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ExtraMaxWay  作者: 凩夏明野
第四章-新たるは欲望の彼方より-
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新たるは欲望の彼方より

「……。」


「すまない。」


絶句。という言葉がこれ程似合う場面はない。

[予想はしていたが実際に聞くと、か?]

……ああ。

ジェイカーに呼び出され来た深夜2時のW.W.S保健室。

ベッドに横たわるセナリアと、その隣でセナリア同様寝息を発てている少女。

少女の方は誰かは知らない。


「セナリアは未成年女子寮にいた。“マリオネット”が付いていた所を見ると、ベルサがそこまで送ったみたいだ。」


「……そうですか。」


「脳波脈拍血圧全て正常。外傷無し。内傷も無し。掠り傷一つ無かった。」


「……そうですか。」


「意識もその内戻るだろう。っていうのは全て保健医の受け売りですけどね。」


「……そうですか。」


セナリアは無事。

……そうか。それは良かった。

セナリアが無事で本当に良かった。


「それで、だね。ベルサの事だが……。」


「指は蟷螂。体に刺さる複数の角はヘラクレスオオカブト。針は雀蜂。腱を切ったのは多分軍隊蟻ですよね。」


「恐らくそうでしょう。」


「でも……この腹の傷は何ですか!この首は!何たってこんな事になってんですかジェイカーさん!」


腹には穴が空いている。

首は、……頭と分離している。

そのどちらにも腐った痕がある。


「落ち着いてください更月君。それを知るために、ベルサーチからベリネを抜いたんだ。」


「……記憶を見るってことか。」


「そういうことです。」


ジェイカーが外部記録記憶映像外射機にベリネをセットする。


「これは、あの研究所ですね。」


「ベルサーチさんが死んでいた所ですか。」


「その通り。流石電光社社長の田中太一が直々に創った外射機だね。映像がかなり鮮明だ。」


「そうですね。」


……ベルサーチが無茶苦茶にやられている。

振るう“マリオネット”も空を切るばかり。

歯痒い。歯痒過ぎる。

こんなリアルな映像を見ているのに助けられないなんて。


「右目の映像が消えたね。」


「……。」


右目にヘラクレスの角が刺さったんだろう。

[糸井草春か。蟲使いなど歯牙にもかけん雑魚と思っていたが、中々どうしてこれは面白い。]

……黙ってろ。


「ここで草春は去った訳か。という事は、あの二つは草春が付けた訳ではないみたいだね。」


映像は続く。

ベルサーチが独りごち、そして誰かの高笑いが聞こえる。

高い……これは……。

[恐らく女、だろうな。]


「……!」


「どうしましたジェイカーさん?」


映像には女の顔が写っている。

黒く長い髪。

少し垂れ気味のおっとりした目。

肌の色から推察するに、多分日本人の血を色濃く受け継いでいる。

歳は十代後半くらいか。

極めつけ、右手に赤い刃の刀を持っている。


「あの刀、あれはセナリアの使う術式兵装“多角鋭式六頭霊影刃”。」


「え……?セナリアの?どういう事ですか?」


「分からない。ただ、術式兵装以外に分かる事が一つある。あの女性の名。彼女は大城毬。孤立狼だ。」


「てことは……糸井の仲間ですか?」


「それは分からない。」


「じゃあなんでこの大城って人はセナリアの術式兵装を?まさかサブナクを抜き取ったとか……?」


「いや。セナリアの中にはサブナクがちゃんといるよ。世の中には、他人の術式兵装をコピー出来る者がいる。恐らくだが、そういう類いの者が糸井に手を貸したんだろう。」


「成る程。っ……!」


首が落とされた……。


「……おしまい。ヒントは多く得られたね。さて、呼び出しておいて何だがもう夜も遅い。セナリアの事は保健医に任せて君はもう帰りなさい。」


「……一つ聞かせてください。貴方は今まで何処にいたんですか?」


「ちょっと野暮用でね。」


「野暮用ってのは?」


「聞くのは野暮ってもんだよ更月君。」


「……どうしても答えないんですか?」


「安心しろ更月涼治。」


「え?」


いきなり口調が変わって少し後ずさる。

が、次の瞬間にはにこりと笑って言い放った。


「ベルサーチは私の親友だ。彼を殺した者は許さない。必ず私が殺す。」


「は、はい……。……じゃあ帰ります。」


「うん。気をつけてね。」


扉を閉めて歩きだす。

[疑いは晴れたか?]

ん……まあな。

[どうやらまた新たな敵が現れたようだ。次は前線に行けるよう善処しろ。]

分かっているよ。

……新たるは、欲多き輩かな。

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