本当の裏切り
10km圏内にある建物の一つ。
ある魔術師が研究所として使用していたそれに草春はいた。
……結論から言おう。
負けた。
完膚なきまでにだ。
“マリオネット”は蟻に噛み切られた。
体には何本ものヘラクレスオオカブトの角が突き刺さった。
毒を弱くした雀蜂に何度も刺された。
幸いなことに、アナフィラキシーショックは起こさなかったけどね。
蟷螂に指を何本も落とされた。
「……つまり、はー……く……。満身創痍という訳だ。」
壁に寄り掛かりながら独りごちる。
右目にはヘラクレスの角が突き刺さり何も見えない。
脳に届かなかったのが救いだな。
……因みに、セナリアも此処にいた。
“彼女の、いや、サブナクの術式兵装はコピーし終わったんでね。もう用はない。意識がないから“マリオネット”で適当なとこまで行くよう設定してやれ。”
「草春が言った通り、セナリアは、……っ。未成年女子寮に送った……。」
目立った外傷はなかったから無事辿り着けたろう。
……私も、こうしてはいられない。
“回復”を使い、取りあえず歩くのに支障を来す様な傷だけ癒した。
“超回復”を使えれば苦労はないんだが。
「……ふ。ぼやいても仕方ない。致命傷を受けなかっただけマシというものだな。」
「はははははははは!」
「っ!?誰だ!」
入口に誰か立っている。
暗くてよく分からないが、多分男だろう。
「阿呆みたいにお約束の台詞を吐くのは止めなよベルサーチ。……ああもしかして、オーソドックスを嫌う草春へのアンチテーゼなのかな?」
「……ふ。そんなんじゃないさ。驚かさないでくれよジェイク。」
そこにいたのは右手に刀を持ったジェイカーだった。
助太刀にでも来たのか。
「今まで何処にいたんだ?私も更月君も心配したんだぜ?」
「悪かったね。ちょっとばかり野暮用があったんだ。」
カッ、カッと刀を床に打ち付ける。
それと同時に、コンクリートの床は塩酸でも垂れたかの様に煙を発てながら溶けた。
……いやこれは、腐った?
「“腐食”を刀に纏わせたのか?お前の“腐食”ならかなりの威力になりそう―――」
「ふん。」
瞬間、鼻に付く腐敗臭。
それと同時に生じた腹部の激痛。
「あ……く、な……何を、っ!ごはッ、ぶあ……ぐ……。」
「まーたお約束か。君もつくづくオーソドックスが好きだねベルサーチ・マリオネット。刺した腐った抜いたってだけだろう?」
「確か、に……。」
「そして、死に際に放つ遺言は残す必要ないし、まして名言なんていらないでしょ?死ぬ時なんてのは突然くるのよっと。」
……次に視界に入ったのは、赤い刃、笑う口元。
最後に視界に入ったのは腹に穴が空き、置物を無くし血を吹き出す自らの体だった―――
累計2000アクセスありがとうございます




