第二の鼓動
「こりゃ酷い。」
「投身した死体なんざいつだってこういうもんだろ。頭が割れたり、腕が曲がったり、折れた肋が体を突き破ったりな。それとも、薫はまだ投身自殺した野郎を見たことなかったか?」
「お前が重力でぶっ潰した奴なら見たことあるぜ。」
「そりゃご愁傷様。」
よっこらせと死体を仰向けにする。
「むう……。」
さっき直太が言った事全てを体現しているな。
「飛び降りた以外の外傷はないな。」
「分かるか?ぐちゃぐちゃだぞこれ。」
「何となくだ。精神疾患は分からんから、IFLCに回すぞ。俺がやっとくから、薫は聞き込みでもやってくれ。」
「あいよ。」
黄色い停止線から遠巻きに死体を見ている野次馬に近づく。
「話を聞かせてもらえる方はいませんか?」
「あ、じゃあ俺が。」
「ありがとう。彼は飛び降りる前に何かしていましたか?」
後ろにある死体を親指で指しながら聞く。
「何か喚いてましたよ。“お前が”だとか“誰だ”だとか。」
「支離滅裂な奴だったと言う訳か。誰かに対して言ってたんですか?」
「女連れの男にね。」
「男?それが誰だか分かりますか?」
「うーん……確か“阿部左宇”だとか言ってた様な。」
「……へえ。」
阿部左宇ね。
ワレラの一人だな。
それが本当なら、随分面倒な事になりそうだ。
「ご協力ありがとうございました。」
再び礼を言いその場から離れる。
これ以上有益な情報は得られそうもない。
「<直太。どうやらワレラが関わっているらしい。俺はワレラのツテを訪ねてみる。>」
<了解。死体を運んだら俺も合流しよう。ワレラ相手となると、もう少し戦力がいるな。嬢ちゃんも連れて来る。>
「<任せた。>」
……まだ戦うと決まった訳じゃないが。
ま、備えあれば憂い無しってね。
さて、轍醍醐はいずこやと。




