放の死路。準備は出来た。最上の待つ戦争を辿れ。……“ロード・デス・ウォーヘル”!」
現れた煌々たる火が俺の体をチリチリと焼く。
痛みはない。熱さも感じない。
ただ、俺の中にいた歪みが消えていくのは感じられた。
そして出現したのは、俺がベレトと同化した時に見た熱い情景だった。




