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ExtraMaxWay  作者: 凩夏明野
第四章-新たるは欲望の彼方より-
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起床

「……ッ。……?」


「あ、起きましたかベルサーチさん。」


目を覚ましたっぽいベルサーチに声を掛ける。


「……更月君かい?ええっと、……?」


「説明します。何故俺が此処にいるか。俺の中の悪魔、……ベレトが言ったんですよ。取りあえず調べるなら血痕の近くにある建物を調べるべきだとね。」


本当は()()がだが、それをベルサーチに言う訳にはいかない。


「そして、適当に入ったこの家でベルサーチさんが気絶しているのを見つけたんです。」


「……成る程。」


「外傷、もとい内臓系、脳などへのダメージも認められなかったので“回復”は使用していません。気持ち良さそうに落ちていたんで起こすのも止しておいたんです。」


何度か試したが起きなかったので、だが。


「起こした方が良かったですかね?」


「いや、いい。ありがとう。」


「じゃあすまないんですけど、説明してもらえますか?何があったか。ま……。」


床に落ちている物を見れば大体予想はつく。

蟲の脚、蟻の頭、しかもやたら歯?が発達した物が落ちている。

[聞くまでもなく、ベルサーチが戦った相手は十中八九蟲使いだろう。]

だよな。


「ああ……。分かった話そう。今は……二十時か。大分寝てしまったようだな私は。」


「俺が見つけたのが確か十六時くらいですから、大分と言っても間違いないですね。」


「そうか……。よし、寝ぼけた頭で悪いが説明させてもらう。」


血痕から10km圏内の建物を調べようとしたこと。

その範囲に建物が五軒あったこと。

そのうち一軒がその昔、ベルサーチと糸井草春、糸井に殺された5人が一緒に生活していた家だったこと。

そしてこの家に来たこと。

糸井と戦ったこと。

戦況は五分だったこと。


「だが、奴の操る大群が私に一斉に襲い掛かった瞬間、私は誰かに殴られ気絶した。以上が私が体験した出来事だ。」


「成る程。何と言うか、ご苦労様、かな。」


「ははは。ありがとう。」


……しかし。

[“防御”を星三十も掛けたのに、それをただの打撃で破ったのは不可解。か?]

その通りだ。


「ま、何はともあれ無事で良かったですよ。」


「そうだな。気絶した私を放ってそのままにしたという事実には、少し苛立ちを覚えるけどね。」


同時に感謝もしているけどと言いながらベルサーチは立ち上がった。


「感謝ですか?」


「ああ。クサイと言われそうだが、まだあいつを殺せるチャンスがあるということだからね。私が生きているということは。だから、殺さなかった草春と、私を気絶させた奴には感謝している。」


「成る程。」


「さて、悪いが私は行かせてもらう。」


「え?」


「早くセナリアさんを見つけなきゃ、だろ?」


「そりゃそうだが……。」


あんたは起きたばっかりなんだぜ?

[と言った所で、奴が諦めるとは思えんな。]

それもそうだが……。


「という訳で、君はもう帰れ。」


「……へ?今なんて?」


「帰れ、と言ったんだ更月涼治。」


「……いや。いやいやいやいや。待ってください何でそうなるんですか?」


「君が来ても仕方がない。率直に言おう。足手まといだ。」


んな馬鹿な。

言ってはなんだが、俺はここ一週間でかなり腕を上げた。

ベルサーチにだって負けていないという自負がある。


「お言葉ですけどねベルサーチさん。俺だって―――」


「“マリオネット”。」


[避けたほうがいいぞ。]

え?

……言うのが遅いよ。


「な、く……!なんじゃこりゃ!」


右手の人差し指から薬指にかけて糸が巻き付いている。

何て言えばいいかな。

人差し指の上から中指の下へ。更に薬指の上に行き、中指の上へと言った具合に巻き付いているんだ。


「……思い出した。これって前に糸井草春と会った時に使ってた糸だ。」


「その通り。“マリオネット”。私が開発した術式兵装さ。瞬間的人物操作を可能にする代物だ。」


瞬間的人物操作?

[全く……。脚を前に出してみろ。]

は?

[いいからやれ。]

言われたまま脚を……!


「く……ぬぬぬぬぬ!」


「動かないよ残念ながら。」


ベルサーチが椅子を持ってこちらにやって来る。


「何も体全体に巻く必要はない。一般人なら指先に一周巻くだけで操れる。」


俺を椅子に座らせ、ベルサーチは続ける。


「……やはり君は強いね。」


「え?」


「魔術師でも、今の君にした巻き方を一周すれば操れる。なのにどうだ。君の場合は五周だ。こんなことは初めてだよ。」


「お褒め頂き大変光栄なんですけど、さっさとこれ解いてください。」


「大丈夫。例え私が戻らなくても、その糸は一時間経てば自然に消える。」


それで言いたい事は全て言ったとでもいうように、ベルサーチは玄関に向かっていった。


「待ってくださいよ!危険ですって!せめて、俺じゃなくてもいいですから応援を……。」


「……あの日、草春を止められなかった責任は私にある。ならば、責め苦も一人で背負うべきなんだよ更月涼治。」


じゃあねと言い残し、ベルサーチは部屋から出ていってしまった。


「っ……!馬鹿野郎!」


死ぬ気かよあの人!

[死ぬ気で掛からなければ死んで終わりだろうからな。]

そういう問題じゃないだろ!

[取りあえず落ち着け。“マリオネット”、解除出来そうか?]

……糸自体に対した強度は無いっぽい。

ミシン糸みたく、指でプチッと引き千切れるだろうよ。


「だけど……体が動かせない1㎜も。それどころか、呪文も使えないし術式兵装も出せない。」


[それ程の拘束力、そして操作力を持つか……。あの男を見くびっていたかもしれんな。]

だからって……一人で立ち向かうなんて無茶だよ……。

俺は閉ざされた扉を見つめながら、己の無力さに浸り沈んでいった。

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