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ExtraMaxWay  作者: 凩夏明野
第五章-睥睨する七万の瞳-
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3月8日

……なんだあいつは。


「さーなんだろね?おかしいってのは分かるわね~。」


頻りにキョロキョロと周りを見る男が一人。

この距離では聞こえないが、ぶつぶつ呟いてもいるようだ。


「春だしおかしー人の一人くらい珍しくもないんじゃなーい?」


「そうかもな。だが……。」


ここの所いわゆる“おかしー”事が起きすぎな気がする。

重力の原点使いである春日井直太と出宮真の戦い。

妙な赤い奴の出現。


「轍醍醐でも倒せなかったってあれね~。」


「そうだ。」


三人の孤立狼が此処HAJACKに来た。

そしてその内の一人糸井草春が、ベルサーチ・マリオネットを殺した。


「なーに?なんかが動き出したとでも言いたいの?」


「……かもな。」


「まー私にとってはどーでもいいけど、って左宇君。」


「ん?なんだ?」


ついついとシャツの裾を引っ張られたので立ち止まる。


「あのおかしー人こっちに来るよ~?」


「おおホントだ。」


人を掻き分けつつ、時に人を押し抜けてこちらに走って来る。


「お、おおおお前か!お前があああ!」


「は?俺?」


無駄な被害を被らない様下がった民衆の間から、俺に指を指すおかしー男。


「お前が俺を!」


「知り合いなの左宇君?」


「いや。俺にこんな支離滅裂を絵に描いた様な友人はいないと思う。」


俺が知らないだけで、何処かで恨みを買ったのかもしらんが。


「お前……お前が俺の名前を言うかあああああ!」


「は、ちょっと!おいおい何なんだ一体……。」


いきなり殴り掛かってきた男の拳を軽く弾き躱す。


「はあ……はあ……避けるなよおおお!」


「いや、だって。殴られたらよっと。痛いじゃん。」


ぶんぶんと、まるで対象を補足しない拳の嵐から離れる。

一体全体なんなんだマジで。


「やっぱ知り合いなんじゃなーい?」


「そんな筈は無いんだがな。ちょっとあんた落ち着いてくんねえかな。」


「うわああああ!」


……無理みたいね。

仕方ない。


「動きを止めるためだ。恨むなよ!」


「があっ!?っげほ!」


腹に軽く殴りを入れてやる。

あいや、軽いつもりだったが、思いの外綺麗に決まったらしい。

男は外聞も気にせず、涎を飛び散らせながらのた打ち回っている。


「ゴメン。結構痛かったみたいだな。でもあんたが悪いんだぜ?いきなり殴り掛かってくるからさ。」


「あ、はっ……ぐう……。」


「で、ちょっとは落ち着いてくれたか?」


男の前に座り込み話し掛ける。

痛みが引いてきたのか、男はのた打ち回る事を止めた。

代わりに血走った目で俺を睨んでいるけど。


「俺があんたの名前を呼んだとか言ったな?あんたの名前なんて俺は知らないんだがな。」


「は……。じゃあ一体誰だ!答えろよおおおお!」


……全然落ち着いてない。


「いや誰だって言われても。俺は阿部左宇って名前なんだけど。」


「お前じゃない!誰だって聞いているんだあああああ!」


「はあ?だから左宇だって―――」


「うるさあああい!お前じゃないだろ!うわあああああああああ!」


「いてっ!あ、おい!」


起き上がった男に突き飛ばされよろめく。

その内に男は走って近くのビルに入ってしまった。


「あららー。行っちゃったね~。」


「ったく。なんだったんだよありゃ。」


「さーねー。ってあれ?ねえ左宇君。」


「あ?なんだ?」


「ほら~。あれあれー。」


つんと立てた人差し指で妙が宙を指す。

正確には、さっき男が入っていったビルの屋上みたいだ。


「ん。ありゃさっきの男じゃねえか。この短時間で、エレベーター無しの10階建てのビルの屋上まで行くなんて凄いな。」


「ん~。感心してる場合なのかなー。あれ飛び降りるんじゃないの?」


「かもな。」


死にたきゃ勝手に死ねばいい。

正義を謳ってはいるが、他人の自殺願望を押し止める役まで買った覚えはないからな。

衆人の“あ”という声と共に男は落ちた。

奴は走馬灯を見ながらゆっくり落ちてきたつもりだろうが、実際は十秒も経っていないだろう。

落ちた男から血、肉片が吹き飛び周りに散った。

衆人は悲鳴を上げ、口々に“警察だ”だとか“救急車を”とか言っている。


「……自殺するのはいいが、ほらよく言うだろ?“死ぬのは勝手だが、他人に迷惑をかけるな”ってさ。」


再び倒れた男の前に座り込みながら言う。


「その点でいくと、あんたは0点だな。」


ま、誰にも迷惑かけない様死ぬなんて、天涯孤独でもなきゃ無理か。

そうでないなら全人類殺さなきゃな。


「行くぞ妙。警察が来ると面倒だ。」


「あいあいさ~。」


……面倒な事は既に起きているかもしれんが、これ以上増えるよりはマシだろう。

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