裏切り……?
{お早うございます。HAJACK第九地区に2224年3月7日の朝が来ました。今日のお天気をお伝えします。今日は晴れでしょう。降水確率は0%。最高気温10度、最低気温8度。これ以上の詳細はお天気発信地にて確認して下さい。アドレスは、hmjc://wws.otenki-hasshinti/22240307。}
「あ、ベルサーチさん。」
C.D.Cの会議室に向かう途中ベルサーチに会った。
「やあ更月君。君の方はまるで収穫がないようだね。」
図星を指され、それでも特には何も感じない。
「という事は、貴方は何か見つけたんですか?」
「ああ。未成年女子寮は知っているかい?」
「はい。」
確か此処、本校舎から1kmくらい離れた所にあったはずだ。
20歳までの、未成年の女の子が住む寮だ。
「そこから門に向かう途中の芝生に二種類の血痕が付着していた。」
「二種類?」
「そう。一つは、まあ分かると思うがセナリアさんの物だった。」
「……。」
つまりセナリアは、規模は分からないにしろ怪我をしたという訳か。
「で、もう一種類は?」
「うん。警察のデータベース、W.W.Sのデータベース、さらにIFLCのデータベースも確認したが、合致する人間は存在しなかった。」
「成る程……。じゃあ分からないって事ですか。」
「いいや分かった。」
なんだそりゃ。
ならさっさと教えてほしい。
「私個人のデータベースに唯一登録してある人物だった。」
「……それは?」
「孤立狼、糸井草春。」
……糸井草春。
ちょっと前にW.W.Sで会ったあいつか。
[かなりの手練れだな。奴に会ったとなると、生存は……。]
「芝生に着いてた血の量。それは如何ほどだったんですか。」
「セナリアさんの方は大したことはない。致死量には到底及ばない量だったからね。」
死因は何も失血とは限らないが……。
「対して草春だが、血が付着していたというより、血が掛けられたと言った方が合っているくらいだった。更に言えば、少しの肉片、腸の一部も落ちていた。」
「腸って……。」
[腹部の激しい切り傷、若しくは裂傷を負ったと見るべきだな。]
これは、結果だけ見ると糸井が負けている様に思える。
結果と言っても、残された物で構成された状況結果みたいなもんだが。
「恐らくだが、草春はまだW.W.Sの敷地の何処かにいる。」
「……そう考えるのが妥当ですよね。」
セナリアを隠したまま此処から出る術を持っていれば別だが。
「という訳で、私は此処から半径10km程を探索する。君は君で行動してくれたまえ。」
「え?あ、はい分かりました……。」
ベルサーチは何処かに行ってしまった。
[……。]
ん?どうかしたか?
[いや、少し気になる事がな。]
なんだよ。
[W.W.Sから出るには、必ず門を通らなければならない。そうだな?]
ああ。
門以外の場所、HAJACKの街に面している側には普通の壁だったり、電子壁が張っているからな。
壁を乗り越えるのは無理だ。
なんせ高さ100mの門を超える1000mだからな。
そういう訳で、門以外の場所には監視カメラが無かったりする。
ごく一部を除いては、だが。
[門を通らなければ出られない。監視カメラは門に……如何ほど設置してあるのだ?]
「確か……ってあんたこの前監視カメラ覗いたんじゃなかったっけ?」
[あれは映像のみを引き抜いただけだからな。]
……何処でそんな高等技術を覚えたんだよこの悪魔は。
「確か、二十くらいかな。」
付け加えると、あれは電光社の特注とかで、どれ程の“魅惑”を以ってしても、術者の姿をぼやけさせる事は敵わない。
姿を隠す術式兵装でも然りだ。
[その特注が二十設置してある門を通らねばW.W.Sに出入りすることは敵わない。そうだな?]
そうだが、何が言いたいんだ。
[考えろ。至極単純な事だ。糸井草春。]
「あ……。」
何が言いたいのかは分かった。
が、敢えて悪魔の言葉を待つことにする。
[記録に依れば奴は、この間までTASCにいたはずだ。だとするなら、奴は一体どのようにして此処に入ったのだ?]




