睨み
{お早うございます。HAJACK第九地区に2224年3月9日の朝が来ました。今日のお天気をお伝えします。今日は雨でしょう。降水確率は90%。最高気温13度、最低気温10度。これ以上の詳細はお天気発信地にて確認して下さい。アドレスは、hmjc://wws.otenki-hasshinti/22240309。引き続きニュースをお伝えします。昨日の午後三時頃、一人の男性が投身自殺しました。皆さんも自殺するなとは言いませんが、死ぬ時は他人に迷惑をかけないようにしましょう。}
「調子はどうだセナリア。」
「大丈夫か。なんて聞かないだけ気がきいてるわね。上々よ涼治。」
セナリアの寝室に二人きり。
大金持ちの家だ。天蓋付きの巨大なベッドでもあるかと思ったが、案外質素だった。
普通のベッド。普通のテーブル。普通のパソコン。
いや、最後の物に関して言えば珍しい方だな。
異常だと言えば部屋の広さくらいか。
「昨日の自殺、IFLCが捜査しているが、どうも魔術師が関わっているようなんだ。」
「あらそうなの?」
「更に言や、ワレラも関わっているみたいだぜ。」
「三大勢力揃い踏みって訳ね。面白いじゃない。」
長い髪の毛先を弄りながら返事をするセナリア。
どこかぼーっとしてるな。
「……本当に上々か?」
「疑うの?切り裂こうか、腐る断絶。“多角鋭式六頭霊影刃”。」
「うわっと。」
いじいじを止めたセナリアの右手に赤い刃の刀が出現した。
六頭の蛇が巻き付いている。
「どう?術式兵装だってちゃんと出せるわよ。」
「術式兵装は、全てが中の者に依存するんじゃなかったっけ?」
「もう、あんまりごちゃごちゃ言う男の人は嫌いよ?」
「そりゃ悪かった。さてと、俺はもう行くよ。お嬢様はもうちょい休んでな。」
「はいはい。いってらっしゃい執事さん。」
後ろ手にひらひらと手を振りながら部屋を後にする。
「あ、どうも。」
部屋の外に控えていた本物の執事さんに一礼する。
白い髭を口の上に蓄えた執事さんもにこりと礼を返してくれる。
……どうかなセナリアは?
[うむ。言語に異常があるわけでもなし。何か呪いの類いがかけられた痕跡もなし。私が見る限り、彼女の言葉を借りれば上々だ。]
そりゃ頗るいい。
「<ジェイカーさん。>」
<見舞いは終わったかな?>
「<はい。セナリアは元気でしたよ。でもまだC.D.Cの仕事に復帰するには早いでしょう。>」
<分かっているよ。君はこのまま現場に行ってくれ。血なんかは流れてなくなるが、魔術的痕跡は流れない。雨の中ですまないんだけどよろしくね。>
「<了解です。>」




